株を買うときは、過去の株価の値動きを示すチャートを確認するでしょう。同じように、投資信託を買うときには、投資信託の「価値」にあたる基準価額の推移を見ることになります。

しかし投資信託の場合、毎月更新される運用レポートで、グラフが2つ以上の軸を持った複雑なものがほとんどです。どのグラフが何を表しているのか、戸惑ってしまう人も多いのではないでしょうか。

グラフをよく見ると、基準価額のほかに「分配金再投資基準価額」といった名称があることに気付きます。とはいえ、これは何を意味している数字なのでしょうか。投資家としてこの言葉の意味を理解しておきましょう。

基準価額と分配金再投資基準価額の違い

分配金再投資基準価額
(画像=Shutterstock)

投資信託の価値に相当する基準価額とは、その投資信託の一口あたりの時価を意味します。言い換えれば、ファンドの資産のうち投資家に帰属する純資産総額を、投資信託の総口数で割ったものです。そういわれると、基準価額が高いものが、安いもののほうより優秀なように思えますが、必ずしもそうではありません。

同時期に設定され、似たような投資先で運用する2つの投資信託を比較した場合でも、分配金の支払い方針などによって基準価額が大きく変わってしまうことがあります。分配金は投資信託の純資産から支払われるため、支払ったあとには基準価額も当然、減少します。

そのため、毎月分配型投資信託のように定期的に投資家に多くの分配金を支払う投資信託のほうが、分配金を支払わず資金を再投資にまわすような投資信託よりも、基準価額が落ち込んでしまうのです。

分配金の支払いで基準価額が減少していては、その投資信託が実際にこれまでどれくらいの運用成績を上げているのか把握しづらくなります。このような、ファンドの実際の運用成績を理解するために使われているものが「分配金再投資基準価額」です。

分配金再投資基準価額の意味とは?

分配金が出る投資信託では、運用を通じて得た収益(譲渡益、株主配当、債券の利息など)を、主な原資として分配金を投資家に現金で支払います。たとえば、個人で資産運用するとき、運用して得た収益を生活費に使ったり、現金のまま貯金したりするケースと同じように、投資信託が還元する分配金も上記のような収益が主な原資となるわけです。

そこで、もし運用で得た収益をさらに投資にまわし、同じように収益が上がれば、複利効果で雪だるま式に資産を増やすことができます。わかりやすくいえば、運用で儲かった資金をさらに運用してもらい、複利効果も最大限活用しながら長期的に資産を増やせるのが投資信託の魅力ともいえることから、「分配金を再投資したとみなした」成績を示す基準価額が、「分配金再投資基準価額」と呼ばれる数字なのです。

分配金再投資基準価額とベンチマークの差に注目

運用成績を見る場合は、設定日もとても重要です。同じタイプの商品でも、多くの金融商品が大暴落した2008年のリーマンショック前に設定された投資信託と、リーマンショック後に設定された投資信託では基準価額にも大きな差があります。

そこで多くの投資信託は、運用成績を測る基準として、世界的な株や債券などの指数(インデックス)をベンチマークに設定しています。投資信託の運用成績を示したグラフには、基準価額、分配金再投資基準価額とともにベンチマークの値動きも合わせて掲載されているケースがほとんどです。

もし分配金再投資基準価額がベンチマークを上回り、さらに勢いよく右肩上がりで上昇していれば、その投資信託は運用力が高く、「投資していれば儲かった優秀な商品」と感じるでしょう。ただし、分配金再投資基準価額はあくまで「もし分配金を再投資していたら」と仮定した上で修正した数字であるため、分配金を受け取れば当然、この数字ほどの収益が上がるわけではありません。

つまり、分配金を受け取っている人は、自分がその投資信託を買ってからの基準価額の値上がり益にすでに支払われた分配金を加算した額、つまり、分配金を単純加算した基準価額こそが実際の運用成績になるのです。こういったことも投資家として覚えておくといいでしょう。

(提供:フィデリティ投信