リタイア後は長年暮らした日本を離れ、異国情緒があふれる海外の地で豊かなスローライフを送りたいという人も少なくありません。それゆえに、将来の生活資金のために着実に資産運用を進めてきた、もしくは進めているという人もいることでしょう。そこで今回は、日本人シニアに人気の移住・ロングステイ先をピックアップし、費用や生活環境、地域性などについて比較していきます。

人気のセカンドライフ先 No.1はマレーシア

移住したい国
(画像=Shutterstock)

数ある移住・ロングステイ先候補の中でも、物価が安く、裕福な気分を感じながら生活を満喫できるのが、2006年から10年以上にわたり人気移住先トップの座を確立している東南アジアのマレーシアです。

ロングステイ財団の調査によると、2006~2016年までマレーシアは、ハワイやタイといった国・地域を抑え、堂々の11年連続第1位に輝いています。常夏で過ごしやすい気候や治安の良さ、医療水準の高さといったことが人気の理由になっているようです。

マレーシアの滞在に必要な費用は?

マレーシアでは外国人の永住権獲得が認められていません。しかし、MM2H(マレーシア・マイ・セカンドホーム)という最長10年の長期滞在ビザ(延長あり)を取得すれば、長期間の滞在が可能です。申請条件としては、50歳以上の場合は最低35万リンギット(約971万円)以上の財産証明と月額1万リンギット(約27万円)以上の収入証明、もしくは年金証明が必要になります。

食費は全般的に日本よりも低価格の傾向にありますが、高い医療水準を誇るマレーシアでは、健康保険が適用されない外国人の場合は医療費が高くなります。日本で治療を受けて10割負担したのと同等の費用がかかることもあるので注意が必要です。また、郊外であれば月5~10万円程度で借りられる物件もありますが、日本で暮らした住宅レベルを維持しようと思うと20~30万円を超すケースも否めないことも覚えておくといいでしょう。

アジアならフィリピン、シンガポールも人気

ほかにも、アジアではフィリピン、シンガポールといった国が移住・ロングステイ先候補としてよく名前があがります。フィリピンは外国人のリタイアメント向けのSRRV(特別居住退職者ビザ)を発行しています。資金条件はマレーシアよりも低く、年金がある50歳以上の場合は1万米ドルの定期預金となっています。2015年の世帯平均年収が約26万ペソ(約59万円)とまだ発展途上にある国のため、全体的に物価が非常に安いのも特徴です。

医療水準は地域によって格差が大きく、支払う金額は、首都マニラの場合は日本と同程度になることが多いでしょう。また、物価の安さがメリットである一方、犯罪が多い地域もあり「治安が不安」「自然災害が多い」といった考慮すべきポイントもあります。

先進国のシンガポールは、治安や医療水準の面で不安が少ない上に、税金が日本より安いのも魅力といえるでしょう。しかし、シンガポールに長期間滞在するロング・ターム・ビジット・パスの場合、45歳以上であること、最低50万シンガポールドル (約4,213万円)の住居用不動産を所有していることなどが条件としてあります。さらに、40万シンガポールドル(約3,370万円)の預金があるなど経済的条件が厳しくなっています。

『移住・ロングステイしたい国』選びはトライアル体験をしてから決めること

年金と貯蓄で移住を検討できそうなアジア各国だけ見ても、移住・ロングステイにはそれぞれに特色があり、そのため保有資産や移住の目的、現地の生活に求めるものに合わせて、検討してみる必要があるでしょう。

また大切なことは、希望の場所が見つかったらトライアル期間を設けて、少なくとも1ヵ月程度は現地で生活してみることです。調べるだけではわからない現地の空気感や生活を、自分の肌で感じることが移住を成功させる近道になることでしょう。

(提供:フィデリティ投信