日本では昔に比べると教育費の高さがたびたび話題になりますが、米国の教育費も日本同様に高騰していることをご存じでしょうか。子どもを持つ米国の親たちはその費用の高さに頭を抱えながら、教育費を捻出するためにあらゆる対策を講じています。今回は米国における教育費の現状、そして教育費を捻出するためにどのような対策を行っているかを紹介します。

教育費の高さに悲鳴を上げる米国の親たち

教育費の作り方と増やし方
(画像=Shutterstock)

米国における教育費問題は、出産直後からはじまります。米国では共働き家庭の割合が多く、専業主婦の家庭は全体のわずか26%です。一方、共働き家庭は63%を占めます。そのため多くの母親たちが、早ければ生後6週間後からわが子をデイケア(保育所)に預けて仕事に復帰するようです。

そのデイケア費用ですが、乳児および幼児対象なら全米平均は月額972米ドル(約11万円)にものぼります。ロサンゼルスやニューヨークといった都市部なら月14~15万円以下のデイケアは見つけるのが難しいほどです。「まるでデイケア費用のために働いているようだ」と嘆く声があちこちで聞こえるほど、親たちの大きな負担となっています。

また、米国において家計をおおいに圧迫しているのが大学の進学費です。2017年度における公立4年制大学の学費の平均は40,940米ドル(約465万円、州外出身の場合)、私立の4年制なら平均50,900米ドル(約578万円)だったようです。

また参考書が高いために、学生が授業に必要な参考書を購入できないという問題も指摘されています。米国の参考書は2006年と比較して約73%も値上がりしており、1冊200米ドル(約2万2,700円)は決して珍しくありません。中には1冊400米ドル(約4万5,400円)の参考書すらあり、授業を取りたいのに参考書が買えないために受けられないというジレンマに陥る学生の苦情は年々増えています。

これらの教育費は、単純計算で子どもが2人なら2倍、3人なら3倍の負担となって米国の親たちにのしかかります。「子どもの教育は妥協したくないが、出せるお金には限度がある」というのは、どこの国でも共通ですが、米国の親たちはどのようにして教育費を捻出しているのでしょうか。次からは米国の親たちが実際に行っている、教育費捻出方法を見ていきましょう。

米国の親が実践する教育費捻出方法

●子どもが生まれた時点で積立をスタート

米国では、多くの家庭で生まれた直後から教育費の積立を開始します。米国では親と子どもの連名で銀行口座を作ることが可能なため、子どもが小さいうちは連名で、成長したら口座名義から親の名前を抜いて子ども専用の口座に変更するケースも少なくありません。また、子どもが複数いる場合は、子どもの数だけ口座を用意するなど、早くから子どもの教育費に対するアプローチを開始します。

●学資保険「プラン529」

日本にもさまざまな学資保険のプランがありますが、米国では「プラン529」と呼ばれる公的な学費の積立制度があります。そのシステムは日本の確定拠出型年金制度やNISAに近く、毎月の積立および利回りは非課税、さらに将来教育費としてお金が引き出される場合も課税されないのがメリットです。長子のために学費を積立ていたものの、長子が大学に進学しなかった場合は、他の子ども名義へ変更できるといった柔軟性もあり、米国の親に人気があります。

●投資信託

資産形成法として投資信託がメジャーな米国では、教育費も投資信託で捻出しようとする人は少なくありません。学資保険は税制メリットがある一方で、教育費目的以外の引き出しにはペナルティーが課せられるなど制限があります。その点でいうなら、投資信託なら教育資金はもちろん、状況に合わせてマイホーム購入資金、老後資金などと使い道を自分で柔軟に決めることができるので、多くの人に利用されています。

●奨学金制度の活用

米国では数多くの奨学金制度が用意されています。成績優秀者、家計的に進学が難しい学生、マイノリティの人種出身者など対象者もさまざまです。提供者も国、州、学校、営利団体など幅広い選択肢があります。返済不要の奨学金も多く、複数の奨学金を利用して大学院まで進学費用を捻出する生徒も少なくありません。

●定期的なファイナンシャルプランの見直し

米国では小学生のころから経済や投資について学ぶ機会が多く「自分の資産は自分で計画し形成するもの」という意識が根付いています。そのため、一度立てたファイナンシャルプランを、高額な教育費の捻出や予想外の出費にも柔軟に対応できるように常にチェックし、計画の見直しをしています。

今一度、教育費について向き合ってみよう

「教育費が高い」と嘆くよりも、「どのような選択肢があるか」をリサーチして早い段階から実践していくことが大切です。米国の親たちは教育費の捻出を早い段階で模索しています。学資保険や奨学金の制度を親がしっかり把握しているかどうかだけでも、教育費の負担は大きく変わるでしょう。まずは、教育費を捻出するために「どのようなオプションがあるか」「投資信託などの資産運用も取り入れてみる」などじっくり検討してみるといいでしょう。

(提供:フィデリティ投信