住宅ローン、子どもの教育費、そして老後資金。人生にかかるお金はさまざまですが、中でも老後資金は必要になる時期がかなり先のため、貯蓄で貯めるのか投資で備えるのか、どのように準備をしたらいいのか迷います。そこで、老後資金準備のために非常に有力な制度である、「確定拠出年金」についてご紹介します。

年金制度の中に「確定拠出年金制度」はある

確定拠出年金
(画像=Aaban/Shutterstock.com)

確定拠出年金は老後資金形成のために作られた制度です。まずはそれがどういった制度なのか、そもそもの内容を知っておきましょう。

日本の年金制度は3階建てといわれています。国民全員が加入する「国民年金」が1階部分、その次の2階部分には、サラリーマン・公務員などが加入する「厚生年金保険」と、自営業者・フリーランスが加入する「国民年金基金」があります。最後の3階部分として、これまでは「確定給付企業年金」がありましたが、それに代わるようなかたちで加入者個人が自己責任で積立金の運用を行う「確定拠出年金」が2001年に登場しました。

従来の確定給付企業年金は、企業が払った掛け金を生命保険会社や信託銀行、資産運用会社が運用することで、将来受け取れる年金の額がある程度予想できることが特徴でした。一方、確定拠出年金は企業や加入者が毎月一定額を拠出し、それを自分で運用します。運用の成績次第で将来受け取れる金額が変わってくるのが特徴です。

確定拠出年金は、2種類のタイプがあります。企業が掛け金を拠出する企業型と、自分で掛け金の金額を決め、個人がお金を出す個人型(iDeCo、イデコ)です。2017年1月から個人型の適用範囲が広がり、企業型に加入できない人でも原則として、ほぼ全員が個人型に加入できるようになりました。

確定拠出年金のメリットと注意点

確定拠出年金にはさまざまなメリットや優遇措置があるので、老後資金を効率的に貯めるのに非常に有効です。まず、個人型に加入する人が掛け金を拠出する場合、その掛け金が所得から引かれるため所得税の控除を受けられます。

たとえば30歳独身で、課税所得が400万円の人は、所得税・住民税は合わせて約77万5,000円の税金がかかります(生命保険料控除などを加味しない場合)。しかし、確定拠出年金に月5万円、年60万円を拠出すると、課税所得が340万円と減り、所得税・住民税は合わせて約59万5,000円になると試算できます。つまり、18万円もの税控除を受けることができるのです(企業型の場合、掛け金は企業の損金となります)。

また、確定拠出年金での運用益には税金がかかりません。たとえば100万円のお金を運用して120万円となり売却して利益を確定させた場合、通常の資産運用ではその利益20万円に20%の税金がかかるため、実際受け取れる利益は16万円となります。ところが確定拠出年金で運用する場合は、この税金がかからないので20万円を丸ごと受け取ることができます。

60歳以降に、拠出金を実際受け取るときにも税制上のメリットがあります。確定拠出年金の受け取り方には、年金で受け取る方法と一時金で受け取る方法の2種類があるのです。年金で受け取る場合は他の公的年金と合算して「公的年金等控除」が受けられますし、一時金で受け取る場合も退職金などと合算して「退職所得控除」が受けられます。いずれも通常の給与所得と比べ、非常に優遇される控除です。

税金だけではなく、手数料が安いことも大きなメリットです。確定拠出年金の商品を買う場合、購入手数料が低く設定されていたり、年間でかかる運用管理手数料もおおむね低く設定されています。

ただし、注意点もあります。確定拠出年金は老後資金形成が主な目的のため、原則として60歳まで拠出金を引き出せません。これは見方を変えれば、強制的に60歳まで貯金ができると考えることもできますが、アクシデントや病気など、突然の大きな支出が発生したときでも、原則として60歳までは拠出金を使えないことを覚えておきましょう。

ここまで紹介したように、確定拠出年金は、普通の貯蓄に比べて非常に優遇されている制度です。老後資金の形成という目的に関しては、いい投資先の一つといえます。ひと昔に比べ、財形貯蓄や社内預金制度という福利厚生が減っている現在だからこそ、こういった税制優遇制度を上手に利用して、資金形成に役立ててみてはいかがでしょうか。

(提供:フィデリティ投信