かつてないほどの金融市場・経済の混乱を招いた2008年のリーマン・ショックから今年で10年。リーマン・ショック当時、株式市場の混乱を受け、世界同時不況という最悪の状況に陥りました。

そんな中、各地域の経済大国は今どのような状況にあるのでしょうか。3回シリーズでお届けしている本連載では、第1回はリーマン・ショックが投資市場に与えた影響について、第2回では経済危機後でも注目される有望市場について解説しました。最終回となる第3回では将来リーマン・ショックのような経済危機が再燃した場合に、日本経済にどのような影響があるかについて考えていきます。

繰り返される金融危機の可能性

経済危機
(画像=ventdusud_Shutterstock.com)

世界の歴史を振り返ると、金融・経済危機は何度も繰り返されてきました。1929年に世界恐慌が起きたほか、最近では1987年のブラックマンデー、1997年のアジア通貨危機、そして2008年のリーマン・ショックと、ほぼ10年おきに世界的な金融・経済危機が発生しています。

リーマン・ショック時に起こったことは、経済・金融のグローバル化と通信技術の進化が進む中、米国においてサブプライムローンを組み込んだ脆弱な金融商品が金融システムに「ひずみ」をもたらし、そこから一気に金融システム全体の信頼失墜や金融商品の下落を招き、これが世界へと急速に波及したことでした。

現代では、また新たな市場として仮想通貨が拡大している上、新興国の経済は以前よりもさらに台頭してきましたので、次なる金融・経済危機への展開を注視する必要は十分にありそうです。

経済危機が再燃した場合、日本への影響は

リーマン・ショック時には米ドルが下落する中で円高が急速に進み、一方で世界同時株安の影響から日本株は記録的な落ち込みとなりました。リーマン・ショックのような経済危機が再来した場合、やはり日本の為替市場と株式市場についてはよく注意すべきです。貿易と投資という側面では、日本にとって米国は重要なパートナーですから、経済状況が日本に大きな影響を及ぼすことも考えられます。

リーマン・ショックのように円高が急速に進む経済危機が再燃した場合、甚大な影響を被るのが製造業界だと考えられます。円高になれば日本製品の値段は海外から見ると高くなります。その結果としてメーカーの業績は悪化し、下請け、孫請け企業とその影響は波及していくのは必至です。業績の悪化に伴うコスト削減策の一環で、派遣労働者や期間労働者が職を失う可能性も多大にあるでしょう。

景気低迷は買い控えムードによる個人消費の落ち込みにも直結します。影響も懸念されるのは小売業界。事実、リーマン・ショック後に最も売上高の低迷が続いたのは小売業界でした。また、製造業や小売業に関わらず需要の収縮はあらゆる業種においてリスクとなることは間違えないと言えるでしょう。

日本の企業は現在世界の様々な国と投資や貿易関係を持つ上、現地に進出している企業も数多くあります。そういった国々が「震源地」となる経済危機も日本に影響を与えることは避けられません。

リスクと課題、チャンスとメリット

世界規模な経済危機は、今まで幾度も繰り返されてきました。しかしそれを人々は幾度も克服をしてきたとも言えます。

事実、リーマン・ショックのあと、世界最大の経済国である米国の経済は回復基調に入り、現在までに、世界金融危機以降、約8年の長期にわたって景気拡大が継続してきました。中でも堅調な雇用・所得環境の下で個人消費が増加し、住宅市場も堅調に推移しています。

内閣府の資料「世界経済の潮流 2017年Ⅰ」によると、企業部門についても、鉱業部門の回復などから、全体として持ち直していると言えます。労働市場に関しては、雇用が引き続き堅調に推移しているほか、失業が低下しているといい、米国経済の底力をみせつけています。

懸念される周期的な金融・経済危機を考えると、これからの投資行動においては、より精度の高い生きた情報を集めながら、「リスクに陥らないための方策」「陥ったときの対応策」を考え続けることも必須となるでしょう。

経済のグローバル化は課題がある一方で、国境を超える経済活動の広がりやそれに伴うビジネス・投資のチャンスの創出など、投資により手に入れることのできるメリットも多々あります。なにを選び、どうすればいいのか。そんなことを考えながら新しい可能性を探したり、専門知識や投資経験を豊富に持つ専門家の意見を聞いたり、投資信託商品に目を向けるということも一つの選択肢になるのではないでしょうか。

(提供:フィデリティ投信