(本記事は、酒井威津善氏の著書『儲けのしくみを誰でもつくれるすごいノート』自由国民社、2018年11月25日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
人間の「欲求」からビジネスのネタを探す
人間にはさまざまな欲求があります。
欲求に答えることができれば、そのままビジネスになります。
ここでは、認知、優越、承認など代表的な6つをご紹介していきましょう。ぜひ、これらの気持ちを解決するような「価値」を考えてみてください。
●認知欲求
1.自分のことを知って欲しい(自己顕示欲)
「あの人は自己顕示欲が強い」とか言いますよね。とにかく人から注目されたい、自分の存在や名前を知ってもらいたい、などです。
この欲求を活かしたビジネス、といえば……そう、SNS 全般です。
今なら、Instagramでしょうか。
SNSにおける「いいね!」ボタンは画期的でした。
2.人より上に立ちたい(優越欲求)
人から尊敬されたい、賢いと思われたい、褒められたいなど、他人よりも上に立ちたいという欲求です。
これを活かしているのが、よくみかける「ランキング」。
ニュース記事やスマホの販売数に始まり、SNS全般(ブログや動画投稿など)での「いいね!」や「アクセス数」の順位がよく掲載されていますよね。
このしくみは、見る人向けでもありますが、実は隠れた理由としてその記事の投稿者のモチベーションをアップさせ、投稿を増やす意味合いもあります。
3.人から褒められたい(承認欲求)
上の2つと似ていますが、一方的ではなく、相互的な気持ちです。挨拶したのに返してくれなかった、なんてことありませんか?
それがまさにこの欲求です。
この気持ちをうまく活用したのが、「Facebook」ですね。
いまやすっかり普通になりましたが、あの「いいね!」の正体がこれです。投稿する→「いいね!」を押して貰える→また、投稿したくなる。見事なループ状態です。
●学習欲求
1.知らないことを知りたい
今、この本を手にとっているのがまさにこの気持ちがなせるところです。
ビジネスモデルについて知りたい、いいアイデアを考えたいという欲求ですね。
代表的な例がオンラインの学習サイトなどでしょう。
勉強したいという気持ちをつかんでいます。
2.わからないことをそのままにしておけない(証明欲求)
スクラッチカード。
コインで銀色の部分を削ると、当たりかどうかその場でがわかるアレです。
どうせ当たらないと思っていても、とりあえず削りませんか?
あと、コンビニで配られるめくるタイプのクジも。
銀色で見えなくなっている部分を見たい!これがこの気持ちです。
●共有欲求
1.集団に属したい
あのマズローの欲求説にも出てくる有名な欲求ですね。一人になりたくない、だれかとこのことを共有したい、という気持ちです。
巷に溢れる勉強会や会員制セミナーなどがこれを活かしています。
最近なら、「オンラインサロン」でしょう。
だれでも利用できる無料の掲示板と一線を画して、有料で会員制にしたものです。
2.だれかを助けたい
人の役に立ちたい。
災害が起きたときのボランティアや、インターネット上のアドバイス用の掲示板(Yahoo!知恵袋など)などがこの気持ちを活かしています。だれかを助けることで、感謝される。気持ちいいですよね。
この発展版が、すっかり1つのビジネスカテゴリーとして定着した「クラウドファンディング」でしょう。新しい製品やサービスを創りたいと考えている人を出資して応援するわけです。
●規則欲求
整理したい、まとめたい
切手などを集めたくなる収集欲求にも似ています。
バラバラになったものを、きちんと揃えたい。
例えば、本の巻数。1巻、3巻、2巻、4巻……と並んでいたらどうですか?2と3を入れ替えたくなりますよね。
この欲求を活かしているのが、パズル系全般です。数字や文字が欠けていて、穴埋めしたいというこの欲求を活かしています。
●成長欲求
何かを達成したい
例えば、富士山。ご来光を見たことがありますか?
あの達成感は言葉で表現しがたいものがありますよね。
富士山は3776メートル。頂上まで上るためには、丸1日がかりです。頂上へ近づけば近づくほど酸素も少なくなり、簡易型の酸素ボンベが欠かせません。
こうした苦労を忘れさせてくれるのがあの「達成感」です。
ただ今どきは、こうした大変なことはウケません。
できるだけ細かくゴールを用意しておかないとすぐに離脱される恐れがありますので注意が必要です。
●自己防衛欲求
1.面倒なことをしたくない
この心理欲求を見事に捉えているのが「家事代行」。
将来的には市場規模が6000億円まで拡大するとの予測があるほどです。
もちろん、家事代行の他にも「○○代行」というビジネスがたくさんあります。これらすべてがこの気持ちを活かしています。
2.失敗したくない
間違いたくない。正しい方法を知りたい。
こういう気持ちでネットを検索したり、本屋さんに行ったりしたことはありませんか?
雑誌などで「○○への備え方」といった特集が組まれたりしていると思わず手に取ってしまいます。
代表的な6つの欲求をご紹介してきました。
今取り組もうとしているビジネスのアイデアにぜひ掛け合わせて、新しい儲けのしくみを考えてみてください!
「業界」から探す
大資本を必要とするビジネスは、
・構築までに時間がかかる
・技術研究など、製品やサービスに関して高度なノウハウが必要
・時間がかかる分、アテが外れたときに後戻りがしにくい
といった性質があるため、オススメできません。
●どこを見ればよいのか
では、どれを選べばいいのか。
「伸びている市場」もしくは「歴史のある市場」です。
【伸びている市場】
どんな市場があるのかを探すときに役に立つのが、「市場規模マップ」( http://visualizing.info/cr/market-size-map/domestic/#m=0&cv=0&cn=13369344&cx=52224&cr=10&l=0&f=0 )です。
このサイトには「市場規模トレンド」という機能があります。
これがかなり使えます。
ドロップダウンリストの中から、最大20個の国内市場データを選んで、棒線や折れ線グラフで表示してくれます。
対象期間も1986年から直近まで選ぶことができ、直近10年間の伸びがどうなっているのかをひと目で見ることができます。
例えば、Uber が参入して有名になった食品宅配市場。グラフで見ると、完全な右肩上がりで、直近10年間ではなんと6000億円も拡大しています。
グラフを見るときに、ぜひよく見てほしいのが、前年比伸び率です。表示されたグラフにカーソルを合わせると、各年度の情報とともに表示されます。食品宅配市場の場合、4%から2%程度着実に伸びており、その勢いはまだまだ続きそうです。
【歴史のある市場】
さきほど挙げた対象となるサービスの多くが、規模もさることながら、比較的長い歴史を持つものがあります。
「新しい市場を狙うのでは?」と思われるかもしれません。
先ほどの表でいえば、「通信やネット関連」ですね。
もちろん、それはそれでアリなのですが、いかんせん「競争」が激しい。
しかも、純粋な競争ではなく、「競争の環境」が変化する恐れがあります。
例えば、メガネの販売。
メガネを作って売る。この流れに変わりはないですよね?
価格を含めた売り方、販売するメガネの機能などの工夫し、しくみを作り上げる。そうした競争環境です。
ところが、ネットやアプリなどはその競争の条件自体が変わってしまうリスクがあります。
もっともイメージしやすい例は、それらのインフラです。
最近の例でいえば、Facebook。若い人を中心に別のSNSへと流出しています。さすがにこうなることを予見できた人は少ないでしょう。
Facebookにからめてサービスを展開していた場合、大変ですよね。
SNSで、どれか1つしか運用していないことは稀ですから、影響は少ないかもしれません。
とはいえ、技術系はどうしてもある日突然、様子が変わってしまいがちです。日頃の情報収集でカバーできれば何の問題もありませんが、やはり限界があります。
できるだけ大きな変化がない場所を選ぶ。
その分成熟しているため、新しい切り口を生み出すのにはかなり汗をかきます。
しかし、だからこそ一度切り込めることができれば、他の追随が難しいものになるのです。
バリューチェーンから探す
●バリューチェーンとは何か
商品企画、原材料調達、加工・製造、出荷、販売といった価値を生成するプロセスのことです。
ここでは、「業界から探す」でリストアップしたサービス業のうち、いくつか代表的なバリューチェーンをご紹介しましょう。
・さまざまなバリューチェーン
学習塾
生徒募集→教材や授業の準備→授業→宿題や試験→結果分析や指導
物流サービス
車両購入(もしくはリース)→受注→配車→集荷→輸送・配送
カフェ(その他飲食店ビジネス)
店舗開発(内装含む)→集客→食材仕入→注文→料理提供→決済
アパレルメーカー
(本社・工場)商品企画・設計→生産→店舗配送
(店舗)商品陳列→集客→接客→試着→決済
システム開発会社
受注→要件定義→外部設計→詳細設計→テスト→バグ取り→実データテスト→納品→検収
美容室
店舗確保→設備、内装→美容師雇用→集客→サービス提供
出版社
企画・制作→編集→印刷・製本→営業・宣伝→取次→書店
人材派遣・人材紹介
募集・登録→営業→マッチング→面談→契約
不動産仲介
借り主募集→内見随行→重要説明事項→賃貸契約→決済
見事に違いますよね。
さて、本題はここからです。
既存のバリューチェーンから探す
いずれかのバリューチェーンを使って、次のような手を加えて新しい儲けのしくみができないか、を考えるのです。
1.別のプレイヤーを追加する
2.別の業態と入れ替える
3.チェーンのどこかを削る・統合する
4.アプリやその他代替方法に置き換える
順にご紹介していきましょう。
1.別のプレイヤーを入れる
既存のバリューチェーンの流れの中に、別のプレイヤーを入れてみましょう。
例えば美容室。
そのバリューチェーンは、店舗確保→設備、内装→美容師雇用→集客→サービス提供でした。
このうち、5つめの「サービス提供」を置き換えてみる。
実際にある事例ですが、例えば「ネイル」を提供する。
もちろん、この手前の手順を置き換えることもできます。
例えば、店舗確保と設備、内装を別のものに置き換えてみる。
例えば、フリーの美容師と契約しておき、一方で店舗または土地などを持っているオーナーと契約。
サービス提供による収益から利用料を支払うというしくみにし、自社は、それらを「集めてくる」ことだけに特化する。
美容師と土地オーナーとのマッチングです。
いかがでしょうか?必ずしも自社ですべてを賄う必要はないのです。
別のプレイヤーを入れる最大のメリットは、2つ。
初期コストの圧縮と撤退のしやすさ、です。
残念ながら、美容業界はとても競争が激しい。
全国に20万件以上あると言われています。
後発参入するのであれば、先行者にはできない工夫を入れましょう。
2.別の商品やサービスと入れ替える
ビジネスモデルの王道の1つですね。
今度は、バリューチェーン上に流れる「商品やサービス」を置き換えてしまうのです。
このスタイルで成功しているケースはたくさんあります。
例えば、牛丼チェーンをベースにした天丼チェーンやカツ丼チェーン。自動車ディーラーと携帯ショップなど。よく見てみると、しくみはほぼそのままで、商品やサービスだけが変わっていることがわかります。
なお、この方法で注意したいのは、「利益モデル」です。
その商品やサービスだからこそ、成り立っている場合があるからです。果たして採算が合うのか、アイデアが出揃ったら、ぜひ第3章で数字の面から検証してみてください。
3.チェーンのどこかを削る・統合する
これも新しい儲けのしくみを考える方法の王道です。
例えば、書店。
ポピュラーな事例で、中古書店があります。
通常、書店は取次または出版社から委託販売形式で、書籍を仕入れます。
中古書店は、この部分を「個人」に置き換え、一大市場になったのです。
4.アプリやシステムに置き換える
これは詳しくご紹介するまでもありませんよね。
バリューチェーンの一部またはすべてをシステム化、コンテンツ化する。
さらに、スマホのアプリ化する。
コンテンツ化やアプリ化はすぐに思いつくアイデアです。
なので、さらにもうひと工夫。
対象を全体にするのではなく、一部をアプリ化・コンテンツ化し、かつ汎用化することをオススメします。
例えば、クリーニング。
すでにオンラインのクリーニング店は存在します。
そこで、専門特化して、色落ちだけを請け負うクリーニング店の「窓口」をコンテンツ化するのはどうでしょう?
例えば、低価格印刷で有名な「ラクスル」のように、全国の「しみ抜きや染色業者」を協力者としてまとめ、その資産を利用させてももらう。
全体最適から部分最適へ。ちょっと視点を切り替えて考えてみてください。トンデモない金鉱脈を掘り当てるかもしれません。