株式投資で利益を得る可能性が高いのが、IPO投資だ。IPO投資とは、取引所に上場する前の株を入手する投資のことである。人気のIPO株は価格が何倍にもなることがあり、大きな利益が得られることがある。IPO投資は投資初心者でも始めやすいのも特徴だ。IPO投資の魅力やIPO株の買い方、注意点などを紹介する。
IPOとIPO投資とは
IPOとは、新規株式公開(Initial Public Offering)の略である。IPOは、経営者などの出資をもとに運営していた会社をさらに成長させるために行う。株式を取引所に上場し、売買できるようにすることで、投資家から広く資金を募ることができる。
IPO投資とは、IPOで上場する株を上場前に購入する投資方法である。上場する前のIPO株は公募価格で売り出される。公募価格は、投資家の需要に応じてブックビルディング(BB)という方法で決定される。ブックビルディングとは、IPO株などにあらかじめ仮条件価格を決め、投資家のIPO申込状況から需要を予測するものだ。
IPO株を買うには、抽選に当選する必要がある。購入したIPO株は上場後初値(市場で初めて付いた株価)で売ってもいいし、将来性を見込むなら保有していてもいい。
IPO投資の魅力
魅力的な投資方法であるIPO投資の魅力を2つ紹介しよう。
1つ目は、短期で大きな利益を得る可能性があることだ。初値が公募価格の数倍になることもよくある。上場する企業の将来性が高いほど初値が上昇しやすい。2017年のIPO銘柄90のうち、初値が公募価格を上回ったのは82銘柄(91%)。そのうちの15銘柄は初値が公募価格の3倍以上だった。人気のIPO銘柄はなかなか当選しないが、当選すれば大きな利益を期待できる。
2つ目は、損失を出すリスクが比較的低いことだ。2017年のIPOでは90銘柄のうち8銘柄の初値が公募価格を下回ったが、下落率は2~6%程度だった。つまり、初値が公募価格を下回るケースは少なく、下回っても下落率は比較的低いということだ。
IPO投資の仕方
IPO投資をするには証券会社に「証券総合口座」を持つ必要がある。証券総合口座が用意できたら、IPOのスケジュールを確認したい。
申込期間は、IPO銘柄のブックビルディング期間だ。ブックビルディング期間は1週間弱であり、仮条件の範囲で金額と株数を申し込む。ブックビルディングで決定される公募価格以上で申し込むと抽選の対象となる。人気のIPO株は、仮条件の上限価格が公募価格となる場合が多い。
ブックビルディング期間後に抽選が行われ、当選したら購入の申し込みを行うことでIPO株を入手できる。購入の申込期間も1週間弱であり、人気のIPOに当選したら購入の申し込みを逃すことのないように注意したい。
IPO銘柄を調べるには、IPO情報をまとめているWebサイトを利用できる。企業分析を初心者にもわかりやすく表示しているサイトや、初値予想を掲載しているサイトなどが参考になるだろう。
IPO株の購入権を得やすくするには
人気のIPO銘柄の抽選で当選する確率は、それほど高くない。ではどうすれば当選する確率を上げることができるのだろうか。
まず、IPO株の申し込みを数多く行えば当選する確率は上がる。複数の証券会社に口座を持っていれば、複数の申し込みができる。IPO投資をするなら複数の証券会社に証券総合口座を持ち、それぞれの口座で申し込みを行いたい。
IPO株の割り当て数は証券会社によって異なり、割り当てが多い証券会社のほうが抽選は有利になる。特にIPOの運営などを中心となって行う「主幹事」の証券会社はIPO株の割り当てが多くなる。よって、主幹事の証券会社から申し込むことで当選確率を上げることができる。
証券会社によっては、IPOの抽選にポイント制度がある。SBI証券にはIPOチャレンジポイントがあり、IPOの抽選に外れるとポイントが貯まり、次回以降に貯まったポイントを利用することで当選しやすくなる
対面系の証券会社を利用していれば、担当営業マンに依頼することで有利になることもある。証券会社はお得意様などの優良顧客にIPO株を割り当てることがあるため、それを利用できれば当選に近づく。
IPO投資の注意すべき点
損失を出すリスクが小さいIPO投資だが、いくつかの注意点はきちんとおさえておきたい。
IPO銘柄によって、割り当てられる証券会社が決まっている。自分が望むIPO銘柄について、割り当てのない証券会社からは申し込むことができない。望みのIPO銘柄が割り当てられる証券会社を確認しておきたい。
証券会社によっては、IPO抽選に申し込むと資金が拘束されるが、それが解除されるタイミングは証券会社によって異なる。買付余力に余裕がない状態で資金が拘束されると、通常の株の売買に支障をきたす。自分が利用している証券会社のIPO申し込みで資金が拘束される場合には、その期間を把握しておきたい。
IPO株は、初値が公募価格を上回ることもあれば下回ることもある。初値が下落するリスクが高い株は事前に調べることで購入を回避できる。IPO申し込みが当選したら、購入手続きの前に価格下落リスクを確認しておきたい。推奨できないIPO株は、人気のない業種、良くない決算内容、人気銘柄と同じ上場日の銘柄、などの条件が重なる銘柄だ。
IPO株を持ち続ける際に注意すべき点
IPO投資では、初値で売らずに持ち続けるという選択肢もある。その場合の注意点も紹介しておきたい。
初値が付いた後のIPO株は値動きが大きく、初値から大きく上昇することや、大きく下落することがある。初値で売らない場合には、そのリスクを把握しておきたい。
IPO株には「ロックアップ」というものがある。ロックアップとは、会社役員や大株主、ベンチャーキャピタルなどの公開前の株主が、一定期間(180日など)、市場で持株を売却できないようする制度だ。
ただし、一定期間内であっても株価が一定の金額(公募価格の何倍など)以上になるとロックアップが解除されるケースがある。その場合、大株主などが大量の持株を売却することで、株価が急落することがある。ロックアップの内容は目論見書に記載されているため、初値が付いた後のIPO株を保有する場合にはロックアップの内容を確認すべきである。
IPO投資は、利益を得る可能性が高い魅力的な投資方法である。注意点をいくつか押さえておけば、IPO投資で損失を被るリスクは低減される。IPOの申し込みだけで資金が減ることはない。IPO投資が気になったら、気軽に始めてみるのがいいだろう。
文・松本雄一(ビジネス・金融アドバイザー)/MONEY TIMES
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