株式取引には売買による利益以外にも、配当金や株主優待を受け取るなどの魅力がありますが、これらを受け取るには、特定の日の取引終了時点で株式銘柄を保有し、株主であることが必要になります。この特定の日は「権利確定日」とか「権利付最終日」などと呼ばれています。
実際には、決算月の月末時点で株主であれば良いのですが、株式取引の受け渡しが「約定日(取引が成立した日)から3営業日目」に行われるため、月末から数えて4営業日前までに株式を買っておかなければならないというわけです。ちなみに、権利確定日の翌日は「権利落ち日」といいます。
前回は信用取引と現物取引との違いについてざっくり比較しましたが、今回は「信用取引で株主優待や配当金はもらえるの?」について、解説したいと思います。
結論から言ってしまうと、信用取引で株式を買った(買い建てをした)場合、株主優待は「受け取れない」、配当金については「受け取れないけど、受け取れる」ことになります。
自分の資金で行う現物株取引とは異なり、信用取引の買い建ては資金を借りて行う取引のため、買った株式は自分のものになりません。「じゃあ、誰のもの?」ですが、信用取引を通じて購入した株券は資金を貸している証券会社や証券金融会社が担保として保有します。そのため、信用取引で株式を買っても、株主優待や配当金を受け取れません。
とはいえ、配当金については先ほど「受け取れないけど、受け取れる」と書きました。矛盾した言い回しですが、これは配当金そのものを受け取れない代わりに「配当金相当額」というのを受け取るからです。配当金相当額は配当金調整額とも言います。
リクツの上では、配当金を受け取る権利がなくなる「権利落ち日」に、配当金の分だけ株価が下がることになります。株価の下落は信用取引で買い建てをしている人にはマイナス、売り建てをしている人にはプラスですが、市場の売買によるものではなく、あくまでも株主の権利関係による株価下落です。そのため、配当金相当額を売り建て側から徴収し、買い建て側に支払うことで、配当金の権利落ちによる株価下落の影響をお互いにチャラにしようというわけです。
ちなみに、信用取引の買い建てでは、今回のように、配当や株主優待などの権利確定日と権利落ち日を挟んで返済しないでいると(建玉を保有していると)、「名義書換料」という費用が発生しますが、これは株式の名義を証券会社や証券金融会社に書き換えるためです。
また、『会社四季報』や『日経会社情報』等を眺めてみると、大株主欄のところに証券金融会社や証券会社が掲載されている銘柄が見受けられます。これは特に証券金融会社の場合に当てはまるのですが、実際に株券を買っているわけではなく、信用取引の担保として投資家から預かっている株券が多い(つまり信用取引の買い建玉が多い)ことを意味しています。なお、証券金融会社については別の機会に詳しく説明します。
土信田 雅之(どしだ まさゆき)
楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト
1974年生まれ。青山学院大学国際政治経済学部卒業。国内証券会社にて企画や商品開発に携わり、マーケットアナリストに。2011年より現職。中国留学経験があり、アジアや新興国の最新事情にも精通している。
(提供=トウシル)
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