本日早朝に行われたメイ政権への内閣不信任案は、賛成306、反対325の反対多数で否決されました。メイ英首相が掲げるEU離脱協定案は否定しつつも、与党を変えるほどの意思はないという何とも曖昧な結果に終わりました。事前の情報から否決されること自体は既に織り込まれていましたが、「EUはアイルランドを巡るバックストップ措置について譲歩する用意がある」との一部報道、英国紙タイムズが、EU当局者が英国のEU離脱を2020年まで遅らせる可能性について検討しているなどと報じたことがポンド買いをサポートしています。また、既にドイツとフランスが離脱交渉を延長する意向を示しました。

来週月曜(21日)までに議会に方針を示すステートメントの提出が必要になることから、英国側、EU側から様々な発言が出てくることが想定されます。引き続きヘッドライン相場になることが想定されそうです。ただ、直近の動きを見ると3/29のEU離脱期限が先延ばしになることが、ポンド買いに繋がっていることもあり、妥協案でもポンドがサポートされるのであれば、比較的買い安心感が出てくるかもしれません。

一方、ユーロについては欧州圏の経済指標悪化が意識されており、ECBの金融引き締め路線にやや懐疑的な見方が出てきていることもあり、ユーロドルは1.1420ドル台から1.1380ドル付近までユーロが売られました。これまでは、材料難になった時はポンド売りという基本路線がありましたが、ポンドがやや回復傾向にあることにより、ユーロ売りが活発化する可能性が高そうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

内閣不信任案の否決を受け、今後はメイ英首相が野党(特に労働党のコービン党首)と今後の計画について協議します。野党がこの協議を受け入れる条件として「合意なき離脱」を回避することが前提となっているため、目先は「合意なき離脱」の可能性が低くなったと考えられます。ただ、何一つ前進したわけではないため、再度混乱するようであれば、マーケットは容赦なくポンド売りに傾くでしょう。

ポンドに注目が集まりがちですが、ドル円が109円台を回復しており、これは1/3のフラッシュクラッシュ以来初めてのことです。前日は一時109.194円まで上値を拡大しましたが、本日は日経平均株価が軟調に推移していることで109円の大台を割り込んでいます。108-109円のレンジをようやく上抜けたこともあり、本日のNYクローズレートが109円を維持できるかどうかが重要になりそうです。109円を維持するようであれば、目先上昇基調が強まりそうです。

ドル円109円維持できるかどうかがポイント

107.90円のドル円ロングポジションは、108.80円での利食いで手仕舞です。しばらくはレンジ相場取引に徹するのも手かと思いましたが、109円のラインを上抜けてきたことで一旦様子見です。ただ、109円でショートのポジションは確保。本日のNYクローズレートで109円台を維持するようであれば、すぐさまポジション解消予定です。損切りについては109.30円上抜け、利食いは108.40円付近を想定しています。

海外時間からの流れ

EU離脱協定案採決、その後の内閣不信任案採決と慌ただしい日程となりましたが、ここまでは市場のコンセンサス通りになっています。21日までに議会に方針を示すステートメント次第ではありますが、与党・野党の協議がうまく行くようであれば、一気にポンドの買い戻しが強まりそうです。その時は、ポンド円であれば日足レジスタンスである143.50円付近を目指しそうです。

今日の予定

本日は、ユーロ圏・12月消費者物価指数、米・12月小売売上高、米・1月フィラデルフィア連銀景況指数、米・新規失業保険申請件数などの経済指標が予定されています。ただ、米国の経済指標については、政府機関閉鎖の影響で発表されるかどうかは直前にならないと分からないので、この点は注意が必要です。要人発言としては、クオールズ・FRB副議長の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。