2019年、世界経済の動向は米国の長期金利上昇と英国のEU離脱に焦点が当たりそうです。日本は2020年にかけて、ラグビーW杯と東京オリンピックを控え、スポーツムードに包まれる一方、元号が変わり約5年ぶりの消費税増税が実施されます。
米国--長期金利上昇の可能性は?
米国の中央銀行の役割を果たす米連邦準備制度理事会(FRB)は2018年、4回の利上げを行い、米国の金利を2.5%へ引き上げました。2019年も引き続き数回の利上げが予想されていることから、「どこまで利上げが続くのか」の一点に市場は関心を示しています。これまで通り毎回0.25ポイントの利上げが3回実施された場合、2019年末には金利政策上限水準が4.25%に達します。
一方、トランプ政権による法人減税や労働市場の改善など、米国の景気拡大を追い風とするこうした動きに、「急激過ぎる」との懸念も挙がっています。
FRBのパウエル議長は4回目の利上げ直前、海外需要の鈍化や国内における財政刺激策の衰退、これまでの利上げによる影響が経済に及ぼす可能性などを「十分認識している」と発言しており、経済の回復と拡大、失業率、インフレを考慮に入れつつ、2019年の利上げペースを決める意向です。
欧州--ブレグジットの激震が走る欧州
欧州では、2019年3月29日のブレグジット(英国のEU離脱)が、台風の目となりそうです。2018年11月にブリュッセルで開催されたEU臨時首脳会議で、英国の離脱が「政治宣言」として正式に承認されたものの、スペインの領土問題やアイルランドの国境問題など、解決すべき問題は山積されています。
また、EUと合意に至った離脱協定案が英議会で承認されないまま3月29日を迎えた場合、「No Deal(同意なき)」離脱となり、英経済は軽い景気後退に突入し、2019年の経済成長率は-1.2%、2020年は-1.5%に落ち込むと、信用格付け企業S&P グローバル・レーティングは予想しています。
最も懸念されているのは、EU経済への影響です。ドイツに次ぐEU第2の経済大国英国が離脱することでEUのGDPは16%縮小し、経済も米国より小規模になるとフィナンシャルタイムズは予測しています。しかし前金融危機以降、英国の経済成長は失速しており、過去2年は他のEU諸国の成長速度を下回っています。EU委員会はこうした傾向が2019年も続くと見込んでいますが、ブレグジットそのものよりも英国における製造業の衰退や英国・EU諸国の貿易関係などを原因として挙げています。
日本--スポーツムードの中、消費税アップ、元号変更
日本はスポーツムードとともに、平成に代わる新元号の発表や消費税アップなど、日本の歴史を変える重大な局面を迎えます。
今上天皇の譲位は4月30日、皇太子徳仁親王の第126代天皇即位は5月1日に行われ、元号とともに天皇誕生日も2020年以降、2月23日に変更されます。高齢化社会で拡大し続ける社会保障費用の財源確保に向け、10月1日には消費税引き上げが実施。一部の軽減税率対象品目を除き、課税率が2ポイント増の10%となります。国税局の資料によると、軽減税率対象となるのは、酒類・外食を除く飲食料品 と週2回以上発行される新聞です。
安倍政権は過去に2回、景気の低迷などを理由に消費税の引き上げを延期しました。今回実施に踏みきった背景には、東京オリンピックによる経済効果への期待があるものと思われます。しかし増税によるマイナス影響として、購買意欲の減退、景気の悪化、駆け込み需要の反動なども懸念されています。
また6月には20カ国・地域の首脳が参加する「G20サミット」が、日本で初めて大阪で開催されます。G20サミットは日本を含むG7加盟国と、ロシアや中国といった新興国の首脳に加え、国際通貨基金(IMF)や世界銀行などの国際金融機関が集まる金融サミットです。
総体的には2018年に米中間で勃発した貿易戦争が、世界経済に重荷を課す1年となる気配が感じられます。
文・アレン・琴子/英国在住のフリーライター (提供:JPRIME)
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