前回のコラム「【第3回】国際分散投資のススメ」で、それを叶えてくれる投資信託に絞り込むことが「つみたてNISA」の商品選択における第一歩とお伝えしました。
よーし、つみたてNISA始めるぞ!と思ったらまずどこの金融機関で? と考えがちですが、真っ先に行動すべきは先述した通り、国際分散投資をしっかり実践してくれる投資信託選びからです。
実はよく勉強している方々には、国内外の個別資産クラスを自ら組み合わせてポートフォリオを自分で作りたいとの要望もあるのですが、つみたてNISAにおいてはそれを実践するのは困難です。なぜなら、ポートフォリオ管理には定期的なリバランスという作業が不可欠ですが、つみたてNISAの制度上ファンドの入れ替えを行うと非課税枠を消費してしまうため、当初の配分より増えた比率の資産を売却して、その資金で比率が減った資産を買うといったリバランス行動ができないからです。
従って、投資信託自体が国際分散ポートフォリオで構築され、ファンド内部でリバランスまで適切に行ってくれる商品を1つに絞って選択するべきなのです。
さらに気を付けてほしいことがあります。それがホームカントリーバイアス(資産運用において自国中心になること)です。つみたてNISAの対象商品の中には、国際分散タイプのポートフォリオを体現しているものが何本もありますが、それらの多くにホームカントリーバイアスがかかっているのです。
例えば国内外の株式と債券などを4分割や8分割に均等割りでポートフォリオとして提供している商品では、結果的に日本の比率が相対的に高くなります。
そもそも、国際分散投資の目的は世界経済全体の成長軌道に乗せてお金を育てて行くことですが、残念ながら日本の21世紀に入ってからの経済成長率は世界平均をはるかに下回っており、潜在成長率もG7諸国で一番低い国になってしまっています。
つまり、日本の投資比率を多くしてしまうことによって、日本の低成長が足かせとなって、長期的な世界全体の成長率を相応には享受できなくなってしまうとしたら、とても残念なことでしょう。
為替リスクへの考え方
国際分散投資の大前提は世界経済の成長力をしっかりと取り込んでお金を育てること。従って日本への偏重を避け、世界の実体経済を合理的にトレースしてくれるポートフォリオを運用理念として掲げて実践してくれる商品をしっかりと選択してほしいと思います。
そしてもう一つの注意点。それが為替リスクへの考え方です。海外資産への投資には当然のことながら外国通貨と日本円との間の為替変動が生じるため、円高に推移した時の回避へと為替を円ヘッジした商品も存在しています。
ところが、円にヘッジした途端に為替の変動リスクはなくなりますが、それは長期的な世界経済の成長軌道の上に日本の低成長軌道をかぶせることと同義で、世界経済の期待成長力を削ぐことになってしまうのです。ですから為替ヘッジ付きのタイプは選択肢から除くようにしてください。
こうして、国際分散投資の商品はかなり絞り込めることでしょう。その上で一定の運用履歴があり、運用残高がしっかり積み上がっていて、資金の流入が安定した実績のあるもの、と厳選を進めていくと、当該目的に沿った最も相応しい商品が見えてくることでしょう。