- 【第1回】「つみたてNISA」を活用せよ〜人生100年時代の戦略〜
- 【第2回】元本800万円は20年でどこまで増える?
- 【第3回】国際分散投資のススメ
- 【第4回】1/22公開予定
- 【第5回】2/26公開予定
今年から新たな少額投資非課税制度として「つみたてNISA」が始まりました。その政策意図は前回のコラム『【第1回】「つみたてNISA」を活用せよ~人生100年時代の戦略~』で解説しましたが、それでは「つみたてNISA」の概要を簡単に整理しましょう。
「つみたてNISA」は毎年40万円までの新たな投資資金を対象に、その年から最長20年間に累積して得られた投資利益に対して徴収される源泉所得税(現行20.315%)が免除となる制度で、投資対象は投資信託(とごく一部のETF)に限定されています。しかも金融庁は長期資産形成に資する商品設計がなされた投資信託に限定するため、いくつもの基準をすべて満たした商品のみ届出可能としたのです。
それは既存の6,000本超ある公募投資信託のうち、基準をクリアする商品が50本程度に絞られるほど厳格なルールを課したため、いくつもの大手運用会社に届出可能な商品がほとんどなくなってしまいました。
結果として代表的なマーケット指標(日本で言えば日経平均やTOPIXなど)に沿って運用される純粋なインデックスファンドのみ、すべての届出要件を満たしたものだけ新規商品設定を許可して、大手系列運用会社はこぞって新規にインデックスファンドを設定して届出したため、現在は140本程の商品がインデックス系ファンドとして同制度に採用されています。
しかし、そうした指標(インデックス)に沿うことを目的とせず、運用会社が独自の運用手法を駆使して高いリターンを追求するアクティブ系ファンドには、さらに厳しい要件を加えた上に新規設定を認めなかったため、現在届出されているアクティブ系ファンドは17本しかなく、こちらは大いに稀少な存在です。
金融庁の意図
金融庁がこうした制約を敢えて課したのは、それまで業界の売れ筋として扱われて来た毎月分配型投信や特定のテーマ型ファンドなどの大半が、将来に向けた長期資産形成目的にそぐわないと判断し、それらのファンドを誤って制度参加者が選択しないようにするためです。裏を返せば、真っ当な資産形成に資する商品の提供をことごとく怠って来た金融業界に対し、抜本的に営業姿勢を改める意図を明示的に制度設計に盛り込んだと言えましょう。
ところで「つみたてNISA」はその名の通り、積立投資でしか参加できません。上限40万円ということは、最もスタンダードな毎月一定金額の積立ならば、毎月3万3,000円が投資上限額となるわけで、もちろん上限にこだわらず各人が安定的に拠出可能な金額範囲内で積立投資を行うことを勧奨する制度です。この制度は、まとまった資金を持っている一部の富裕層や高齢層のみならず、すべての生活者を参加対象者として誘っていることが見て取れます。つまり、これまで投資に無縁だった多くの生活者にこそ、政府は「つみたてNISA」を通じて長期資産形成という行動を起こして欲しいと考えているわけです。