環境対応など社会的責任に優れた企業に投資を行う「ESG投資」の手法を活用した投資信託が、日本で初めて東京証券取引所に上場します。欧米ではESG投資はかなり普及していますが、日本では導入が遅れていると言われてきました。なぜ日本ではESG投資が進まなかったのでしょうか。

ESG投資ってどんなもの?

leaf
(提供=J.ScoreStyle)

ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を合わせた言葉で、3つの要素を考慮して、投資する銘柄を選択するという手法です。これまで公的年金といった機関投資家は、企業の財務情報を分析した上で銘柄を選定するのが標準的でした。ESG投資は、従来型の財務分析に加え、社会的な要素を評価に取り入れることで、長期的なリターンを安定させようという考え方に立脚しています。重要なのは、倫理的な視点で銘柄を選別するのではなく、社会的責任を果たす企業は、リターンも大きいという実利的な視点での選別という部分です。

具体的には、地球温暖化対策や女性従業員の活躍、外部の人材を活用した取締役の構成といった項目が評価の対象となります。

欧米ではESG投資はかなり普及しており、年金基金などではすでに17兆ドル(1800兆円)を超える資金がESGで運用されているといわれています。日本でも公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が7月にESGに対応した3指数を選定。当初は国内株全体の3%程度(金額ベースでは1兆円)をESGに振り向けると発表しました。将来的にはESG投資の比率を高めていく方針とのことです。

日本で普及しなかった訳は?

今回の投信上場もこうした流れの一環ですが、日本でESGがなかなか普及しなかったことには訳があります。日本の場合、企業経営に余裕がないケースが多く、ESGの基準で銘柄を選定してしまうと、投資のリターンが悪くなるという現実があったからです。

しかし、ネットの普及やAI(人工知能)の台頭で、企業の経営環境は国による違いがますます小さくなっています。グローバルに見て標準的な経営ができない企業は、機関投資家の投資対象から外れ、資金調達が難しくなってくるでしょう。

すでにGPIFは多くの上場企業における筆頭株主となっており、企業経営に絶大な影響力を持っています。GPIFがESG投資に舵を切り、関連投信も続々と上場している現実を考えると、企業は一連の対応を強化していく必要がありそうです。(提供:J.Score Style

【オススメ記事 J.Score Style】
キャッシュレスが進めばどのような未来が訪れるのか?
スタバが仮想通貨!?スターバックスが取り組むブロックチェーンの活用法
ビジネスパーソンが、「ジョブ理論」で、生き抜くためのヒントとは?
日々の目標を「小さな習慣」にする3つのコツ
世界ではここまで進んでいる!最新のフィンテックアプリ3選