日本経済の行方を知る上で米国経済を知ることは避けて通れない

米国経済
(画像=PIXTA)

日本と米国の経済成長率のグラフを見ると、2000年頃から非常に連動性が高まっているのがわかる。近年、特に、米国経済と日本経済が密接に連動しているため、日本経済の行方を探るうえで、米国経済を知ることは避けて通れない。

米国経済
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ただ、昔からこのように連動していたわけではない。日本のバブル経済が崩壊した後の1990年代は、米国と日本の経済は現在ほど連動していなかった。背景には、90年代というのは世界経済とはあまり関係のない日本国内のいわゆるバブルの崩壊によって、日本の経済成長率が非常に停滞してしまっていたことがある。

資産価格が大きく下がり、90年代の半ば頃から物価も下がってしまった。そういう日本国内の厳しい状況がある一方で、米国経済は日本経済の悪影響をそれほど受けなかったため、相対的に良かった。

また、2000年代以降に連動性が高まることとも関係してくるが、当時はそれほど経済がグローバル化していなかったという点もあげられる。このため、90年代であれば、日本経済の予測をするときには、ある意味で日本固有の状況だけを見ておけばよかった。では、なぜ、最近の日本経済を予測する場合に、必ず米国経済を見なければならなくなってしまったのだろうか。

これには、そもそも米国経済の規模が大きいという要因がある。世界最大の経済大国というのは紛れもなく米国であり、世界のGDPの4分の1近くを占めている。それだけ規模が大きいため、当然、それだけ日本経済に及ぼす影響も大きいといえるわけである。それに対して、日本は世界第3位の経済規模だが、世界のGDPの6%を占めているにすぎない。2009年まで第2位だったが、その後、中国に抜かれてしまっている。

米国の次に大きい地域はBRICsである。BRICsというのは、ブラジル、ロシア、インド、チャイナの、いわゆる新興大国の総称である。の経済規模は、2017年には世界のGDPの2割以上を占めるまでに大きくなっている。実は、このうちの半分以上を占めているのが中国である。中国だけで約15%を占めている。

日本のピーク時のGDPは5兆ドルを超えていたが、今は4.8兆ドルである。それに対して米国は、GDPの規模が日本の4倍程度の約19兆ドル、中国は12兆ドル程度になる。ユーロ圏は、全体で16%近くあるため、それなりに大きい経済規模ということになる。

これらの国や地域だけで、世界経済の7割近くを占めるため、世界の経済が概ねわかる。中でも米国が最も経済規模が大きいため、やはり米国経済というのは、世界経済を見るうえで非常に重要だということになってくる。

米国経済
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世界との経済的な結びつき

日本と米国の経済的な結びつきには、大きく二つの側面がある。一つは実体経済の結びつきであり、端的に言えば貿易である。もう一つは、金融市場での結びつきである。

2017年度の「日本の国別輸出入のウェイト」を見ると、日本がどこに一番輸出しているのかというと、中国と米国が並んで全体の19%を占めている。3番目が韓国で、次いで台湾、香港となっており、EU(欧州連合)が11%となっている。

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輸入でみると、やはり中国が最も多いが、輸出も輸入も米国と中国が大きなウェイトを占めている。しかし、この二つの国以外では、輸出と輸入の相手国は違ってくる。輸出は韓国、台湾、香港などのアジア諸国だが、輸入は米中の次に資源国のオーストラリアが入ってくる。背景には、日本では加工組立て品を輸出する一方で、原材料を輸入するという貿易構造がある。

このように、輸出入のウェイトだけを見ると、輸出と輸入を合わせた規模は、「米国よりも中国のほうが大きい」ということになるが、単純にそうは言えない。というのも、日本は完成品よりも部品等を作るほうが得意であり、部品を新興国に輸出して新興国で完成品を作り、それが米国に輸出されているからである。

そう考えると、この表面上の数字だけでは米国経済との関係は単純にはかれない。米国経済との結びつきというのは、実際の数字以上に大きいといえる。

永濱利廣(ながはま としひろ)
第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト 1995年早稲田大学理工学部卒、2005年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。1995年4月第一生命入社、1998年4月より日本経済研究センター出向。2000年4月より第一生命経済研究所経済調査部、2016年4月より現職。経済財政諮問会議政策コメンテーター、総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事兼事務局長、あしぎん総合研究所客員研究員、あしかが輝き大使、佐野ふるさと特使。