厚生年金の遺族年金は、国民年金の遺族年金の上乗せとして受け取ることができるものです。国民年金や厚生年金などに加入している人が亡くなってしまったときに、それまでに支払った保険料が遺された家族に遺族年金として支給されます。給付額や受給の条件が少し複雑ですが、いざというときは大きな支えとなります。整理して確認しておきましょう。
加入者死亡時に遺族が受け取る遺族厚生年金とは?
遺族厚生年金を受け取るためには一定の要件を満たさなければなりません。支給されるための条件(支給要件)と受け取ることができる人を確認しておきましょう。
遺族厚生年金の4つの支給要件
遺族厚生年金の4つの支給要件はこちらです。
① 厚生年金に加入している人が亡くなった
② 厚生年金に加入している期間に初診日があり、その病気やケガが原因で初診日から5年以内に亡くなった
③ 老齢厚生年金を受けられる人または老齢厚生年金を受けるために必要な加入期間の条件を満たしている人が亡くなった
④ 1級、2級の障害厚生(共済)年金を受けられる人が亡くなった
さらに、国民年金を納めている期間が免除期間も含めて全体の3分の2以上あることが必要です。また、平成38年4月1日までの期間に65歳未満で亡くなった場合は、死亡日を含む月の前々月までの1年間のうちに保険料の滞納がなければ支給されます。
夫が死亡したとき遺族厚生年金を受け取る人は?
遺族厚生年金を受け取ることができる人は、亡くなった人の家族構成と年齢によって異なります。
夫が死亡したときは、夫に生計を維持されていた妻・子、55歳以上の父母、孫、55歳以上の祖父母の順番で受け取る権利が発生します。この場合で、夫が亡くなったときに妻が30歳未満で子どもがいない場合には5年間だけの支給となり、妻が30歳以上であれば、一生涯支給されます。
子・孫が受け取る場合は18歳に達した年度の末日までです。子が障害年金の障害等級1、2級に該当する状態であれば20歳の誕生日の前日まで支給されます。父母、祖父母が受け取る場合は、60歳から一生涯支給されます。
妻が死亡したとき遺族厚生年金を受け取る人は?
妻が死亡した場合は、夫、子、父母、孫、祖父母の順番で受け取る権利が発生します。子、孫の受給要件は夫が死亡したときと同じです。夫、父母、祖父母は妻が亡くなったときに55歳以上であれば60歳から一生涯支給されます。
ただし、妻が亡くなった時点で夫が55歳未満の場合は注意が必要です。子がいる場合は受け取ることができますが、子がいない場合は生涯受け取ることができません。二人で家計を支えようと考えている夫婦なら妻が亡くなったときの家計への影響は大きいので、生命保険に加入するなどの準備が必要です。
また、遺族厚生年金を受給している人が結婚や養子縁組などをしたときは、受ける権利がなくなります。
遺族厚生年金の受給額は大まかにこれくらい
遺族厚生年金の受給額は、死亡した方の老齢厚生年金額の4分の3です。これは、年金定期便を見ると確認できます。
年金定期便には、50歳未満の方は加入月数に応じた厚生年金額が記載されており、50歳以上の方は60歳まで加入した場合の見込み額等が記載されています。もっと詳しく知りたい場合は、ねんきんネットを利用することで加入月数に応じた年金額を確認できるでしょう。
もし、厚生年金の加入期間が数年の場合(被保険者期間が25年(300月)に満たない)は、300月加入したものとして計算してもらえます。ただし、現在厚生年金の被保険者であることが必要です。
中高齢の場合は加算制度がある
遺族厚生年金には、中高齢の加算として、年額584,500円を上乗せして支給される制度があります。これの支給要件は、2つです。
中高齢加算制度の2つの支給要件
妻で、夫が亡くなったときに40歳以上65歳未満で生計を同じにしている子がいない
妻で、40歳に到達した当時に遺族基磯年金・遺族厚生年金を受けていた子がおり、その子が18歳到達年度の年度末になった等のために遺族基礎年金を受け取ることができなくなった
ただし、夫が老齢厚生年金を受けられる、または受給資格を満たしている夫が亡くなった場合は、夫の厚生年金の被保険者期間が20年以上、あるいは中高齢者の特例などによって受給期間を満たしている場合に限られます。
また、平成19年3月31日以前に夫が亡くなって遺族厚生年金を受け取っている人は、「40歳」ではなく「35歳」と読み変えた要件によって支給されます。
遺族厚生年金と他の年金は併給できる?
今まで遺族基礎年金と遺族厚生年金を受け取っていた方が、自分の老齢厚生年金を受け取ることになったときは、老齢厚生年金が全額支給され、相当額の遺族厚生年金は支給停止になります。平成19年4月1日までは老齢厚生年金か遺族厚生年金のどちらか一方を選択できましたが、現在はできなくなっているので注意しましょう。
複雑な年金制度だけど少しずつ勉強しよう
年金制度は、聞きなれない言葉が出てきたり受給要件がわかりにくかったりと、とっつきにくいものです。しかし、生命保険の保障額を考える際には必ず必要になります。少しずつ勉強していきましょう。知っておくことで今後の生活設計が立てやすくなるでしょう。
文・藤原 洋子(ファイナンシャル・プランナー)/fuelle
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