「サッカーワールドカップでサウジアラビアが優勝」――といっても、こちらは英国ロンドンで開催された「FIFA eWorld Cup Grand Final 2018」の話である。サッカーゲームで各国の代表が集い、サウジアラビア代表の青年が優勝トロフィーを手にしたというわけだ。ゲームと耳にして、単なる子どもの遊びと目もくれないのは、投資対象としても有望な市場を見逃すことにもなりかねない。いまや世界各地で賞金の出る大会が開催されるまでに成長した「eスポーツ」は、日本国内でも注目が集まっている。

eスポーツ市場は急拡大の見通し

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(写真=PIXTA)

eスポーツとは、「エレクトロニック・スポーツ」の略称で、コンピューターゲームやビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称をさして使われることが多い。子どもがゲームに夢中で勉強に取り組まないというのは、どの親にも共通する悩みかもしれない。しかし、そのゲームにおいて卓越した腕を持つプレイヤーは、プロの職業としてみなされる時代を迎えているというわけだ。

冒頭のFIFA eWorld Cupの優勝賞金は25万ドル (1ドル110円換算で約2,750万円) に上り、大きな国際大会でタイトルを手にすれば、平均的なサラリーマンの年収をはるかに上回るお金を稼ぐことはもはや夢ではない。また、国際大会の中には、優勝賞金が億単位を超えるものも珍しくない。このように、たかがゲームといって看過できず、立派なプロフェッショナルとしての地位を確立しつつある。

こうしたトレンドは数字にも表れている。オランダに拠点を置くnewzooがまとめた「2018 グローバルeスポーツレポート」によると、2017年のeスポーツの市場規模は6億5,500万ドル (約726億円) となっている。さらに、2021年には16億5,000万ドル (1ドル110円換算で約1,815億円) まで市場が拡大すると見込まれており、その潜在性に対する注目度も高い。

さらには、インドネシアで開催されるアジア競技大会においては、eスポーツがデモンストレーション競技として採用されるに至っており、国際的なスポーツイベントでもその地位を高めている。将来的にはオリンピックでの正式種目として採用するように働きかける動きもある。

eスポーツは裾野の広い産業

日本はこれまでゲーム機器、ゲームソフトの分野においては、パイオニアとして世界をリードしてきた歴史があり、eスポーツの発展は、国内産業にとっても追い風となりそうだ。さらには、老舗のゲーム機器メーカー以外にも、スマートフォンの普及により、スマホ向けのゲームを運営する新興メーカーなどにもビジネスチャンスが広がっていくことが期待される。

さらには、ひとたびFIFA eWorld Cupのような国際的なeスポーツのイベントが開催されれば、その恩恵は、ゲーム関連会社だけにとどまらない。ロンドンで開催された際の会場となったO2アリーナは2012年のロンドンオリンピック・パラリンピックの会場の1つにもなった場所である。日本国内で同じような規模の施設でeスポーツの大会が開催されれば、イベント関連の需要を喚起できるだろう。

イベントを盛り上げるために、スポンサーやPR会社による広告が展開され、イベント期間中は、チケット販売に加え、関連グッズの販売機会も作り出される。さらには、国際的に注目度の高いeスポーツイベントであれば、その様子を世界に発信すべく多額の放映権料を巡る商談も活発になることが予想される。このように、eスポーツはゲーム関連会社だけでなく、大きなイベントが開催されれば、恩恵をうける企業の裾野が広いのも特徴的である。

いつの時代にも新しいトレンドは、新しいビジネスの投資機会となりうる。eスポーツに関しては、子どもの遊びとしてのテレビゲームという固定概念に縛られることなく、またゲーム産業だけにとどまらず、さまざまな業界に恩恵をもたらす潜在性を秘めている。投資の観点からも、eスポーツの今後の動向に注目したいところだ。(提供:大和ネクスト銀行

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