不動産を相続するとき、相続人が1人なら話は簡単です。しかし、共同相続人がいる場合は、分割相続で手続きも面倒になります。そこで、今回は小口に分けて投資でき、分割相続に便利なREITによる不動産投資を考えてみましょう。
不動産の分割相続で争わないために
遺産相続に関する争いは、古今東西を問わず、いつの世もニュースの材料になるほど、絶えることがありません。しかし、これは資産家に限ったことではなく、いくらかでも預金や不動産を残すなら、決して無関係とはいえないテーマです。自分の残した資産で遺族が争うことは故人としても本意ではないでしょう。では、不動産の分割相続で争わないためにはどうしたらよいでしょうか。
通常の分割相続の方法
まず、通常の分割相続の方法について整理してみます。分割相続は、相続人が複数いるときに必要な手法です。例えば、法定相続人が3人いる場合、遺産に不動産が含まれていると、通常誰か1人が名義人となって相続することになります。不動産の評価が高く現金・預貯金が少ないと、他の現金・預貯金を相続する2人と金額が異なり、不公平が生じるため、不動産の相続人は差額分を他の相続人に代償金として支払うことで調整することが多い傾向です。
その代償金が少額ならば問題ありませんが、高額だった場合、支払いができずにトラブルに発展するケースがあります。また、代償金をいくらにするかも難しい問題です。不動産は評価がわかりにくく、例えば土地の評価方法では相続税評価額や固定資産税評価額、公示地価、実勢価格などがありますが、評価方法によって評価額が変わるため、どの評価額に基づいて算出するかで代償額も変わってしまうのです。不動産の相続人は少しでも低い評価を望み、他の相続人は高い評価額を望むことになるので、思惑のズレが生じます。
以上のような難しい問題を考慮すると、あらかじめ不動産を売却して現金化しておくことも選択肢のひとつでしょう。現在、居住している不動産は別ですが、遊休不動産であれば売却した方が無用な遺産相続争いを避ける意味でも有効かもしれません。では、現物不動産以外で不動産投資を続けたい場合は、どのような方法があるでしょうか。
REITでの不動産投資なら分割相続も簡単
そこで、選択肢のひとつに考えたいのが、REIT(不動産投資信託)による不動産投資です。REITは、投資家から集めた資金で不動産を購入し、運用した結果得た賃貸収入や売却益を投資家に分配する金融商品です。米国で誕生した商品ですが、米国のREITと日本のREITでは異なる点があるため、区別する意味で日本版はJ-REITと呼ばれています。
J-REITは1口単位で投資できるので、分割相続が簡単にできる点が便利です。購入に必要な金額は銘柄によって異なり、数万円から百万円近くまでさまざまです。組み合わせて複数の銘柄に分散投資することでリスクを減らすこともできます。ただし、REITにはデメリットもあります。REITは現物の不動産を所有するわけではないので、相続税の節税対策にならないことです。また、元本保証ではないので、値下がりリスクがあります。
REITの購入方法は株式とほぼ同じ
REITの購入方法は、株式とほぼ同じで証券取引所で売買することができます。手数料や売却益税(20.315%)も株式同様で、株を買うような感覚で手軽に不動産投資することができるため、わかりやすい投資法といえるでしょう。また、J-REITはNISA(少額投資非課税制度)の対象商品になっていますので、利用すれば年間120万円、5年間で最大600万円までの買い付けに対して生じる売却益や分配金がすべて非課税になります。
600万円で購入したJ-REITが、相続時に1,000万円に値上がりしていたとしても、差額に課税される心配はありません。「現物不動産のまま保有するか」「現金化してJ-REITに変えるか」はそれぞれの判断によって異なりますが、すっきり小口に分けて相続させたいのであれば、J-REITは有力な選択肢のひとつといえるでしょう。(提供:相続MEMO)
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