日本の年金制度は、1階部分(基礎部分)が国民年金、2階部分が厚生年金、3階部分が企業年金という仕組みになっています。したがって、企業年金に加入していれば、支給される年金額が増額されることになります。ここでは、企業年金の仕組みやメリット、そして受給者が亡くなったときの手続きについて、詳しく解説します。

日本の年金の仕組みは3層構造

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(画像=PIXTA)

日本の年金制度は、国民年金を基礎としてその上に被用者年金(厚生年金)、さらにその上に企業年金という構造になっています。国民年金は、日本に住所がある20歳以上60歳未満の全員が対象の年金です。厚生年金は、民間企業で働く人、公務員、あるいは私立学校の教職員で、70歳未満の人が対象の年金。国民年金に上乗せされて支給されます。

さらに、それに上乗せされる形で各企業が自社の従業員と給付することを約束して、加入する年金があります。これが企業年金です。

企業年金とは

企業年金は、退職金を企業が支払う際、一度に支払うことなく分割して支払う方法が発展したものです。このことによって、従業員には退職した後の生活保障になり、企業も退職金を分割支払いすることで、経営を圧迫することにもならなくなったのです。つまり、企業年金は従業員にとっても、企業にとってもメリットがある制度といえます。

「知るぽると(金融広報中央委員会のサイト)」によると、高度成長期からバブル経済期では、好調な経済を背景に、順調に運用された企業年金でしたが、バブル経済の崩壊とともに、運用面で行き詰まることになったのです。そこで、政府は2001年に従来の企業年金制度を大幅に変更し、新たな企業年金の制度を作りました。

大企業では、国際的な会計基準となる「退職給付債務」が導入され、新たな企業年金制度へ変更したのです。また、大企業以外でも、新たな企業年金へと変更したり、それまでの企業年金を解約したりすることで、企業年金そのものを廃止する企業も出てきました。これにより、会社によって企業年金制度がある会社とない会社が存在することになったのです。

現在の企業年金には、確定給付企業年金(規約型・基金型)、確定拠出年金、厚生年金基金、税制適格退職年金、中小企業退職金共済制度・特定退職金共済制度などがあります。

企業年金の給付手続き

退職後に企業年金を受けるためには、すべて自分で手続きをしなければなりません。自分から何も行動を起こさなければ、支給されないシステムなのです。ただ、企業年金の手続きや支給される時期が異なりますから、退職の際に十分調べておく必要があります。厚生年金基金や確定給付企業年金(基金型)に加入している場合は、加入期間によって各厚生年金基金の窓口、あるいは企業年金連合会の窓口で手続きを行います。

また、確定給付企業年金(規約型)や税制適格退職年金に加入している場合は、会社の窓口で手続きを行わなければなりません。さらに、確定拠出年金に加入している場合は拠出金を運営している運営管理機関に問い合わせて、手続きを行う必要があります。

企業年金の受給者が死亡したときは

もし企業年金を受け取っている人が亡くなったら、遺族は速やかに企業年金連合会へ連絡する必要があります。連絡を受けた企業年金連合会は、遺族に「企業年金連合会老齢年金受給権者死亡届」を送ります。この用紙を受け取った遺族は、記載事項を記入したうえで、企業年金連合会へ返送しなければなりません。

年金は、受け取っていた人が亡くなった月の分までは支払われることになっています。もし、この届け出を怠って、遺族が年金を受け取り続けていた場合には、その分は過払い金となり、遺族は企業年金連合会へ返金しなければなりません。また、逆に未払いの年金があった場合には、遺族はその分を請求することができます。なお、請求できる遺族は、受け取っていた本人と生計を同じにしていた人に限られます。

また、通算企業年金など(通算企業年金・基本加算年金・代行加算年金・経過的基本加算年金・経過的代行加算年金)を受けていた方が、保証期間中に亡くなったときには残存期間分について遺族は死亡一時金を請求することができます。この場合、請求できる順位と範囲は、下記の通りです。

・1位:配偶者
・2位:子ども
・3位:父母
・4位:孫
・5位:祖父母
・6位:兄弟姉妹
・7位:亡くなった当時に生計が同じだった6親等内の血族・3親等内の姻族

企業年金は、掛け金を企業が負担してくれたり、給付額が保証されていたりするなどメリットがあります。ただ、死亡した際に届け出を怠ると後で過払い分を請求されますので、十分注意しましょう。

文・井上通夫(行政書士・行政書士井上法務事務所代表)/fuelle

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