前日については、RBA議事要旨では、前回の雇用統計の内容が含まれていなということで、「利下げが必要となる可能性の高い2つのシナリオを議論した」などの見解に留まったことで特段豪ドルの動きには影響がありませんでしたが、その後のロウRBA総裁が「6月の理事会で利下げを検討するだろう」との発言により、豪ドルは下値を拡大する動きになりました。金利据え置きが適切としながらも「今回の会議では」と限定したこともあり、6月の利下げがコンセンサスになる可能性が高く、市場は徐々にRBAの利下げを織り込む動きを見せるのではないでしょうか。慎重論を唱える見方でも7月8月での利下げ予測であったため、これでほぼ6月の利下げで決まりかもしれません。
英国のEU離脱案については、メイ英首相が「ブレグジットを巡る2回目の国民投票実施の議会採決を提案」との一部報道がポンド買いを強め、ポンドドルでは1.26860ドルと一時1月15日以来約4カ月ぶりの安値を付けたものの、1.28128ドルまで急騰する場面がありました。ただ、メイ英首相の会見では、離脱関連法案に「2回目の国民投票実施を英議会にはかること」を要件とする項目が含まれることを明らかにすると、与党・保守党のEU離脱強硬派から反発の声が相次ぎました。また、民主統一党(DUP)からも懐疑的な見方が示され、コービン労働党党首も新提案を支持しない意向を示しており、その後は再び1.2700ドルを割り込む水準までポンドが売られました。
ドル円については、底堅い動きが継続しました。トランプ大統領が華為技術(ファーウェイ)に対する禁輸措置について、一時的な緩和方針を表明したことにより、株式が反発し、その後にリスク選好の動きが強まったことでドル円は110.670円まで上昇しました。緩和措置は8月19日までとなっており、時間的猶予ができたことで、一旦米中通商協議への警戒感も後退する可能性がありそうです。
今後の見通し
米国が、ファーウェイに対する規制措置を一部緩和したことを受けて、同セクターの企業業績を巡る懸念が後退する見通しです。米商務省は、ファーウェイが既存ネットワークの保守や既存のスマートフォン向けのソフトウエア更新を行えるようにする一時的な措置を発表しており、特にハイテク株の戻しが特徴的です。5/6から始まったギャップダウンを埋める動きになるかが注目であり、埋めるようであればドル円は難攻不落と思われる111円の壁を突破する動きになりそうです。
上記に不随する内容で、気を付けないといけないのが、トランプ政権は2001年に中国杭州で設立されたHIKVISION(ハイクビジョン)社をブラックリストに加える、とNYタイムズが報じていることです。ファーウェイに続いて、米中通商協議をより複雑化させる問題ではありますが、ファーウェイの問題についても、同社への規制を8月19日まで緩和させることを米国政府が発表しています。同措置はファーウェイの既存顧客を支援するためのものであり、ハイクビジョンにも同様の措置が行われるのであれば、リスク回避の動きは限定的になりそうです。
市場はRBAの6月の利下げを織り込む動きを見せるだろう
一時75円台半ばまで豪ドル円は下落したものの、その後はドル円に連れるように反発しています。ただ、豪ドルについては、これから6月の利下げを織り込む動きを見せるとの思惑もあり、引き続いショート戦略継続です。76.30円での豪ドル円ショート、利食いについては、75円割れを想定し、74.50円付近を利食い目途、損切りについては76.80円付近を考えます。
海外時間からの流れ
欧州議会選挙間近ではありますが、昨日のメイ英首相の発言を受けて、一気に欧州議会選挙より英国議会への注目度が増しています。メイ英首相が、6月上旬に予定しているEU離脱案の4回目の採決に向け新たな提案を示しましたが、各所からの反発により一旦は小休止しています。ただ、「2回目の国民投票実施」というワードが出てきたことは、ポンドにとっては非常にプラスな内容であることから、今後、ポンドが急反発する「可能性」が出てきたと考えられます。
今日の予定
本日は、英・4月消費者物価指数、加・3月小売売上高などの経済指標が予定されています。また、要人発言として、ドラギ・ECB総裁、プラート・ECB専務理事、ウィリアムズ・NY連銀総裁、ボスティック・アトランタ連銀総裁の講演が予定されています。また、本日はFOMC議事録が公表予定です。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。