前日については、トランプ大統領が「中国との通商交渉は上手くいっている。中国は米国との取引成立を望んでいる」との発言を行い、一旦、米中通商協議の先行き不透明化が後退したものの、本日の東京時間に中国が必要であれば米国に対してレアアースの輸出を規制する計画を準備しているとのヘッドラインが流れたこともあり、再び貿易戦争が激化する恐れがあります。また、対メキシコに対しても関税方針を示したため、グラスリー米上院財政委員長が「貿易政策と国境問題は別々の問題であり、これは大統領の関税権限の乱用であり、議会の意向は反するもの」と指摘しているように、貿易戦争が長期化する恐れがあります。

ユーロについては、「サルビーニ伊副首相(同盟党首)は連立政権離脱も辞さない構え」との報道が伝わっており、引き続きユーロ売り材料を提供し続けています。また、直近の欧州各国の経済指標の悪化が懸念されており、特にスペインとフランスの悪化傾向が顕著になっており、来週火曜に発表予定のユーロ圏のCPIが一気に悪化するようであれば、再びユーロ売りが活発化するトリガーになりそうです。

EUは、英国のEU離脱について次期英首相と再交渉しない意向を示しているものの、アイルランドのコベーニー外相は「より広範な離脱案について新たに考える余地がある」と発言し、「EUは離脱合意自体が再交渉の対象でないことを明確にしたものの、それは離脱案の変更ができないという意味ではない。EUは英国のために便宜を図ると常に主張している」とも述べたことで、ユーロが下落一辺倒になっているものの、ポンドの下値は限定的なものになっています。ただ、EUの方針として再交渉はしないことであり、結果的にはポンド売りに傾斜するものと思われます。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

本日の東京時間に、トランプ大統領が「6月10日からのメキシコからの輸入品全てに5%の関税をかける」「メキシコへの関税は7月1日から5%以上への引き上げを開始し、10月1日に25%に達するまで継続する」などの発言をしたことから、メキシコペソが暴落しました。5.70円付近から5.59円付近まで下落し、メキシコペソ円のみならず、他のクロス円も連れ安となり、クロス円全般が下値を拡大しました。

米中通商協議が難航を極めるなか、対メキシコでもトランプ政権の関税方針は非常に厳しいものであり、今後、他の国にも波及するのではないかとの懸念が広がり、リスク回避の動きが強まりそうです。ただ、メキシコ外務次官が「検証を行うまで米国には報復しない」「われわれは米国との貿易戦争を望んでいない」との見解を示したことにより、メキシコペソ売りの動きが小休止しましたが、現状を勘案すると、とてもリスク選好の動きになるとは考えづらい状況です。

今後の懸念点としては、米中貿易摩擦のみならず、米国が他の国にも厳しい関税方針を進めるのであれば、貿易摩擦によって米国の経済成長に対するリスクが高まる可能性が非常に高く、FRBが現在の様子見姿勢を継続できるかどうかの瀬戸際に立っていると考えられ、状況によってはトランプ政権が望む、FRBの利下げという流れになるかもしれません。

RBA政策金利発表までにもう一段豪ドルは売られそうだ

米中貿易戦争の激化に加え、トランプ政権が対メキシコでも厳しい関税方針を表明したため、リスク回避の動きが強まっています。連れ安となるかたちで、豪ドル円も下落しており、ショート戦略が機能しています。テクニカル的にも76.30円の上値目途で抑えられていることもあり、76.30円での豪ドル円ショート、利食いについては、75円割れを想定し、74.50円付近を利食い目途、損切りについては76.80円付近を考えます。

海外時間からの流れ

本日に関しては、一部報道により中国が必要であれば米国に対してレアアースの輸出を規制する計画を準備しているとのヘッドラインが流れ、一気にリスクオフの動きが強まっています。この報道により、明確に米国と対立する姿勢を表明したと捉えることもできるため、ドル円は109円割れならず一旦反発したものの、再度109円割れが現実的になっています。

今日の予定

本日は、独・4月小売売上高、トルコ・第1四半期GDP、独・5月消費者物価指数、米・4月個人所得/個人支出、米・4月PCEコア・デフレータ、加・3月GDP、 米・5月シカゴ購買部協会景気指数、米・5月ミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)などの経済指標が予定されています。要人発言としては、ビスコ・伊中銀総裁の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。