【その他の4指標と景気の総括】

以上で概観した供給面3指標と需要面3指標に、電力消費量、道路貨物輸送量、工業生産者出荷価格、通貨供給量(M2)を加えた景気10指標を、それぞれ3ヵ月前と比べて上向きであれば“○”、下向きであれば“×”として一覧表にしたのが図表-12である。

需要面をみると、小売売上高は“○”と“×”が入り混じり底ばい、輸出は2月までは減速感が強かったものの、3月には“○”に転じその後は底ばい、固定資産投資は3月に一時的に“○”となったものの減速に歯止めが掛かっていない。供給面をみると、工業生産は3月までは持ち直し基調だったが再び陰りが見え始めており、3ヵ月連続で“○”となった製造業PMIも、6月には比較対象となる3月の水準が高いため“×”に転じる可能性が高い。電力消費量を見ても5月は前年比2.3%増と2月(3ヵ月前)の同4.5%増を下回り“×”となった(図表-13)。製造業を中心とする工業部門の不振を裏付けている。但し、工業生産者出荷価格は5月に前月比0.2%上昇と2月(3ヵ月前)の同0.1%下落を上回っており、今のところデフレ圧力は大きくない。他方、非製造業PMIは2ヵ月連続の“×”となったものの、前述の通り50%を大きく上回る水準にあり、予想指数も好調なため、しばらくは堅調を維持できそうだ。

中国経済,景気指標
(画像=ニッセイ基礎研究所)

一方、金融面の代表指標である通貨供給量(M2)をみると、5月は前年比8.5%増と2月(3ヵ月前)の同8.0%増を上回る“○”で、5ヵ月連続の“○”となった。融資面から見ても、社会融資総量残高は5月に前年比10.6%増と、18年12月の同9.8%増をボトムに緩やかに伸びを高めているため、今後は金融面から実体経済を支援して、景気をテコ入れする可能性がでてきている。

中国経済,景気指標
(画像=ニッセイ基礎研究所)

5月の景気インデックスは6.30%と再び減速!

最後に、中国経済に関する「景気インデックス」を紹介したい。かねがね読者の皆様からは、「中国経済の動向をひと目で分かるような指標は無いのか?」とのご質問を受けることが多かった。しかし、それに自信を持って紹介できるような指標はなかなか見出せなかった。そこで、そうしたご要望に少しでもお応えしようと微力ながらも開発したのが、この「景気インデックス」である。「景気インデックス」は、工業生産、サービス業生産、製造業PMIの3つを合成加工したもので、「月次の景気指標の動きを経済成長率に換算するとどの程度か」を表示する形式を採用している。

その推移をみると(図表-14)、18年3月の6.80%を直近ピークに減速し始め、18年10月に6.4%まで低下した後は横ばいで低迷することとなった。景気対策を背景に19年3月には一時6.56%まで上昇したものの長続きせず、5月には6.30%と18年11月の6.39%を下回り、再び減速し始めた。

中国経済,景気指標
(画像=ニッセイ基礎研究所)

【コラム】中国の乗用車販売不振と日系自動車

中国では乗用車販売の不振が続いている(図表-15)。19年1-5月期は約840万台で前年比15.2%減に留まった。但し、ブランド別に見ると(図表-16)、日系ブランドは約179万台で前年比4.4%増と好調である。19年7月から導入される環境規制(国6)の影響や日中関係の改善が背景にあると見られる。日系自動車メーカーへの悪影響は、今のところ相対的に小さいといえそうだ。

中国経済,景気指標
(画像=ニッセイ基礎研究所)

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三尾幸吉郎(みお こうきちろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 上席研究員

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