米中首脳会談を控えて膠着相場が続くが、下値は限定的

日本株相場は膠着感が強まっている。米国株の最高値更新やビットコインの急騰に見られるように、市場ではリスクオン・ムードが高まっているが、日本株は蚊帳の外だ。リスクオンは欧米金融当局が緩和姿勢に傾いていることが背景だが、日銀は手詰まり感が強いことから相対感から円高が進んだ。日本株は、世界的な金融緩和ムード・株高という好材料と円高という悪材料が拮抗して上にも下にも行けない。

チャート的にも膠着感が表われている。日経平均は一目均衡表の雲の下限に跳ね返されて下方に屈曲した形だ。それは節目の2万1500円程度。すぐ下の2万1400円台には日足では75日の、週足では13週の移動平均があってそれぞれ頭を抑える格好になっている。一方、下値では2万1000円台に日足では25日の、週足では26週の移動平均があって、下値支持線になると見られる。日経平均は上値抵抗線と下値支持線の間に挟まった格好だ。今週はこの狭いレンジの中で小動きの推移となり、膠着感が一層強まるだろう。

動けない理由は週末から始まるG20のタイミングで米中首脳が予定されているからである。結果がわかるのは今週の取引が終わってからだ。それを見定めるまでは売りにも買いにもポジションを傾けることはできない。

今週の経済指標では金曜日に鉱工業生産の発表がある。4月は持ち直したが、5月も製造工業生産予測調査の予測通りに改善しているか注目される。米国では個人消費・支出とPCEデフレータの発表があるが金曜日なので日本の相場には反映されない。週央に出る耐久財受注は弱含みそうで、金利低下に拍車がかかるかもしれない。そうなった場合、円高が懸念されるが、円高を嫌気して大きく下げた先週金曜日、東証1部の売買代金は2兆7000億円に膨らんだ。下げたところでは押し目買い意欲が旺盛である証だ。

投資部門別株式売買動向を見ると、海外投資家は6週連続の売り越しだが、事業法人は10週連続で買い越した。企業の自社株買いが外国人の売りを吸収する形になっている。これも下値が堅いと見る要因のひとつである。

今週の予想レンジは2万1000円~2万1500円とする。

広木隆 広木 隆(ひろき・たかし)マネックス証券 チーフ・ストラテジスト
上智大学外国語学部卒業。国内銀行系投資顧問。外資系運用会社、ヘッジファンドなど様々な運用機関でファンドマネージャー等を歴任。長期かつ幅広い運用の経験と知識に基づいた多角的な分析に強み。2010年より現職。著書『9割の負け組から脱出する投資の思考法』『ストラテジストにさよならを』『勝てるROE投資術


【関連リンク マネックス証券より】
日経平均3万円への到達は2021年12月末までに
視点・視野・視座 - FOMCを見る目
ビットコイン1万ドル超えでも、越えられない「心の壁」
ビットコイン=100万円の次の節目は1万ドル:FBの議論やG20警戒で下げるなら買い場か
FOMCの結果とマーケットへの影響