海運業界の環境保全への取り組みが、海洋をめぐる国際的なエコ意識の高まりの中で加速しそうだ。船舶機器や薬剤など関連するメーカーに商機が広がるほか、老齢船のスクラップ加速を通じてマーケットにも好影響をもたらす可能性がある。

株式新聞,船舶環境規制
(画像=PIXTA)

海事分野の国際ルールを定めるIMO(国際海事機関)はここ数年の間に、相次いで厳格な環境規制を打ち出した。運航者には来年から燃料に含まれるSOx(硫黄酸化物)濃度の大幅低減が課せられるほか、バラスト水(バランス制御に使う海水)処理装置の搭載義務付け、さらには温暖化ガス削減の長期目標も控える。

来年1月にスタートするSOx規制では、燃料油に占める硫黄分濃度の上限が現行の3.5%から七分の一の0.5%へと一気に引き下げられる。達成するための方法の一つが、低硫黄燃料油と呼ばれる新基準に適合した燃料油への切り替えだ。ただ精製に掛かるコストは高く、当然のことながら海運会社の運航コストに跳ね返る。

このため、SOxを洗浄する装置(SOxスクラバー)を導入する方法も注目される。同装置を使えば0.5%を超える高硫黄燃料油で運航することも可能。既存船に後付けできることもあり、選択肢の一つとなりそうだ。

バラスト水については、混入したプランクトンや魚類を薬剤やフィルターで排出前に処理することで排出時の生態系への影響を避ける。IMOの条約により、ほぼすべての外航船はそのための装置を2022年9月までに搭載する必要がある。その需要は15兆円規模とも言われている。

船主や海運会社は今後、環境対策への大きな投資を迫られる。また、温暖化ガスについても、IMOは50年までに08年比で半減する目標を掲げる。これに反するプレーヤーに対する融資を事実上禁止する取り決めが多数の世界大手銀の間で採択されるなど、厳しい目が業界外からも向けられている。

海運業をめぐる待ったなしの環境投資。そこには当然大きな商機が眠る。関連銘柄を表に示した。SOx規制に関してはスクラバーのメーカーや、高価な低硫黄燃料油の需要拡大に伴い石油元売りをピックアップ。温暖化ガス削減は、エンジン性能の向上に絡む企業の出番。バラスト水処理は装置や薬剤、関連技術を手掛ける銘柄を選んだ。海運会社は市況改善や値上げによる運賃上昇期待がある。

中でも注目は、数少ない日本のSOxスクラバーメーカーである三菱化工機(6331)。株価は17年秋から昨年末まで長い調整を挟んだが、ここへきて戻り歩調がしっかりし始めた。環境規制への意識は無関係ではないだろう。

バラスト水処理では、定量ポンプが採用されているイワキポンプ(6237)や、薬剤の四国化成工業(4099)に投資妙味。時価総額100億円未満の小型株では、造船のサノヤスホールディングス(7022)が狙い目。CO2(二酸化炭素)排出量削減や、低硫黄燃料に対応した船舶の開発に力を入れている。このほか、過去に大きく上昇したのはタクミナ(6322・(2))やアサカ理研(5724・JQ)だ。(6月27日株式新聞掲載記事)

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