米国株と為替次第で2万2000円の大台を試す場面も パウエルFRB議長による半期議会証言に注目
もちろん完璧な予測などできるわけがないが、先週のマーケット展望はかなりいい線をいっていたのではないか、と一人悦に入っている。先週の展望では、日銀短観で大企業製造業の景況感が2四半期連続で悪化の見込みだが、想定の範囲内なら相場への影響は限られるだろうと述べたが、実際その通りだった。米国のISM製造業景気指数に関しては、先行指標とされるシカゴPMIとの間に実はあまり相関がないことを述べた。果たして、シカゴPMIは大幅に悪化したものの、ISMの低下は限定的で市場予想を上回った。
そして極めつけは雇用統計だ。先週のマーケット展望から引用する。「全米の雇用全体からみれば製造業の割合は低い。ISMが昨年夏でピークを打って低下基調にある中でも、雇用者数の前月比は大きく伸びたり落ち込んだりとISMと無関係に増減してきた。今回も前回低調だった反動で市場の予想通り18万人程度の増加となるのではないか。そうなれば過度な利下げ期待は修正されるだろう。」
18万人増どころではなかった。非農業部門の雇用者数は22万4000人増と5月の7万2000人から回復し、市場予想も大幅に上回った。これを受けて利下げ観測も後退。「フェドウオッチ」による7月の利下げ確率は一時100%を割った。10年債利回りは一時2.06%と前日比11bps上昇する場面があった。
ただ想定外だったのは、株価が意外にしっかりしていたことだ。これは前に書いたことだが、市場はとにかくFedが利下げしてくれればよしとしているところがあって、年3回とか一気に50bpsとかはこの先、いくらでも修正可能とみているのだろう。先週末の雇用統計の結果を受けて、7月のFOMCで50bps利下げするという確率はさすがに減ったが、利下げ確率自体は依然100%である。だから、株式市場の下げも小幅にとどまったのだろう。一方、ドル円は一時108円60銭まで上昇した。米国株が崩れず、為替が円安に動くのは日本株にとっての追い風だ。
今週最大の注目は10、11日のパウエルFRB議長による半期議会証言だ。この議会証言の基になる金融政策報告書(ハンフリー・ホーキンス報告書)はすでに公表されており、そこには「経済成長の持続へ適切な行動をとる」と明記されている。これ以上の踏み込んだ発言や利下げタイミングに関する示唆があるかなど、見所は多い。
今週は良品計画(7453)、ローソン(2651)、ファストリ(9983)など小売りや安川電機(6506)の3~5月決算発表がある。先週発表されたニトリ(9843)の決算は市場予想を小幅ながら上回り株価は5ヶ月ぶり高値に上昇した。ニトリのケースは中国販売の回復期待という個別要因があるものの、大型連休効果や国内既存店売り上げの堅調さなどは他の小売りにも期待できるだろう。日銀短観でも製造業は悪いが非製造業の景況感は悪くない。小売りの決算に期待したい。
今週は米国株と為替次第で2万2000円の大台を試す場面もあるだろう。
予想レンジは2万1500円~2万2100円とする。
広木 隆(ひろき・たかし)マネックス証券 チーフ・ストラテジスト
上智大学外国語学部卒業。国内銀行系投資顧問。外資系運用会社、ヘッジファンドなど様々な運用機関でファンドマネージャー等を歴任。長期かつ幅広い運用の経験と知識に基づいた多角的な分析に強み。2010年より現職。著書『9割の負け組から脱出する投資の思考法』『ストラテジストにさよならを』『勝てるROE投資術』
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