前週末発表された米雇用統計の結果を受け、7月のFOMCでの利下げ観測が後退したことで、ドル買いの動きが強まっています。コンセンサスでは、引き続き25bpの利下げにはなっていますが、ここにきて利下げが回避されるかもしれないとの思惑は、ドルを買い支える材料になっており、10日、11日に予定されている、パウエルFRB議長の半期議会証言への期待感にも繋がっています。ただ、あくまでショートカバー中心の買い戻しになっていることから、積極的なドル買いを促すには、明日の議会証言にて利下げ後退のシグナルが発せられるかどうかがポイントになりそうです。
トルコリラについては、エルドアン・トルコ大統領がチェティンカヤ・トルコ中銀総裁を解任したことを発表したことで、中銀の独立性が危ぶまれるとの懸念が強まっており、オープニングからは若干値を戻しているものの、前週末の水準にはまだ回復できていません。逆に、南アフリカでは、ムボウェニ財務相とクガニャゴ南ア準備銀行(SARB)総裁が共同声明で、お互いの職権を侵害しないことを発表しており、同じエマージング通貨ではありますが、真逆の方針をとっています。南ランド円が堅調な推移を見せていることを考えると、トルコについては、早急に体制の立て直しが必要なのかもしれません。
メキシコペソ円については、メキシコが米国への移民流入を阻止する取り組みを強化したこともあり、トランプ大統領が「対メキシコ関税は検討の対象にない」などと発言しているため、堅調な推移を維持しています。米国による関税措置のリスクが低下していること、さらには、WTI原油先物価格の上昇を背景に産油国通貨とされるメキシコの通貨ペソが買われやすい状況にあることから、メキシコペソ円で5.80円を目指す動きになっています。
今後の見通し
今週の注目としては、10日、11日に行われるパウエルFRB議長の半期議会証言になります。7月の利下げを行うかどうかの判断基準としてこれ以上ない材料であるため、注目度の高いイベントになっています。この議会証言は、金融政策報告書(ハンフリー・ホーキンス報告書)が基になっており、既にこの報告書は公表されており、そこには「経済成長の持続へ適切な行動をとる」と明記されています。注目されるのは、利下げ観測後退の状況であっても、株価がそれほど下がっていないということです。市場では、既に7月の利下げ観測後退を織り込む動きを見せており、ドル円は108.80円台まで買い戻されています。7月の利下げが回避されるような発言があれば、ドル円は109円半ば付近まで上値を拡大してもおかしくないでしょう。
クーレECB専務理事は、ユーロ圏経済はこれまで以上に緩和的な金融政策が必要となっており、必要ならば政策金利を引き下げたうえ、QE(量的緩和)の再開も辞さない、という考えを明らかにしました。ECBの各関係者の発言をまとめると、やはり早期利下げがコンセンサスになっていると考えてよさそうです。引き続き、7月にECBがフォワードガイダンスを変更、9月に超過準備の階層化を導入せずに10bpの利下げを行うとの見方に変更はありません。
ドル円については、109円レジスタンスが最後の砦
ドル円については、FRBの利下げ観測が後退していることもあり、108.80円付近に戻ってきています。ただ、109円レジスタンスは健在であり、ショートポジションについては、引き続きキープで考えます。108.50円でのドル円ショート、損切りは109.00円上抜け、利食いについては、107.10円での設定です。
海外時間からの流れ
英国のメール・オン・サンデー紙は、キム・ダロック駐米大使が英政府向けの機密報告の中で、「トランプ政権は無能で、機能不全」と評価していたと報じました。トランプ大統領は、「私はこの大使のことを知らないが、われわれは今後対応しない」「メイ首相と彼女の代表はとんでもない混乱を引き起こしてくれた。」と発言しており、米英の関係が悪化するようであれば、リスク回避の動きが強まる可能性があり、今後のヘッドラインが注目されます。
今日の予定
本日は、加・6月住宅着工件数/5月住宅建設許可、米・5月JOLT労働調査などの経済指標が予定されています。要人発言では、ビスコ・伊中銀総裁、ブラード・セントルイス連銀総裁、ボスティック・アトランタ連銀総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。