欧州猛暑、日本は冷夏
世界で異常気象が続いている。6月末に熱波が発生した欧州では、フランスで過去最高の気温を記録。インドでは大雨により、擁壁(ようへき)が崩落する事故が起きた。一方、前週に九州地方が豪雨に見舞われた日本は、ここへきて気温が急低下。冷夏の観測も浮上している。こうした天候不順は経済に悪影響をもたらすものの、中には株高につながる銘柄もありそうだ。
欧州では直近、フランス南部で摂氏45.9度の危険な暑さを観測した。家庭用エアコンの普及率が低く、過去にも猛暑で多くの死者が出るなど対策が求められているだけに、ダイキン工業(6367)や富士通ゼネラル(6755)には商機が広がっている。
こうした中、やはり市場開拓のチャンスを迎えそうなのが小林製薬(4967)だ。同社は冷却ジェルシート「熱さまシート」を手掛けている。同製品の売上高は2014年時点で海外が国内を逆転。また、国内売上には中国人などインバウンド(訪日外国人観光客)によるものも多い。
折しも、今年9月には日本でラグビーワールドカップ(W杯)が開幕し、来年夏には東京五輪も控える。冷却ジェルシートをおでこに張った観客の様子が訪日客やテレビを通して世界に伝わることで、知名度が一気に上昇することも期待される。
同社の今12月期の連結営業利益の予想は、前期比3.8%増の273億円。もちろん日本で冷夏となった場合のマイナス材料を加味する必要はあるが、株価は調整が進んでいるため業績への期待値はさほど高くないと考えられる。中・長期的な海外市場の成長性を踏まえると、面白い存在になってくる。
異常気象により心配されることの一つがコメや野菜の育成だ。日本ではこれまでも冷夏がきっかけとなってコメ不足に陥ったことがある。その際に思惑が向かったのが倉庫業でコメ卸を営むヤマタネ(9305)だ。
ヤマタネの株価は「米騒動」という言葉まで流行した1993年や、10年ぶりの冷夏となった03年、梅雨明けが遅く日照時間が短かった09年といずれも夏場に急騰している。このため、「記憶と連想のゲーム」が繰り広げられる株式市場では脚光を浴びやすい。
このほか、暑さや水害は感染病の温床となる。ブラジルでは蚊が媒介するデング熱が急速に広がっている。大型スポーツイベントが相次ぐ日本にとって対岸の火事ではない。
デング熱対策では武田薬品工業(4502)がワクチンを開発中。殺虫剤のフマキラー(4998・(2))やアース製薬(4985)、網戸用防虫プラスチックのニックス(4243・JQ)などが関連銘柄として浮上しそうだ。(7月12日株式新聞掲載記事)
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