国土交通省が発表した「平成31年の地価公示の概要(以下『資料』と呼びます)」によると、全国の地価は2015年から4年連続で上昇しました。時代の変わり目を有終の美で飾ったといえます。はたして令和元年以降もこの上昇傾向は続くのでしょうか。平成後半の変動を振り返り、相場を読み解くヒントを探ります。
大阪圏では14%超の上昇も
公示地価の全国平均は、2018~2019年にかけて1.2%上昇しました。全国・全用途の平均としては11年ぶりの上昇率です。特に商業地における伸びがめざましく、東京・大阪・名古屋の3大都市圏は5.1%でした。資料では商業地における上昇の背景として「景気回復」とともに、「主要都市でのオフィス空室率の低下、賃料上昇による収益性の向上」「外国人観光客の増加等による店舗、ホテルなどの進出意欲が旺盛」などを挙げています。
賃貸事務所や商業ビルのオーナーの中には、追い風が吹いていると感じる人も多いのではないでしょうか。大阪の上昇率は3大都市圏の中でも6.4%と、商業地の上昇をけん引しています。特に目立つのは、オフィス需要・観光客ともに多い大阪中心6区、国内外の旅行客から観光名所として親しまれている京都中心5区の2つの地域で変動率は14%超です。
大都市圏の商業地では他に、東京都23区の7.9%、神奈川県川崎市の4.8%、愛知県名古屋市の8.9%などが大きな上昇を見せています。
福岡市や仙台市はきれいな上昇トレンド
全国平均を押し上げたのは、3大都市圏だけではありません。地方も大きく貢献しています。住宅地が上昇した都道府県の数は、前年の14から18と増加。3大都市圏を除いた地方圏の平均が上がったのは27年ぶりのことです。特に顕著なのは札幌市・仙台市・広島市・福岡市の地方4市です。これら4市の平均は、全用途・住宅地・商業地のいずれにおいても、3大都市の上昇率を上回っています。
商業地の上昇率9.4%もさることながら、注目すべきは住宅地でしょう。3大都市圏が軒並み1%台前半なのに対し、地方4市は4.4%と大きな差をつけています。次のグラフは3大都市圏に地方4市を加えた7大都市における住宅地の変動率を表しています。対象とする期間は、平成後半の2004~2019年です。平成元年~としなかったのは、昭和末期から続いたバブルの影響を除くためです。
住宅地においては、リーマンショックの影響があった2009年を底に、すべての都市で上昇トレンドに突入しました。特に仙台市や福岡市などは、きれいな右肩上がりの線を描いています。上昇にはそれぞれに違った背景があります。仙台市では再開発による影響が大きく見られました。2015年の地下鉄東西線開業に伴い、宅地の開発が進んだのです。
福岡市は観光地として集客が盛んなことが主な要因でしょう。2018年時点で観光客数は6年連続で過去最高を更新し、外国人入国者数も7年連続で増えています。
それぞれの特徴として、3大都市は回復が早いものの変動が激しく、地方圏はその逆で上昇も下落もゆるやかであることがわかります。
このように地価変動を細かく見ていくと、地方によって動きに特徴があることがわかります。
地価の上昇は今後も続くのか?
7大都市を中心に、全国の地価は上昇傾向にあります。その背景は地域によって違いがありますが、主だったものは景気の回復、観光客数の増加、再開発などです。今後もこれらの要因が継続して発生し、かつリーマンショックやバブル崩壊のような大きな経済変動がなければ、上昇傾向は続くと見るのが自然でしょう。
要因を一つ一つ見ていきます。まずは観光客数です。日本を訪れる外国人の数は年々増加し、平成最後の通年記録となる2018年には過去最高の約3,119万人を記録しました。2020年の東京オリンピックやそれによる宣伝効果も相まって、引き続き強い観光需要が見込めます。再開発に関しては、個別に見たほうがよいでしょう。
都道府県や市区町村、鉄道会社や建設会社などのホームページなど、ヒントはたくさんあります。再開発に特化した情報サイトなどもありますが、最終的に自治体の情報などで確認することをおすすめします。不動産は個別性が高く、地価変動を形成する要因は複雑です。先の見通しを立てやすくするためには、購入を検討している土地や所有物件などのエリアに関する情報を一つ一つ丁寧に集めていくとよいでしょう。
地価動向を知るために必要な地域の情報
平成時代の後半における地価動向をひも解いていくと、それぞれの地域、土地の用途によって、さまざまな変動要因があることがわかります。今後の傾向を予想するためには、物件が属する地域の景気や観光客数、再開発などの情報を調べるとよいでしょう。(提供:YANUSY)
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