不動産のユニゾホールディングス(3258)へのTOB(株式公開買い付け)をめぐる思惑が、同社の株価を押し上げている。旅行大手のエイチ・アイ・エス(=HIS、9603)による敵対的買収は、土地含み益を加味した実質PBR(株価純資産倍率)が低い数多の銘柄が見直される大きなきっかけとなる可能性がある。

実質低PBR銘柄
(画像=PIXTA)

ユニゾHDが6日に反対姿勢を表明したことで、HISによるTOBはいわゆる敵対的買収に発展した。既にTOB価格の3100円を上回る水準で取引されていたユニゾHDの株価は7日、年初来高値の3720円まで上昇。米大手ヘッジファンドの大量保有も判明し、事態は白熱してきた。

名目上のユニゾHDのPBRは1.1倍と解散価値を上回っている。しかし、不動産の含み益(前3月期末で1364億円)を考慮した実質的な純資産は額面(同1132億円)の2.2倍に膨れ上がる。ここへきてユニゾHDが不動産を相次ぎ売却しているとはいえ、実質的なバリュエーションは依然割安ととらえることができる。

都心では不動産市況が高騰し物件の仕入れコストが跳ね上がっている。一方、不動産を保有する企業の株価は軒並み割安な状況だ。HISの行動はその成否にかかわらず、こうしたいびつな価値基準を実質低PBR銘柄の株価上昇という形で訂正する動きを促す可能性がある。

IHI(7013)は前期末の含み益が1720億円あり、これを合わせた実質純資産は5537億円になる。時価総額は3628億円にすぎず、割安感は大きい。同社は過去にも有名なアクティビスト(物言う株主)のファンドから含み益の活用を促された経緯がある。

このほか、東京五輪へ向け活性化する勝どき・月島エリアに不動産を展開する巴コーポレーション(1921)は、前3月期末の含み益が261億円と時価総額(約150億円)を上回る。倉庫セクターでは渋沢倉庫(9304)のPBRが、名目の0.6倍から、含み益(560億円)を加味した実質ベースで0.3倍程度まで低下する。

穴株は時価総額30億円台でPBRが0.4倍にとどまるサンリツ(9366)。同社は主力の輸出用こん包のほか、倉庫事業も展開する。有価証券報告書に記載された「賃貸等不動産として使用される部分を含む不動産」の前3月期末の時価と簿価の差は96億円。これは純資産(80億円)の2倍超に当たり、実質PBRは割安感が際立ってくる。(8月8日株式新聞掲載記事)

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