4-6月期は前期比年率1.8%と3四半期連続のプラス成長

2本日(8/9)発表された2019年4-6月期の実質GDP(1次速報値)は、前期比0.4%(前期比年率1.8%)と3四半期連続のプラス成長となった(当研究所予測7月31日:前期比▲0.1%、年率▲0.2%)。

海外経済の減速や世界的なIT需要の落ち込みを背景に輸出が前期比▲0.1%と低迷を続ける中、輸入が同1.6%と増加したことから外需寄与度が▲0.3%(年率▲1.2%)と成長率を押し下げた。

一方、民間消費(前期比0.6%)、設備投資(同1.5%)を中心に民間需要が好調だったことに加え、政府消費(前期比0.9%)、公的固定資本形成(同1.0%)も堅調な動きとなったことから、国内需要が前期比0.7%(年率3.0%)の高い伸びとなった。

外需のマイナスを国内需要のプラスが大きく上回ったことにより日本経済は3四半期連続で1%程度とされる潜在成長率を上回る高成長となった。

名目GDPは前期比0.4%(前期比年率1.7%)と3四半期連続の増加となり、実質と同程度の伸びとなった。GDPデフレーターは前期比▲0.0%(1-3月期:同0.3%)、前年比0.4%(1-3月期:同0.1%)であった。

2019年4-6月期の1次速報と同時に基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから過去の成長率も遡及改定され、2019年1-3月期の実質GDP成長率(前期比年率)は前期比年率2.2%から同2.8%へと上方修正された。前期比▲0.1%の減少となっていた民間消費が同0.1%の増加へと改定されたことがその主因である。

QE速報
(画像=ニッセイ基礎研究所)

●需要項目別の動き

民間消費は前期比0.6%と3四半期連続で増加した。

雇用所得環境が改善を続ける中、GW10連休の影響で旅行、外食などのサービス消費が好調だったこと、耐久財の一部で消費税率引き上げ前の駆け込み需要が発生したことが消費を押し上げた。ただし、食料品の相次ぐ値上げなどによる消費者マインドの悪化が重石となり、GW明け後の消費は勢いを失っている。

実質家計消費の内訳を形態別にみると、被服・履物、家具などの半耐久財は前期比▲0.5%と2四半期連続で減少したが、外食、旅行などのサービスが前期比0.4%の増加となったことに加え、自動車などで消費増税前の駆け込み需要がみられた耐久財が同4.3%の高い伸びとなった。

なお、現時点では7-9月期の民間消費は前期比1%程度の高い伸びになると予想している。消費増税前の駆け込み需要は前回(2014年度)に比べれば小さくなる公算が大きいが、税率引き上げ直前には日用品を中心に駆け込み需要が発生し、消費の基調が見極めにくくなるだろう。

住宅投資は前期比0.2%と4四半期連続で増加した。新設住宅着工戸数(季節調整済・年率換算値)は2019年1-3月期以降の94.2万戸から4-6月期には91.8万戸へと減少したが、GDP統計の住宅投資は工事の進捗ベースで計上されるため、1-3月期までの堅調な着工戸数の動きが反映された。

利用関係別には、持家は堅調に推移しているが、相続税対策需要の一巡から貸家は弱い動きが続いており、分譲住宅は2019年度入り後に落ち込んだ。

住宅は2019年3月末までに契約すれば、引き渡しが10月以降でも現行の8%の消費税率が適用される。このため、2018年度末にかけて一定程度の駆け込み需要が発生したが、2019年4月以降の着工戸数は弱い動きとなっている。増税前の駆け込み需要はほぼ出尽くした可能性が高く、その規模は限定的にとどまった模様だ。

設備投資は前期比1.5%と3四半期連続で増加した。高水準の企業収益を背景に人手不足対応の省力化投資、都市再開発投資、研究開発投資などが設備投資の押し上げ要因となった。

設備投資は好調を維持しているが、先行きについては慎重にみておく必要があるだろう。日銀短観2019年6月調査では、2019年度の設備投資計画が前年度比6.3%増となったが、同時期(6月調査)の2017、2018年度の伸びは下回った。輸出の減少や企業収益の悪化を受けて、製造業では2018年12月調査以降、設備投資計画の先送りが続いているが、上方修正が続いていた非製造業も2019年6月調査では2018年度の修正率(実績見込→実績)が▲5.1%の大幅マイナスとなった。

人手不足対応の省力化投資など景気循環に左右されにくい需要は引き続き旺盛であるため、設備投資が大崩れする可能性は低いとみられるが、企業収益が悪化している製造業を中心に設備投資の牽引力が徐々に低下することは避けられないだろう。

公的固定資本形成は前期比1.0%と2四半期連続で増加した。政府は、2018年度第1次補正予算に続き、2018年12月に閣議決定した「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」に基づき、2018年度の第2次補正予算で公共事業関係費を大幅に積み増したほか、2019年度の当初予算でも公共事業関係費を2018年度当初予算比で9,310億円増(うち、臨時・特別の措置が8,503億円)、前年比15.6%の大幅増加とした。公的固定資本形成は先行きも増加が続く可能性が高いだろう。

外需寄与度は前期比▲0.3%(前期比年率▲1.2%)と2四半期ぶりのマイナスとなった。海外経済の減速や世界的なIT需要の落ち込みを背景に、財貨・サービスの輸出が前期比▲0.1%と低迷が続く一方、前期の大幅な落ち込みの反動や国内需要の底堅さを反映し、財貨・サービスの輸入が前期比1.6%の増加となったため、外需が成長率を大きく押し下げた。

●7-9月期の成長率は前回増税前を大きく下回る公算

実質GDP成長率は2019年1-3月期の前期比年率2.8%から4-6月期は同1.8%へと減速したが、1-3月期は輸入の大幅減少による外需の押し上げが高成長の主因だったのに対し、4-6月期は国内需要の柱である民間消費、設備投資を中心とした国内需要の高い伸びが外需のマイナスをカバーする形となっており、1-3月期よりも成長の中身は良い。

2019年7-9月期は消費税率引き上げ前の駆け込み需要によって民間消費が高い伸びとなることから明確なプラス成長となることが予想される。ただし、軽減税率の導入や多岐にわたる増税対策の影響で駆け込み需要の規模が前回よりも小さいこと、輸出の低迷が続き外需が成長率の押し下げ要因となる可能性が高いことから、成長率のプラス幅は前回増税前(2014年1-3月期:前期比年率3.9%)を大きく下回るだろう。

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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任

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