外貨預金をする上で為替相場の動きは重要だ。為替相場に大きな影響を与える経済指標や要人発言などを金融市場では「イベント」と呼ぶこともある。毎月発表される経済指標や要人発言など、外貨預金をする際に押さえておきたいイベントを5つ紹介しよう。

(1) 連邦公開市場委員会 (FOMC)

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(写真=ventdusud / Shutterstock.com)

FOMCは米国の中央銀行にあたる連邦準備制度理事会 (FRB) が開催する米国の金融政策を決める会合のこと。FOMCが6週間ごとの火曜日に年8回開催している。米国の金融政策が金融市場に及ぼす影響は大きい。金利の誘導目標であるFFレートや今後の金融政策の方針が決められる。FOMC後、FRB議長の記者会見や議事録の公開も重要イベントとなる。FRBは12名のメンバーで構成され、他の理事の発言にも注目が集まる。同様に、欧州中央銀行 (ECB) 理事会や日銀金融政策決定会合も重要なイベントだ。

(2) 米雇用統計

FRBが金融政策を決定する上で最も重視している指標が米雇用統計だ。通常、米労働省が毎月第1金曜日に公表している。景気にリアルタイムに連動する非農業部門従事者数 (NFP) の注目度が高く、前月比の増減や事前予想との比較が重要となる。そのほか、平均時給や失業率の推移などが注目される。

教科書的には、非農業部門雇用者数の増加は「ドル買い要因」となる。労働需要の強さは景気の底堅さを表しており、平均賃金が上昇しやすくなる。そうなるとインフレ懸念が意識され、次のFOMCで利上げを行う可能性が高まるためだ。しかし、「数値が良いとドル買い」、「数値が悪いとドル売り」と単純に判断するのは禁物だ。重視されるのは、事前予想との乖離で、数値が悪くても事前予想と同水準であれば、悪材料の出尽くしからドルが買われることもある。

(3) 米PCEコアデフレータ 毎月月末

FRBは、米GDPの7割を占める個人消費の動向も重視している。インフレはバブルを呼ぶ可能性があり、ディスインフレは日本の90年代のように成長が停滞する可能性があり、各国の中央銀行も同様に注目している。

インフレ統計には、消費者物価指数や卸売物価指数などが存在するが、FRBが特に重視しているのがPCEコアデフレータだ。家計が購入した財やサービスの統計であるPCEデフレータから、変動の大きい食品とエネルギーを除いたインフレ指標だ。米商務省が毎月月末 (夏時間:日本時間午後9時半、冬時間:日本時間午後10時半) に発表している。PCEデフレータの見方は、数値の変化率がプラスであればインフレ、マイナスであればデフレと判断することができる。

(4) 米ISM製造業景況感指数

米経済成長率 (GDP) は景気指標として大事な指標だが、四半期に一度、かつ過去を示す指標のため、先行きを探る上では有益性に欠ける。そこで注目されるのが景気先行指標だ。

景気先行指標には景気先行指数 (コンファレンスボード) などもあるが、発表が早いこともあり全米供給管理協会 (ISM) が算出する米ISM製造業景況感指数の注目度が高い。米国の製造業 (300社以上) の購買担当者に、受注、生産、価格、雇用などの項目について先行きの見方をアンケート集計し、指数化したものを全米供給管理協会 (ISM) が毎月第1営業日に公表している。

50%を上回ると景気拡大、50%を下回ると景気後退を示すが、それだけを見ていては精度の高い先行き見通しを立てるのは難しい。アンケート一つひとつの項目がどのように変動しているか詳細まで分析したい。例えば、受注指標が増加傾向を示し、雇用指標に変動がなければ、「今後は雇用者数を増やすかもしれない」といった仮説を立てることが出来る。製造業の担当者は生産や販売、在庫などの状況を把握し、状況に応じて仕入れや原材料調達に動いている。企業活動の先行きを把握することができる現場の数値といえるだろう。

(5) トランプ大統領のツイッター発言やグローバル企業の決算発表、記者会見

トランプ大統領のツイッター発言にも注目したい。ときに過激な発言を投稿し、市場を揺さぶることも多いことから、「トランプリスク」などと言われ恐れられることもある。

FRBのパウエル議長や日銀の黒田総裁、中国の習近平国家主席や北朝鮮の金正恩委員長などの発言にも為替相場は反応を示すことが多い。要人発言に対しては、メディアにヘッドラインが流れると、イベントドリブンのヘッジファンドなどのAIがテキストリーディングでポジティブかネガティブかを判断して、機械取引で自動的に市場に売買注文を出す仕組みが組まれているためだ。

大企業の決算発表や記者会見も重要だ。2019年の年初には、アップルが業績の下方修正を発表したことをきっかけに、株式市場だけでなくドル円相場も大きく反応し、一時104円台を記録したことは記憶に新しい。

日本ではソフトバンクの孫正義氏の発言や、トヨタ、ソニー、任天堂などのグローバル企業の決算発表を受けて、株式市場だけでなく為替が動くことも多い。

イベントで為替を見る習慣を

為替相場をはじめ金融市場は、重要イベントの前後で大きく動きやすい。重要イベントにはトレンドがある。その時の市場動向により、景気、金利、貿易、政治など、市場が注目するイベントの優先順位も変動する。外貨預金を始めようと思っている人、あるいは既に始めている人は、ここで紹介した重要イベントの前後ではそれぞれのポイントを意識しながら投資判断を下すことを心掛けよう。(提供:大和ネクスト銀行

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