MBSを消して得をするのは誰か?
この状況に危機感を覚え、サウジアラビアの改革を進めているのが、高齢のサルマン国王に代わりこの国を治めるムハンマド・ビン・サルマン王子(通称MBS)です。オイルマネーに胡坐をかいてきた王族たちを排除するなどの粛正を断行してきました。当然、MBSに不満を持つ王族も多くいます。
サウード家の腐敗を暴いてきたトルコ系サウジアラビア人ジャーナリストであるジャマル・カショギ氏の殺害事件。同氏は結婚届を出しに行ったトルコのサウジアラビア領事館で消息を断ち、トルコ政府がサウジ当局による殺人だ、と発表したのです。サウジアラビアの国際的な立場は悪くなり、同国を擁護するトランプ大統領への反発も強まっています。
誰が殺害を命じたのかは明らかになっていません。MBS黒幕説もありますが、なぜ証拠が残る領事館でわざわざ殺すのか、疑問が残ります。
むしろ、MBSを陥れようとする勢力の陰謀である可能性が高いでしょう。カショギ氏殺害によって、サウジアラビアの深刻な内部対立が明らかになり、米国のサウジ離れも進みます。サウジアラビアの苦境を一番喜んでいるのは、イランでしょう。
茂木 誠(もぎ・まこと)
駿台予備学校世界史科講師
東京都出身。駿台予備学校やネット配信のN予備校にて世界史の講師として多数の受験生を指導している。受験の参考書のほか、『経済は世界史から学べ!』(ダイヤモンド社)『マンガでわかる地政学』(池田書店)『ニュースの〝なぜ?″は世界史に学べ』(SB新書)『世界史につなげて学べ 超日本史』など著書多数。(『THE21オンライン』2019年07月03日 公開)
【関連記事THE21オンラインより】
・ブレグジットの次のシナリオは、「日英同盟」の復活!?
・中国の「一帯一路」構想は 帝国主義の再来か
・貿易問題よりも根深い 「米中冷戦」の本質