8月14日、ダウ平均株価が前日比800.49ドル安(3.05%安)と急落したことは記憶に新しい。背景には米国債市場で景気後退の前兆とされる長短金利の逆転が指摘されていた。ところが、その後時間が経過するにつれてウォール街では「長短金利逆転で景気後退」を疑問視する声が広がりを見せている。

果たして、米国は景気後退に突入するのか? 今回はウォール街で広がる「長短金利逆転」の波紋についてリポートしたい。

景気後退の「負の連鎖」を懸念?

長短金利,逆転
(画像=NataliiaK / shutterstock, ZUU online)

一般的に長短金利の逆転は景気後退のサインとして広く認識されている。これは長短金利が逆転するとその後に景気後退が続いた経験則に基づいている。たとえば、過去の事例を見ると、ITバブル崩壊や金融危機に先立って長短金利が逆転しており、1980年代以降の5回の景気後退はいずれも逆転後に起きている。少なくとも過去においては長短金利の逆転が景気後退のサインとして警鐘を鳴らしてきた側面があると言えよう。

ちなみに、長短金利には2つあって、10年債と3ヵ月物短期証券との利回りが比較されることもあれば、10年債と2年債の利回りが比較されることもある。10年債と3ヵ月物の利回りはすでに3月に逆転が起きており、この時も話題となった。続いて、10年債と2年債でも逆転が起きたことで景気後退への警戒感を一段と強める形となった。10年債の利回りが2年債の利回りを下回るのは2007年以来12年ぶりのことだ。

長短金利の逆転は、銀行の利ザヤを縮小させるとも考えらており、収益力の低下で企業への貸し出しが慎重になり、そこから景気後退への負の連鎖が始まるのではないか、とも心配されている。

イエレン前FRB議長「今回は当てはまらないかもしれない」

ただ、ウォール街では「長短金利逆転で景気後退」という過去の経験則は今回は当てはまらないとの意見も聞かれる。その急先鋒とも呼べる存在がジャネット・イエレン前FRB(米連邦準備制度理事会)議長だ。