定年を迎えるまでに八つの趣味を持つべし

やりたいことをすぐやるべきなのは、それがそのまま定年後の準備にもなるからだという。

「ダイビング、ジェットスキー、バイク、スノーモービル。これらはすべて、若い頃に始め、現在も継続中の私の趣味の一部だ。同じことを定年になってから始めても、おそらく一つもモノにならないだろう。これは非常に大切なことなので、ぜひ覚えておいてほしい。『いずれ時間とお金に余裕ができたら』などと言っていたら、首尾よくそのときが来たとしても、精神的にも肉体的にも楽しめなくなっているかもしれないのだ。それで、高齢者の趣味というと、すぐにできる犬の散歩と蘭の栽培に落ち着いてしまうのである。

人生を死ぬまで楽しむには、八つの趣味が必要だというのが私の持論だ。趣味には、『室内で個人』『室内でグループ』『屋外で個人』『屋外でグループ』という四つのジャンルがあるので、それぞれ二つずつで合計八つとなる。定年になってから『八つの趣味を始めましょう』と言っても、そんなのはムリに決まっている。

だからこそ、若い頃から色々なことに挑戦して、『これは生涯の趣味になる』というものを見つけておくことが絶対に必要だ。

私には『やりたいことは全部やれ!』(講談社文庫)という著作がある。自分の人生なのだ。やりたいことは全部やろう。そのために休みはあるのさ」

《取材・構成:山口雅之 写真撮影:永井 浩》
《『THE21』2019年7月号より》

大前研一(おおまえ・けんいち)
経営コンサルタント
1943年、福岡県生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、東京工業大学大学院原子核工学科で修士号を、マサチューセッツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。〔株〕日立製作所原子力開発部技師を経て、72年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インクに入社。本社ディレクター、常務会メンバー、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、94年に退社。現在は、〔株〕ビジネス・ブレークスルー(BBT)代表取締役会長、BBT大学学長などを務め、日本の将来を担う人材育成に力を注いでいる。近著に『大前研一 世界の潮流2019~20』(プレジデント社)などがある。(『THE21オンライン』2019年07月19日 公開)

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