最も重要な「物件選び」。失敗しないポイントは?

ローンを組んで不動産投資を始めた場合、手取りの収入は、月々の家賃からローンの返済額や諸経費を差し引いた金額になる。

「例えば、200万円を銀行に預けていても、今は普通預金の金利が0.001%程度、定期預金でも0.01%程度ですから、年間20円や200円しか増えません。一方、200万円を頭金にして物件を購入し、月々1万円が手取りの収入になれば、年間12万円を得られます。ただし、当然ですが、手取りの収入がマイナスになってしまう物件を購入すると、損をしてしまいます。プラスになる物件を選ぶことが重要です」

となると、ローンの返済額を家賃収入以下に抑えるとともに、入居者が見つかりやすく、空室になったり家賃を下げざるを得なくなったりするリスクの少ない物件を見極める必要がある。

「最大のポイントは、街です。人気がある街の物件なら、入居者が見つかりやすい。空き家問題が起きているような地方の街の物件は、普通は、まず選択肢に入りません。やはり、東京をはじめとした大都市圏で物件を選ぶのがいいでしょう」

現時点での人気だけでなく、20年後、30年後の未来も見据えておくことが大切だ。

「例えば、今は人気がある郊外の新興住宅地でも、30年経てば入居者が見つからなくなる可能性があります。暮らしている人の年齢層が同じなので、皆、一斉に高齢化してしまうからです。様々な属性の人が住む都心部のほうが、賃貸需要が安定しています。とはいえ、都心の一等地となると物件価格が高すぎますから、都心から電車で30分以内、駅から徒歩10分以内が、サラリーマンには狙いやすいでしょう。中古の区分ワンルームマンションなら、都心でも手の届きやすいものがあります。ワンルームには、学生や独身の社会人などの需要が常にあるというメリットもあります」

ただ都市部の人気エリアの物件であればいいわけではなく、必ずその街に足を運んで、実際に自分の目で確かめるべきだと、午堂氏は勧める。

「地方の方が都市部の物件を購入するケースも増えています。そうした方々も、各種メディアを通して、ある程度は都市部についての知識を持っているでしょう。とはいえ、東急東横線のような人気路線の沿線でも、駅によっては閑散としていたりします。『人気という評判だから』というだけで決めず、周辺を歩いてみて、街に活気があるか、賃貸物件に住む年齢層の人が多いか、などをチェックしましょう」

室内の設備に関しては、「自分が住んで快適か」ではなく、借りる人の立場に立って考えるのがポイントだという。

「単身者用の物件なら、単身者が何を重視するかを考えましょう。通勤に便利な立地であることが第一で、家には寝に帰るだけという人も多いので、設備がそこまで充実している必要はありません。バスとトイレは別のほうが好まれる、といった傾向はありますが、一体型でも、立地や家賃を優先して考える人も多いですから」

優良物件に出合うための業者とのつきあい方

物件を選ぶ際には、不動産業者から物件を紹介してもらうことになる。ということは、良い物件の情報を持っている不動産業者と出会うことも大切だ。

「大手の不動産仲介業者を訪ねてみるのもいいでしょうし、もし希望のエリアが決まっているなら、そのエリアの地元の業者にアプローチするのもいいでしょう。地元の業者は、市場に出さない物件情報を持っていることがあります。市場に出さずに仲介すれば、売り主と購入者の双方から手数料を取れますが、市場に出して、もし別の業者が購入者を見つけたら、売り主からしか手数料を得られないので、市場に出さなくても売れそうな物件は、市場に出さないのです。なので、大手だけでなく、地元の業者も訪ねて、隠れた優良物件を探すのもお勧めです」

不動産仲介業者に対しては、購入する意思をきちんと見せることもポイントだという。

「業者は、冷やかし客だと思うと、情報を持っていても出してくれません。希望する条件をきちんと伝えたうえで、購入に積極的な姿勢を前面に出し、有望な見込み客だという印象を持ってもらいましょう」

物件を購入したあとは、賃貸管理会社と契約することになる。賃貸管理会社の良し悪しを見定めるポイントはどこだろうか。

「一つは、機動力です。入居者からのクレームへの対応や退去後のルームクリーニング、次の入居者の募集などが迅速な管理会社が、良い管理会社だと言えるでしょう。内見者との家賃交渉をどれだけ有利に導けるかも重要です。しかし、これらは、契約後でないとわからないのが難しいところ。ですから、まずは、問い合わせへのレスポンスが早い、対応が丁寧か、といったところで判断しましょう。不満が出てきたら、担当者を変えてもらったり、別の管理会社に変えたりすればいいのです。なお、機動力には物件との物理的な距離も大いに影響しますから、物件の近くに店を構えている管理会社を選ぶという手もあります」