史上最高値近辺で推移する米国株。一方、いまだに2万円近辺で推移する日経平均株価。儲からない日本株に嫌気が差した日本の個人投資家の資産が米国株に流れ出しているという。好景気に沸く、米国フロリダからコンテクスチュアル・インベストメンツの広瀬隆雄氏が米国株の注目点と今後についてリポートする。
(取材・文 植草まさし)
トランプ減税で個人消費は好調。好景気に沸く米国
ショッピングを楽しんだ客が両手に大きなバッグを抱え、持ちきれない品物は従業員が手押しカートで駐車場まで運ぶ――。私の住む米国・フロリダ州のデパートは活況が続き、米国の個人消費の盛り上がりを肌で感じさせる。一方、トランプ大統領が仕掛ける中国との貿易戦争など景気や株価の不透明要因は少なくない。トランプ政権と距離を置くFRB(連邦準備制度理事会)による金融政策の行方もマーケットを大きく左右しそうだ。
米国の景気はとてもよく、GDP(国内総生産)の7割を占める個人消費が特に好調だ。2017年12月に法案が成立したトランプ減税の効果による部分が大きいのだろう。減税は個人と企業で、10年間で合計1.5兆ドル(1ドル=105円換算で157.5兆円)という大規模なものだ。ただ、個人消費は景気の遅行指標だ。景気がいいから個人消費が活発なのは確かだが、今の個人消費の活発さがこの先の好景気を保証するわけではない点に留意したい。米国株の先行きについても強気で見ているが、リスク要因が増えているのも事実だ。
今、米国株のPER(株価収益率)は16倍台半ばと、過去5年の平均(16.5倍)とほぼ同水準に位置する。主要500社で構成するS&P500指数ベースの1株当たり利益は今年7-9月期に小幅マイナスに転じる公算が大きいが、その後は少しずつ上向いていく見通しだ。しかも、市中金利は低水準で推移しており、株式にとってプラスの環境と言える。FRBが9月18日のFOMC(連邦公開市場委員会)で1回、12月か来年1月のFOMCでもう1回、各0.25%の「秩序立った利下げ」を実施し、景気拡大や株価上昇が再加速する。これが今後のメインシナリオであり、大方の市場参加者にとってベストシナリオでもある。
過去の経験則では利下げ幅は小さいほうが好ましい
注意したいのは金利の引き下げ幅だ。FBRは7月31日に10年7カ月ぶりの利下げを決定し、短期金利の誘導目標を0.25%引き下げ、2.00-2.25%に設定した。1995年にFRBが好況下で金利引き下げを実施し、グリーンスパンFRB議長(当時)が「予防的利下げ」と説明した経緯がある。現任のパウエル議長も7月の利下げを景気減速の予防措置と位置付けており、これまでの発言を分析すると、「予防だから今後の利下げも小幅でいい」と考えていると推測される。