どこの組織にも属することなく、フリーランスとして「ひとり仕事」を実践する税理士の井ノ上陽一さんにインタビューを行う本特集。

2007年の独立以来、スタッフを1人雇っていたおよそ3年間を除いては1人で仕事をしてきた井ノ上さんは、どのように資産の管理をしているのだろうか。独立のきっかけ、収入アップの方法、対人関係、時間術などを語っていただいたインタビューの総括として、最後に資産管理術を教えてもらった。(取材、文・藤堂真衣)


井ノ上陽一
井ノ上陽一(いのうえよういち)さん
税理士、株式会社タイムコンサルティングのひとり社長。 1972年生まれ。総務省統計局に勤務し、数字の分析方法とITスキルを習得。その後税理士試験に合格し、2007年に独立。スタッフを雇わず、誰にも雇われない働き方を自身で検証しつつ、税理士業やセミナー業、執筆業など多彩な仕事に取り組む。運営ブログ「EX-IT」は月間30万PV。著書に『フリーランスのための一生仕事に困らない本』(ダイヤモンド社)などがある。

サイトやブログは優秀な営業ツール

「フリーランスの壁」の超え方#5
(画像=focal point/shutterstock.com,ZUU online)

──井ノ上さんはご自身でブログやサイトを運営して、そこから仕事につなげていますよね。

ブログはITや時短ツールなど、読者にとって有益な情報を提供する場として運営しています。サイトでは税理士業について紹介し、税務書類の作成業務はプランや料金を明示して、確度のより高い方からご相談を受けられるような仕組みにしています。

フリーランスにとって時間はとても貴重なものですから、「お仕事のご相談をしたいので、とりあえず一度お会いしましょう」というような誘いには安易に乗りません。

その代わり、サイトには詳細な内容を載せているので、そちらを見ていただければ私がどんな人間かは分かっていただけます。「それでもOK」という方だけが問い合わせてくださるので、優秀な営業担当としての機能を担ってくれています。

──なるほど。料金やスタンスを明示して、嫌な仕事を持ってきそうな依頼者からは「嫌われるように」作っているんですね。

そうです。嫌な仕事にはバリアを張ってくれて、いいお客さまを連れて来てくれる。サイトを持つのはフリーランスにとってとても大きなメリットをもたらしてくれると思いますよ。

フリーだけどサイトを持っていないという人もまだ多いですから、持っているだけでも差をつけられます。少し知識があれば、自分で細かく更新したり、内容を見直したりもできます。

例えば私の場合なら、税務を増やしたいなと思ったら「初回は無料で相談を受けます」と入れておけば問い合わせが増えますし、仕事量を減らしたければ、申し込みのハードルを上げてもいい。いろいろ試しながら、自分にとってベストな形を探すのも楽しいですよ。

──自由にカスタムできる広告兼営業。サイトを持っていると心なしか信頼度も上がる気がしますね。

ただ、そうした施策を考えるためにも、今一度「お金の流れ」は見ておいたほうがいいですよね。今は仕事を増やしたい時期なのか?単価を上げたい時期なのか?どれくらいの効率で仕事をしたいのか。常に意識しながら、仕事の取捨選択をするようにしています。

「お金×時間」の価値を常に考える

──お金を扱う専門家でない人にとっては、お金の流れを見るのも難しい面があります。どのようなことを意識しておけばよいですか?