誤解を恐れず、極端な言い方をすれば投資信託には2つの種類がある。すなわち「販売(残高稼ぎ)するために作られた投資信託」と「運用するために(パフォーマンスを上げるために)作られた投資信託」だ。

自身で購入を検討している投資信託、あるいは金融機関に薦められた投資信託がどちらのタイプなのかは非常に気になるところだ。気がつかずに前者の投資信託を買ってしまったとしたら、結果論では儲かるかも知れないが、その確率は明らかに後者のそれよりも低い。当然、購入するならパフォーマンスを上げて、良いカスタマー・エクスペリエンスを提供したいと思って作られた投資信託を選ぶに限る。もちろん、結果論では思ったように投資収益が上がらないこともあるが、前者の投資信託よりもその確率は遥かに低い。

今回はそうした「設計背景の裏側」の見極め方のヒントを例示したいと思う。それには投資信託の「5種の神器」が役に立つ。

「5種の神器」とは以下の5種類の書類だ。

(1)交付目論見書
(2)請求目論見書
(3)交付運用報告書
(4)運用報告書(全体)
(5)運用レポート

昨今は(2)と(4)はあまり使われていないというか「分厚くて難解だから」という建前からそれぞれ(2)には(1)、(4)には(3)が作られるようになった。だが、虎の子をはたいて投資信託を買おうと思ったのならば、後々の事も考えて、面倒くさがらずに是非(2)と(4)を使って欲しい。

「あれ? 販売用資料が入っていない」と思われたかもしれないが、投資家の立場から見ると本来「販売用資料」は不要だ。理由は簡単。名は体を表すでは無いが、販売用資料とは、営業マンが「販売」を円滑に進めるために敢えて運用会社がセールス用に作った資料だからだ。悪く言えば「投資家をその気にさせるために」に、5種の神器とは別に、敢えて作られた販促資料が冷静な投資判断に役立つわけがないからだ。

投資信託選びは『請求目論見書』を使うのがベスト

投資信託,種類
(画像=SFIOCRACHO / shutterstock, ZUU online)

投資信託選びの基本は、目論見書に始まり、目論見書に終わる。なにせその投資信託の憲法のようなものだから。『請求目論見書』にはその投資信託に関わる全てが記載してある。ならばどんな点に注目して読み込めば良いのか? 定性的に言えば『運用サイドが強くコミットした臭い』が感じられるかに注目したい。

通常、5種の神器のようなリーガル書類は専門の「ドキュメン(書類作成)部署」が関係部署と連携しながら作り上げていく。当然、運用サイドが運用面を語り、営業サイドが販売し易さなどを考えながら書類は作成されていく。

だからこそ『運用の事を本当に良くわかっている専門家が、投資家に向かって、どれだけ分かり易く運用方針などを説明しようしている』かどうか、そうした形跡があるかどうか、それらを確認する必要がある。逆に「どうせ素人には分からないから」と、形式的要件を充足して、セールス的に使い易そうな、義務感で作られたような目論見書の投資信託は話にならない。そこに色濃く設計背景が見えて来る。

どんなに難しいことでも、本当にそれを理解している人の説明は簡潔で分かり易いが、逆に中途半端な知識の人が説明すると、臨界点を超えた途端に何を言っているのか分からなくなる……それは投資の世界に限ったことではない。だから、どんなに複雑な投資信託でも隅々まで良くわかっている人なら、簡潔な言葉でその運用のポイントを説明することが出来る。良くわかっている運用の専門家とは、その投資信託が設定されたら直接運用を担う予定のファンドマネージャー自身の事だ。