消費増税を受け、キャッシュレス決済利用によるポイント還元制度がスタートした。さらに、さまざまな企業から「〇〇Pay」がリリースされ、国内にもキャッシュレス化の波が押し寄せている。本特集ではキャッシュレスの普及とニューペイメントの発展に取り組む「NCB Lab.」代表の佐藤元則さんに、キャッシュレスの現状や今後について教えてもらう。
今回は日本国内でのモバイルキャッシュレス決済の普及と、世界でのキャッシュレス決済の動きを比較してみたい。果たして日本は、世界の“スタンダード”に遅れてはいないのだろうか。(取材、文・藤堂真衣 全5回)
佐藤元則(さとうもとのり)さん
NCB Lab.代表。1952年生まれ。1989年にカード・決済専門コンサルティング会社の「株式会社アイエスアイ」を設立。日本初の自由返済型クレジットカードや国際ブランドつきデビットカードなどを開発。1997年に日本カードビジネス協会(現NCB Lab.)代表に就任。キャッシュレス社会の普及とニューペイメントの発展に取り組み、NCB Lab.として年間600回以上のセミナーを開催している。著書に『金融破壊者たちの野望』(東洋経済新報社)などがある。https://www.ncblibrary.com
日本人の“財布が好き”な国民性
──2018年の終わりごろには、PayPay株式会社による決済サービス「PayPay」が総額100億円ものキャッシュバックキャンペーンを行い、大きな話題になりました。国内でもモバイル決済は定着しつつあるのでしょうか。
大きなインパクトではありましたね。メディアによって大きく取り上げられたことで、これまでモバイル決済を使ってこなかった層にもリーチできたといえるでしょう。ユーザー数は着実に伸びているといえます。
──完全キャッシュレスの未来も遠くはなさそうですね。
そうなるとよいのですが、課題もありますね。日本人は財布が好きですから、現金を持ち歩くのをやめないでしょう。
お金持ちは財布を持たない、と言われることもありますが、やはりほとんどの人は財布を持っていますし、ある程度の現金も持ち歩いていますよね。ハイブランドの財布を持っていることが日本人にとってはステータスでもあるのです。
財布を持たない中国人、米国人
──確かに、立場や年齢に応じてきちんとした財布を買わなければという気持ちはあるかもしれません。