消費増税を受け、キャッシュレス決済利用によるポイント還元制度がスタートした。さらに、さまざまな企業から「〇〇Pay」がリリースされ、国内にもキャッシュレス化の波が押し寄せている。本特集ではキャッシュレスの普及とニューペイメントの発展に取り組む「NCB Lab.」代表の佐藤元則さんに、キャッシュレスの現状や今後について教えてもらう。

セキュリティ面に不安を残しながらも、世界は日本のキャッシュレス環境整備を待ってはくれない。2020年以降、日本のキャッシュレス化はどのように進んでいくのだろうか。(取材、文・藤堂真衣 全5回)

佐藤元則(さとうもとのり)さん
NCB Lab.代表。1952年生まれ。1989年にカード・決済専門コンサルティング会社の「株式会社アイエスアイ」を設立。日本初の自由返済型クレジットカードや国際ブランドつきデビットカードなどを開発。1997年に日本カードビジネス協会(現NCB Lab.)代表に就任。キャッシュレス社会の普及とニューペイメントの発展に取り組み、NCB Lab.として年間600回以上のセミナーを開催している。著書に『金融破壊者たちの野望』(東洋経済新報社)などがある。https://www.ncblibrary.com

日本のキャッシュレス化にロールモデルはあるか

キャッシュレス化の波を読む#5
(画像=KPG Payless2/shutterstock.com,ZUU online)

──日本はキャッシュレス化においては先進国のなかで「追いかける側」になっている気もします。これからのキャッシュレス化に向けて、ロールモデルにしている国などはあるのでしょうか?

キャッシュレス先進国としては韓国や北欧諸国やイギリス、それからオーストラリアやカナダなどが挙げられますが、スウェーデンやノルウェー、デンマークといった北欧諸国では既にキャッシュレス決済率が消費支出の80%以上を占めています。

米国でもキャッシュレス率は80%弱ですが、一方で日本はというと20%ほど。率直にいって、差がありすぎてモデルを立てることもできないのではないでしょうか。

──独自の路線を進むこともありえる?

なんとも言えませんが、政府としてもキャッシュレスを促進したいという思いはあるでしょう。

2017年に発表された「未来投資戦略2017」では2027年までにキャッシュレス決済比率を4割へ、さらに2018年に経済産業省が発表した「キャッシュレス・ビジョン」では将来的にキャッシュレス決済比率80%を目指すとしています。先進国に追いつこうという考えですね。

消費増税とインバウンドでキャッシュレス化に拍車をかける

──とはいえ「キャッシュレス化にしよう!」と呼びかけても、国民が動く可能性はあまりないように感じます。何か施策はあるのでしょうか。