世界景気の先行き不安が再び高まる中で、日本株の勢いにもブレーキがかかった。米9月ADP雇用統計の不調を受けたNYダウ急落の余波で、3日の日経平均株価は前日比で500円超値下がり。25日移動平均線を1カ月ぶりに割り込んだ。ただ、こうした状況でもゲーム株のコロプラ(3668)が堅調に推移するなど、テーマ性のある銘柄にマネーが向かいやすい地合いは健在だ。バイオテクノロジーも、今後の資金の受け皿として有力。来週は大きなビジネスイベントが日本で開催されるほか、ノーベル賞の発表も控えるだけに関連株から目が離せない。

ノーベル賞,バイオセクター
(画像=PIXTA)

バイオ株をめぐっては直近、アンジェス(4563・M)が遺伝子治療薬「コラテジェン」の公定価格の低さを嫌気し急落したり、大塚ホールディングス(4578)が期待の新薬の臨床試験が不調に終わって売り込まれたりと、波乱含みの展開も少なくない。しかし、セクターに対する市場の期待は根強く、〝突発事故〟はあくまで割り切るスタンスだ。

7~11日はまず、7日にノーベル賞の生理学・医学賞が発表される。さらには9日発表の化学賞とも絡み、有力分野の免疫や遺伝子に関する連想買いがバイオセクターに広がる可能性がある。

ノーベル賞の事前予測として知られる2019年の「クラリベイト・アナリティクス引用栄誉賞」は、がん細胞の発生に関係する「Wntシグナル経路」を解明したオランダ・ユトレヒト大学のハンス・クレバース教授らが受賞した。カルナバイオサイエンス(4572・JQ)は、このWntシグナルの阻害剤を国立がん研究センターと共同で開発した。

遺伝子分野ではタカラバイオ(=タカラBIO、4974)が浮上する。DNA配列を読み解くことに貢献した研究者が化学分野の引用栄誉賞に選ばれており、同社はこの領域の試薬や理化学機器に強い。また、クラリベイト・アナリティクスがノーベル賞級の日本人に挙げる京都大学の森和俊教授は、細胞内のたんぱく質を管理する「小胞体ストレス応答」を解明。アステラス製薬(4503)は、この仕組みを調節する創薬の研究を米バイオベンチャーと進めている。

一方、9~11日には、アジア最大のバイオビジネスイベントである「バイオジャパン」が横浜市で開催される。再生医療などの展示会も併設され、国内外から注目を集める。バイオジャパンでは、初日に行われる講演でアンジェスの山田英社長が登壇する。また、厚生労働省主催の「ジャパン・ヘルスケアベンチャー・サミット」では、再生医療のヘリオス(4593・M)の鍵本忠尚CEO(最高経営責任者)や、サンバイオ(4592・M)の森敬太社長が講演を予定している。

タカラBIOは、バイオジャパンの複数の演題とも関連性が深い。その一つが遺伝子操作で加工した患者自身の免疫細胞により、がん細胞をピンポイントで攻撃する「CAR―T(カーティー)細胞療法」。同社は関連技術の特許を保有し、共同で研究する三重大学の珠玖洋特定教授の講演も行われる。

タカラBIOは最近、がんを攻撃する腫瘍(しゅよう)溶解性ウイルスを使った新薬の承認申請を取り下げたことで株価が下落した。仕切り直しの手掛かりが待たれる状況だ。カーティーではほかに、ブライトパス・バイオ(4594・M)もマークしたい。

細胞医薬品の分野でJCRファーマ(4552)の研究員らがパネルディスカッションに参加する。新日本科学(2395)が出資する米ウェーブ・ライフ・サイエンシズ社の関係者も、核酸医薬の講演でスピーカーを務める。(10月4日株式新聞掲載記事)

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