(本記事は、田辺由香里氏の著書『瞬間記憶術〜たった3日で驚くほど頭が良くなる本〜』ぱる出版、2019年9月24日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
記憶上手になるには、「やり方×量」
何か新しいことを習得するときに、やってみよう!と決めてスタートして、翌朝起きたら何の努力もなくできていたという世界にもしも生きていたとしたら、どのように感じますか? 夢のようでしょうか? つまらないでしょうか?
一見、思ったことが何の苦労もなく実現する世界は面白そうに見えて、実はつまらないのではないかと私は思います。
現実世界には時間が作用していますので、思ったことが現実になるまでタイムラグがあります。
車に乗って現在地から目的地に達するまでは、ナビに目的地を入れ、そこに行くために車を運転する必要があります。遠い場所であればあるほど、ある一定の時間が必要です。
スタートするときに目的地がどちらかわからないままに、なんとなく運転し始めてしまったとしたら、いつまでたっても目的地にたどり着くことができません。
散歩の途中で富士山登頂に成功した人はいないと言われるように、目指す場所が高いほど、戦略と戦術が必要となってきます。
戦略というのは地図とコンパスです。地図も全体が見渡せる地図と自分がいる近辺だけが見える地図とではどちらがわかりやすいでしょうか?
最初に見るべきは大きな地図です。全体像です。
全体の中で自分が行きたい目的地を定めたら、現在地を確認して、そこへ行くルートを決めます。すると、次に必要となってくるのは戦術です。
これは車で行くのか、飛行機で行くのか、歩いて行くのか、自転車で行くのか、ロケットで行くのか。荷物は何が必要なのか。1人で行くのか仲間と行くのかというようなことです。
例えば隣町のカフェが目的地なら適当に荷物も持たずに歩き始めても、たまたま到着することはあるかもしれません。
しかし、目的地が富士山頂だった場合、サンダルで出かけて行ったら大変なことになってしまいます。
また、どうしてもここに行きたい! という場所があるとするならば、自分の目指す目的地が遠ければ遠いほど綿密な計画が必要となってきます。
目的地にふさわしい戦略と戦術を持っているかどうか?
闇雲に突き進むより、先にそれらを手に入れたほうが賢明です。
そして、戦略と戦術が決まったら、あとはトライ&エラーを繰り返しながら前進あるのみです。
試験合格を目指す場合、記憶のテクニックは戦術に当たります。
例えば、英単語を500単語記憶しようとしたときに、記憶のテクニックを使うと2日で入れることができます。戦術なしに、闇雲に記憶しても忘却曲線との戦いで、どんどん忘れてしまいますので、それに比べると圧倒的に効率的です。
ただし、テクニックを使っても憶える必要のある量が膨大であれば、そこに投入する一定の時間確保は必要です。
また、記憶のテクニックもやり方を知っているだけでは使いこなすというレベルまではいきません。ある程度の練習をして、コツを掴むことが重要です。
やり方を知っているというのと、使いこなせるというは全く違うのです。
これは、釣りの仕方を教えてもらっても実際魚を釣ってみなければ、微妙なニュアンスがわからないのと同じことです。
頭で理解したことを、体感覚で使えるようにしてしまうことです。
それには量をこなすことが必要です。
正しいやり方×量で一気に自分の脳に記憶のテクニックをインストールしてしまいましょう。
正しいやり方で量をこなすと脳が慣れるので、どんどん上達の曲線が上向きになります。自分でも加速してきたと実感できるレベルまでくると、やっていることそのものがとても楽しくなります。
その感覚を掴むと、脳にとっては「試験勉強=快」の回路が脳内でつながりますから、「勉強にはまる」という状態になります。
こうなると外から見て、努力しているように見えても、本人はそれが楽しくて仕方ないのでやっているだけなのです。結果は、自ずからついてきます。
慣れないことをやり始めてしばらくは脳が慣れていないので何をしてもぎこちないものです。そこを少し辛抱して繰り返し続けていると、脳の中に情報が蓄積されていき、あるとき急にできるようになります。
全く成果が見られない日々が続くのは辛いものですが、変化が見られないときにも脳の中では情報を蓄えているのです。
脳はプログラミングすることが大好きで、どんなことでも繰り返しやっているとやがて意識せずともできるようになります。
例えば、キーボードのブラインドタッチ入力ができるようになりたいと思ったとします。はじめてキーボードに向き合ったときは、両手の人差し指をFとJの場所にセットします。
左手の小指から人差し指までをASDFの上にセットします。
右手の小指から人差し指までを;LKJの上にセットします。
親指をスペースキーの上に乗せて、それぞれの指がどのキーを担当するかを理解するところからスタートです。
最初はゆっくりですが、何度も練習しているうちに、回路がつながって、キーの場所を探さなくても指が勝手にキーを叩くようになります。