(本記事は、米山公啓氏の著書『できる人の、脳の「引き出し」「スイッチ」「ブレーキ」』ぱる出版、2017年6月8日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

目標設定
(画像=patpitchaya/Shutterstock.com)

上手な目標設定

この上手な目標設定とは、とても重要な話になる。

ここでは目標を達成するための目標設定について説明する。これはやる気スイッチにも直結しており、絶妙な塩梅の目標設定ができたのならば、確実に自分の夢へと近づくことができるだろう。

紙に書く目標設定は好きなようにすればいいと伝えたが、あくまでもそれは最初の一歩であり、そのままで良いというわけではない。

そもそもやる気というものは、最初から目標設定が高いとなくなってしまうものだ。

ボールを蹴ったこともないのに一流のサッカー選手になってワールドカップで優勝する、勉強はクラスで最下位だけどハーバード大学に入る。定年を過ぎたけど総理大臣になる。

これらは、本人のやる気と行動が続くことと運が味方してくれることで、かなえられるかもしれない。しかし、普通に考えれば無理だと思うだろう。

では、もう少し現実的に考えてみよう。

一流企業に勤めながらも、今はごくごく普通の平社員。しかし、目標はその会社の社長になること。立派な目標であり、これならば先ほどのものよりも現実的だろうが、これでは本人のやる気が続くとは考えにくい。最終目標として社長になることを掲げるのは良いのだが、今現在の立場からするとハードルが高いだろう。

起業などをするのであれば、また話は別だが、平社員から社長に飛び級のように就任することは、まずない。

社長を目指すのであれば、まずは課長になること。それから部長となり、部長の中でも取りまとめ役になり…などと、あくまでも今現在の立場から実現可能の範囲での目標設定をするべきだ。なるべく目の前の階段の段差を緩くして、確実に登れるものとすること。これがポイントとなる。

昇進について考えた場合は、一つ上の階級を目指していくのがわかりやすいのだが、それ以外ではどうするべきだろうか。

段差が大きくも小さくもなく、実現可能度が5割程度、頑張れば達成できるだろう目標が良いのである。逆に簡単にクリアできるような目標になってしまうとやる気は出てこないので効果は薄れてしまう。

このように、夢ともいえる目標設定と共に、そこへ向かっていくための小さな、今現在から頑張れば達成できるような目標を、クリアしたと同時にどんどん更新していく。すると、常にやる気を出すことができ、さらに夢へと着実に進めるようになるのだ。できる人というのは、この目標設定が絶妙であり、だからこそ常にやる気があって、やるべきことを理解して進んでいるのである。

では、逆に失敗してしまうケースについても考えてみよう。できる人の場合だけでなく、できない人の場合も知ることは、過去の経験を思い起こし、より身に染みることだろう。

三日坊主という言葉があるが、なぜ、このようになってしまうのだろうか。やる気があって、目標も定めて、道具も買い、取り組む。それが初日は苦しみも楽しむことができて、2日目もそれなりに我慢してやれる。しかし、3日目になると、その目標に向かうことが億劫になりやめてしまう。やる気がまったくない状態になってしまう。

原因はいくつかあるのだが、目標設定が間違っている場合が多い。毎日やらなければならない、極端な制限をかけてしまうなどは負荷が大きすぎる。

苦しみとは、嫌なことである場合がほとんどだ。基本、人は嫌なことはやりたくもないし、楽しくなければやらない。それをやらなければ命を落としてしまうなどという緊張感や強制力があるのならば、苦しくても取り組むが、そうでないのならば苦しみを続けることは難しい。さらに、それを達成したときの喜びを体験していなければなおさらだ。

ダイエットをするにあたって間食をしないと決めたのであれば、最初の1ヵ月は間食を半分にする。運動をするにあたって毎日1時間ジョギングすると決めたのであれば、週に2回にすることやウォーキングにする。

このようにやる気がなくなったとしても達成できると思う程度まで落としてしまえばいい。とくに習慣にするような長期的な物事についてはそれくらいでちょうどいい。継続は力なりだ。

そして何よりも、目標に向かっていくことの中に、楽しみを見出すこと、好きになることだ。

人間の脳というのは、自分の好きなことをやっているときに一番能力を発揮すると研究データで出ているのだから、それを使わないわけにはいかない。

花が好きならば、ジョギングコースは花がたくさん咲いている道にするとか、食べ物が好きならば、間食しないで浮いたお金で晩御飯は少しリッチにするなど。

できる人は目標設定が上手でありながらも、苦しみは極力少なくなるように工夫している。

やる気を失ってしまったときは、まずは目標設定が的確かどうかを考え、そこに自分の好きなことを付け加えながら、再設定してチャレンジしていくのが、楽しんで前へ進める手段だ。

できる人の、脳の「引き出し」「スイッチ」「ブレーキ」
米山公啓(よねやま・きみひろ)
1952年山梨県生まれ。作家、医学博士。専門は神経内科。聖マリアンナ大学第2内科助教授を98年2月に退職。診療を続けながら医療エッセイ、医療実用書、医学ミステリーなど幅広く著作活動や講演を行っている。現在までに280冊以上を上梓。主な著書に、『もの忘れを90%防ぐ法』(三笠書房)、『脳が若返る30の方法』(中経出版)、『Dr.米山公啓の頭が良くなる生活習慣』(アントレックス)『できる人の脳が冴える30の習慣』(中経出版)など多数ある。

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