(本記事は、米山公啓氏の著書『できる人の、脳の「引き出し」「スイッチ」「ブレーキ」』ぱる出版、2017年6月8日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

会話術
(画像=voyata/Shutterstock.com)

価値観=オタク

価値観について考えたことはあるだろうか。結婚や服や興味など、様々な場面で価値観を基準として判断することもあるだろうが、総合して言えるのは「面白い」というのに集約される。

ある物事が面白いと感じるのであれば、その人にとっては価値のあることであり、逆に面白くないと感じるのならば価値がないと判断できる。

たとえば、タレントのタモリは面白いと思う人は多いのではないか?人があまり面白いと思わないことに対して、一人で面白がってどんどん追究していく。

その物事自体に興味があるかどうかと言われたら人それぞれだが、人が面白いと感じるものに対して人は興味を惹かれてしまう。だからこそ、テレビでタモリが好き勝手に気になるものを追及していくのを見せるだけで番組も成り立ってしまう。

もちろん、そこには本当に面白いと見せていくための技術というか、本当に楽しんでいる姿があるのが前提でもある。

私の知り合いに、ステレオをとことん追求した人がいた。とても綺麗な音を目指して調べていくうちに、ノイズが入っていない電源が欲しくなったようなのだが、どうやら普通の電線ではノイズが入ってしまうらしい

。そこで、自分の家の敷地内に電柱を建ててしまった。もちろん、電柱を建てるためにいろいろしなくてはならないこともあるけれど、電柱自体はそんな高価なものでなかったようだ。

しかし、オタクであるからそれだけでは終わらない。ただ電柱を建てれば良いというわけではなく、電柱に使うボルトもチタンのようなものにしなければならず、オリジナルのマイ電柱が仕上がったというわけだ。

ステレオというものから始まったものが、ただスピーカーという物が良ければ音が良くなるというわけでもなくて、それが電源やら電柱やらボルトやらにまで派生していく。突き詰めていくと、どこまで行ってしまうのか気になってしまうものでもあり、その過程をよくわからないことも含めて説明してくれるのは、ただ面白いというほかない。

ほかにも、患者さんと雑談をしばしばしていることもあって、まったく興味のない話をされることも多々ある。それでも、つい面白いと感じてしまった例をあげるのであれば、鉄道オタク、いわゆるてっちゃんの患者さんの話だ。

この患者さんは、診察するときに必ず新しい鉄道の話をしてくれる。ナントカ駅に今日はカントカという列車が走る、といったような。他にも有名な話かもしれないのだが、あずさには一車両だけ防弾ガラスになっているようで、それは天皇がお乗りになられるためだという。

なぜ、そんなことを知っているのかと、つい聞きたくなってしまう。それも次から次へと新しいネタを持ってくるとは、本当に意味がわからない。鉄道なんていうのは、新しい路線ができたとか、何年も走っていた列車がなくなるとか、ニュースで流れている程度のことしか知らない私からしてみたら、謎の世界である。

しかし、それでいいのだ。徹底していけば、そのような世界に入ってしまう。むしろ、それくらいの世界に飛び込むことができれば、それは自分が周囲から面白いと言われる価値を身につけたといえるのだろう。

できる人の、脳の「引き出し」「スイッチ」「ブレーキ」
米山公啓(よねやま・きみひろ)
1952年山梨県生まれ。作家、医学博士。専門は神経内科。聖マリアンナ大学第2内科助教授を98年2月に退職。診療を続けながら医療エッセイ、医療実用書、医学ミステリーなど幅広く著作活動や講演を行っている。現在までに280冊以上を上梓。主な著書に、『もの忘れを90%防ぐ法』(三笠書房)、『脳が若返る30の方法』(中経出版)、『Dr.米山公啓の頭が良くなる生活習慣』(アントレックス)『できる人の脳が冴える30の習慣』(中経出版)など多数ある。

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