ソフトバンクといえば、携帯電話会社というイメージが強いかもしれない。ソフトバンクは子会社であり、親会社であるソフトバンクグループ(ソフトバンクG)は現在投資事業を営んでいる。同社の投資事業は堅調に推移しているものの、株価は5,000円に到達した後、停滞している。今後上下どちらに抜けるのか、注目されている状態だ。

ソフトバンクGの最近の株価動向

ソフトバンクグループ,株価
(画像=chrisdorney / Shutterstock.com)

ソフトバンクグループ<9984>株は、ITバブル時に1,000円以下の株価が1年も経たずに1万1,000円を突破した、ITバブルを象徴する銘柄だ。ただし2002年11月には137円にまで下落し、ITバブル崩壊も経験している。しかしその後は徐々に上昇し、2017年には5,000円を回復した。

ITバブル崩壊後、2002年8月には137円にまで下落したソフトバンクG株だが、その後株価は右肩上がりだ。2006年の新興市場バブル、2013年のアベノミクス相場、2016年にはソフトバンクGが投資会社となり、その後の上昇相場を経て2017年には5,000円を回復した。

ソフトバンクグループ,株価
(画像=ソフトバンクG(月足チャート))

その後は、一進一退の攻防が続いている。2016年からの上昇相場に乗って5,000円を回復したソフトバンクG株だが、5,000円台が定着せず方向性が定まらない状況だ。

チャートパターンとしては拡大波動を描く停滞相場に

チャートパターンの一つに、トレンド発生後にペナント(三角)を描き値動きが停滞するペナントパターンがある。ペナントは頂点に近づくにつれてペナントブレイクが発生しやすくなり、そのブレイクによって再びトレンドが発生する。

株式や為替市場では、トレンドが発生した後に停滞相場が到来し、値動きが膠着するケースが多い。ペナントは停滞相場の典型的なチャートパターンだが、高値の切り上げと安値の切り下げが進行し、拡大波動を描くこともある。

ソフトバンクグループ,株価
(画像=ソフトバンクG(週足チャート))

5,000円を基点に上値の切り上げと下値の切り下げが進むソフトバンクG株は、まさに拡大波動を見せており、チャートパターンとしては典型的な停滞相場と言えるだろう。

過去にソフトバンクグループの株価が大きく変動した要因

直近10年で、ソフトバンクG株は2度の大きな株価上昇を経験している。

1 2012年末からのアベノミクス相場
2 投資事業へ業態転換した2016年以降

それぞれについて解説しよう。

ソフトバンクグループ,株価

①2012年末からのアベノミクス相場

2012年12月の解散総選挙で民主党が下野し、自民党が政権に復帰して第二次安倍内閣が発足した。安倍政権の経済活性化政策はアベノミクスと呼ばれ、株式市場はこれを好感し、アベノミクス相場が到来した。

2012年末より国内株式市場全体が上昇する中、ソフトバンクG株は2013年1月の1,500円台から2014年1月には4,650円まで上昇した。多くの国内銘柄に恩恵をもたらしたアベノミクス相場だったが、ソフトバンクG株の株価は約3倍にもなったのだ。

②2016年に投資事業へ業態転換

ソフトバンクGの孫社長は、ヤフーやアリババグループへの投資を成功させるなど、事業家のみならず投資家としても有能な経営者だ。孫社長は2006年にボーダフォンから国内携帯電話事業を1.7兆円で買収し携帯電話事業に注力していたが、AIやシェアリングエコノミー市場の急成長を受け、10兆円ファンドを立ち上げて投資事業に注力すると宣言した。

そして2016年11月に10兆円ファンド(ソフトバンク・ビジョン・ファンド)を設立、2018年12月に携帯電話事業子会社であるソフトバンク<9434>の株式を上場(IPO)した。

ソフトバンクG株はアベノミクス相場により1,500円台から4,600円台まで一気に駆け上がったが、その後2,000円台まで下落した。2016年は概ね2,000~3,000円で取引されていたが、10兆円ファンドの設立発表とその設立を経て株価は徐々に上昇した。

株価としては2013年12月の高値4,660円が注目されていたが、2017年6月には完全にこれを上に抜け、10月には5,000円に到達した。

孫社長の経営が携帯電話事業から投資事業へシフトすると同時に、株価も上昇したかたちだ。ソフトバンク・ビジョン・ファンドの運営は順調であり、現在2号ファンドの設立が準備されている。

ソフトバンクグループの株価動向を予測するポイント

アベノミクス相場と投資事業へ転換を経て株価が上昇してきたソフトバンクG株だが、現在の株価は節目価格の5,000円を中心に方向感のない状況だ。前述のように、ソフトバンクGのチャートは拡大波動を描いており、停滞相場に位置している。

よって、ソフトバンクG株は次のトレンドの発生を待っている状態だ。ちなみに、拡大波動のチャートパターンの後にトレンドが発生する場合は、以下のようなチャートパターンを描くことが多い。

ソフトバンクグループ,株価
(画像=ソフトバンク株価(週足チャート))

上昇と下落のいずれの場合も、拡大波動に沿ったトレンドラインを株価が抜け切るかどうかがポイントになる。トレンドラインを上に抜ければ、ITバブル期の株価を目指す展開になるだろう。

一方トレンドラインを下に抜ければ、業態転換期の株価上昇が帳消しになる。ちなみに、2018年12月末に下のトレンドラインにタッチした後、2019年2月に過去最大の6,000億円を上限とする自社株買いが発表され、それを機に株価は急騰した。

2019年9月時点の株価は4,000円台半ばで、上下のトレンドラインから等距離に位置している。今後ソフトバンクGの株価が、上下のトレンドラインに対してどのような値動きを見せるかが注目される。

投資事業を主事業としたことで収益の振れ幅は拡大せざるを得ない

ソフトバンクGは現在、投資事業を主としている。携帯電話事業は、事業子会社であり株式公開済のソフトバンクが行っている。

米国株式市場の上昇もあって同社の投資事業は堅調に推移しており、ビジョンファンドの2号ファンドも設立準備中だ。

しかし、投資事業は利益の振れ幅が大きい事業だ。ビジョンファンドが投資した米国のシェアオフィス「WeWork」を運営するWe CompanyのIPの準備においては、IPOによって株価はファンドが取得した時の1/2以下となる可能性が報じられている。

孫社長の投資に対する目利き力を金融市場は評価しているが、孫社長といえども百発百中ではない。よって今後の決算では、投資が失敗した案件によって大きな損失を計上する可能性もある。

投資事業への転換によって利益の振れ幅が大きくなった同社の決算を、株価がどのように折り込んでいくかについても、今後のソフトバンクG株を予想するうえでのポイントとなる。

ソフトバンクG株を買うには

ソフトバンクG株の9月19日の終値は、4,616円だった。100株単位で取引される銘柄なので、最低投資金額は46万1,600円だ。

ソフトバンクG株の購入にあたって、比較的手数料を抑えられる証券会社は以下のとおりだ。

※いずれも税込価格、50万円までの場合

手数料
SBI証券
275円
楽天証券
275円
ライブスター証券
198円
カブドットコム証券
275円
GMOクリック証券
265円
DMM.com証券
198円
岡三オンライン証券
385円

DMM.com証券またはライブスター証券を利用すれば、手数料は最安で198円だ。以下、GMOクリック証券の265円、SBI証券・楽天証券・カブドットコム証券275円、岡三オンライン証券385円と続く。

なお、SBIネオモバイル証券やLINE証券を利用することで、1株単位(4,616円)で購入することもできる。

まとめ

ITバブル期のソフトバンク株(現在のソフトバンクG株)の上昇は凄まじく、当時を知る人であれば、ソフトバンクG株にその再来を期待したくなるかもしれない。ITバブル期ほどではないが、アベノミクス相場以前に1,500円前後だったソフトバンクG株は、現在は当時の約3倍の株価水準だ。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドの設立を機に、投資事業に舵を切った孫社長率いるソフトバンクGは、これまで投資事業で満足のいく実績を出してきた。しかし米中貿易摩擦を契機に世界の景気動向にも停滞感が生じており、米国の株式市場も頭打ちとなりつつある。その中で、ソフトバンクG株も停滞に甘んじている状況だ。

今後は、現在拡大波動を描いている停滞相場を上下どちらに抜けるのか、そのタイミングと方向が注目される。