雇用保険の適用事業所に該当した場合には、事業主は届出や様々な手続きなどを行う必要がある。では、雇用保険の加入要件や各種手続きの方法はどのようになっているのだろうか。今回は雇用保険の概要や目的、給付金の種類、どのような場合に事業主が雇用保険に関する手続きを行う必要があるのかに加え、未加入の場合に発生するリスクなどを解説していく。

雇用保険とは

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(写真=Bignai/Shutterstock.com)

雇用保険の適用事業や加入手続きについて話をする前に、まず雇用保険の概要を確認しておこう。

雇用保険の概要・目的

雇用保険をごく簡単に言ってしまえば、会社が従業員に対してかける保険のことで、労働保険の一種だ。労働保険には「労災保険」と「雇用保険」があり、原則として事業者は従業員を雇用する場合に加入手続きを行う必要がある。労災保険の目的は業務中や通勤途中のケガ、病気などの補償に対応すること、雇用保険の目的は失業時や休業時の手当給付に対応することだ。

雇用保険の手当の種類

雇用保険がその目的とする手当給付には、以下のような種類がある。

雇用保険の給付内容(主要なものを抜粋)

  • 基本手当
    失業した人に対し、求職活動中に支払われる給付金。給付期間は、離職事由(自己都合か会社都合か等)によって異なるが90〜360日。

  • 傷病手当
    雇用保険の受給資格者で、病気やけがにより求職活動および就職できない場合に支払われる手当。傷病手当の支給額は基本手当と同額で、最大4年間まで延長することができる。

  • 特例一時金
    季節労働者などの、短期雇用特例被保険者が失業した際に支払われる手当。原則として基本手当の日額×30日分が給付される。

  • 技能習得手当
    一定の条件を満たした受給資格者が、公共職業訓練などを受ける際に給付される手当。受講手当と通所手当が、基本手当とは別に給付される。

  • 就職促進給付
    基本手当の受給資格者が、早期に就職するなど一定の要件を満たした場合に給付される手当。就職促進給付には以下のような種類がある。
     再就職手当
     就業促進定着手当
     就業手当
     常用就職支度手当

2017年から適用範囲が拡大

雇用保険は2017年に適用範囲が改正され、65歳以上(以前は65歳未満)も雇用保険の対象となった。

  • 高年齢求職者給付金
    65歳以上の労働者も雇用保険の対象となることが定められたので、設けられた給付金制度。離職時に受給資格を満たしていれば、65歳未満の求職者と同じように手当を受給できる。

  • 教育訓練給付金
    離職者および在職者が、能力向上やキャリア形成のために資格取得をする場合に給付される手当。こちらも高年齢被保険者や、高年齢継続被保険者として離職した場合には適用されることになった。

  • 育児休業給付金* 介護休業給付金
    育児休業や介護休業給付金についても、要件を満たす高年齢被保険者であれば給付の対象となる。

雇用保険と社会保険の違い

雇用保険と社会保険が混同されていることがよく見られるので、ここで違いを整理しておこう。

社会保険とは、狭義の社会保険と労働保険(雇用保険はここに含まれる)の総称だ。狭義の社会保険には「健康保険」、「厚生年金保険」、「介護保険」、「国民年金」などがあり、労働保険には「雇用保険」と「労働者災害補償保険(労災保険)」がある。これらを総称し、広義の意味で社会保険と呼ぶことが多いので混同しやすくなっているのだ。厳密な意味では社会保険と雇用保険は違うものなので、間違えないようにしよう。

雇用保険の「適用事業所」の定義や加入要件

次に、雇用保険の適用事業について確認をしておく。雇用保険では、「労働者を雇用する事業」はその業種や規模などを問わず、原則としてすべて「適用事業」となり、その事業主は労働保険料(雇用保険・労災保険)の納付や各種の届出を行う必要がある。また、雇用保険の適用事業に雇用される労働者は原則として雇用保険の被保険者となる。

ただし、雇用保険の適用事業とならない場合や、労働者の雇用形態などによって雇用保険の被保険者とならない場合などの例外もある。次に、この例外についてお伝えする。

雇用保険の「適用事業」となる場合、ならない場合

適用事業とならない場合の例外はごく一部に限られている。個人経営の農林水産業で、雇用している労働者が常時5人未満の場合には適用が任意となるが、雇用されている労働者の1/2以上が雇用保険への加入を希望する場合には、加入を希望していない労働者を含めた加入要件を満たす労働者全員分の加入の申請が必要となる。

雇用保険の「被保険者」となる場合、ならない場合

一方で雇用保険の被保険者に該当するかどうかは、雇用形態や労働時間によって異なる。まずは、雇用保険の被保険者の種類を確認していく。

【雇用保険の被保険者】
 1.一般被保険者:下記の3つの被保険者以外の被保険者
 2.高年齢被保険者:65歳以上の被保険者で、下記2つの被保険者以外の被保険者
 3.短期雇用特例被保険者:季節的に雇用される場合で、次のいずれにも該当しない人
   ・4か月以内の期間を定めて雇用される
   ・1週間の所定労働時間が30時間未満
 4.日雇労働被保険者:日々雇用される人、または30日以内の期間を定めて雇用される人

以上が雇用保険の被保険者の種類となるが、特に一般被保険者に該当するかしないかは、労働時間や職業などによって変わってくる。次に、雇用保険の被保険者とならない(適用除外)、主な要件をお伝えする。

【雇用保険の適用除外の主な要件】
 1.1週間の所定労働時間が20時間未満
 2.同一の事業主に継続して31日以上雇用されることが見込まれない
 3.季節的に雇用される場合で、次のいずれかに該当する場合
   ・4か月以内の期間を定めて雇用される
   ・1週間の所定労働時間が30時間未満
 4.学校教育法で規定される学校・専修学校・各種学校の学生または生徒(昼間学生)

上記4つのいずれかに該当する場合には、雇用保険の被保険者とならず、事業主も加入手続きを行う必要は無い。つまり、1週間の所定労働時間が20時間以上あり、同一の事業主に継続して31日以上雇用されることが見込まれる場合には、雇用保険の被保険者になるということである。次に職業・地位などによって被保険者になるかどうかを、具体例を挙げていくつかお伝えする。

【被保険者になるかどうかの具体例】
1.パートタイマー・アルバイト・派遣労働者
正規労働者(正社員など)と同じく、「1週間の所定労働時間が20時間以上」あり、「同一の事業主に継続して31日以上雇用される見込み」がある場合には被保険者となる。このいずれかに該当しない場合には被保険者とならない。

2.学生・生徒
昼間学生は被保険者とならない。ただし次の場合には被保険者となる。
 ・卒業見込み証明書を有する者で、卒業前から就職し卒業後も同一事業所に勤務予定
 ・休学中
 ・事業主の命または承認により、雇用関係を継続したまま大学院などに在学中  ・ 一定の出席日数を課程修了の要件としない学校に在学する場合で、当該事業所において他の労働者と同様に勤務し得ると認められる
また、通信教育を受けている、大学の夜間学部や高等学校の夜間・定時制に通っている場合には、「1週間の所定労働時間が20時間以上」あり、「同一の事業主に継続して31日以上雇用される見込み」がある場合には被保険者となる。

3.法人などの役員
法人の役員(会長・代表取締役社長・取締役・監査役・執行役員など)や、合名会社などの社員・監査役、協同組合などの社団または財団の役員などは、原則として被保険者とならない。ただし、役員などと同時に、部長・支店長などの従業員としての身分も有している場合(兼務役員)で、労働者的性格が強く雇用関係が明確な場合には被保険者となる。

4.複数の適用事業所に雇用されている場合
出向などの場合には、主たる賃金を受け取っている事業所の被保険者となり、従たる賃金を受け取っている事業所の被保険者とはならない。

5.試用期間中
雇用関係が存在し、適用要件を満たした就労であれば被保険者となる。

6.長期欠勤者
たとえ賃金の支払いを受けていない場合でも、雇用関係が継続していれば被保険者となる。

7.家事使用人
原則として被保険者とならない。

8.在日外国人
日本国に在住し合法的に就労する外国人は、国籍(無国籍を含む)を問わず被保険者となる。外国人技能実習生として技能などを習得する場合にも、事業主と雇用関係にある場合には被保険者となる。ただし、外国公務員および外国の失業補償制度の適用を受けている場合には被保険者とならない。

9.事業主と同居している親族
原則として被保険者とならない。こちらは個人事業主の他、実質的に個人事業と同様と認められる法人の代表者と同居している場合も含む。なお、事業主本人も被保険者とならない。ただし、次の3つのいずれにも該当する場合には、被保険者となる場合がある。
 ・事業主の指揮命令に従って業務を行っていることが明確である
 ・就業の実態が他の労働者と同様であり、賃金もこれに応じて支払われている
 ・事業主と利益を一にする地位(取締役など)に無い

10.在宅勤務者
事業所勤務の労働者と同一の就業規則などが適用され、次の5つのいずれにも該当する場合には被保険者となる。
 ・指揮監督系統が明確
 ・拘束時間などが明確
 ・始業、終業時刻などの勤務時間管理が可能
 ・報酬が勤務した時間または時間を基礎としている
 ・請負、委任的でない

このように、労働時間や地位・属性などによって被保険者となるかどうかが決まることになる。

初めて適用事業所になった場合の手続きは?

では、先にお伝えした雇用保険の被保険者となる人を雇用し、初めて適用事業所になった場合、どのような手続きが必要になるのか、その流れをお伝えする。なお、適用事業所になった場合には雇用保険の他、労災保険にも加入することになる。この2つを合わせて「労働保険」と呼ぶ。労災保険の保険料は事業主のみ負担し、労働者である被保険者の保険料負担は無い。

一元適用事業(農林水産業・建設業など以外)の場合

 1.保険関係成立届
   提出期限:保険関係が成立した日の翌日から10日以内
   提出先:所轄の労働基準監督署
 2.概算保険料申告書
   提出期限:保険関係が成立した日の翌日から50日以内
   提出先:所轄の労働基準監督署または所轄の労働局または日本銀行
  (銀行・郵便局などでも可)

1と2は同時に、または1の後に2の手続きを行う。その後、下記の3と4の手続きを行う。

 3.雇用保険適用事業所設置届
   提出期限:設置の日の翌日から10日以内
   提出先:所轄のハローワーク
 4.雇用保険被保険者資格取得届
   提出期限:被保険者ごとに資格取得の事実があった日の翌月10日まで
   提出先:所轄のハローワーク

4の手続き時には、賃金台帳、労働者名簿、タイムカード、他の社会保険の資格取得関係書類、雇用契約書等雇用期間を確認できる資料を合わせて提出する。

二元適用事業(農林水産業・建設業など)の場合

こちらの事業に該当する場合には、事業の実態から労災保険と雇用保険の適用を区別する必要があるため、それぞれの保険料についての申告・納付などを別々に行うことになる。

【労災保険に関する手続き】
 1.保険関係成立届
   提出期限:保険関係が成立した日の翌日から10日以内
   提出先:所轄の労働基準監督署
 2.概算保険料申告書
   提出期限:保険関係が成立した日の翌日から50日以内
   提出先:所轄の労働基準監督署または所轄の労働局または日本銀行
  (銀行・郵便局などでも可)

1と2は同時に、または1の後に2の手続きを行うのは、一元適用事業の場合と同様である。

【雇用保険に関する手続き】
 1.保険関係成立届
   提出期限:保険関係が成立した日の翌日から10日以内
   提出先:所轄のハローワーク
 2.概算保険料申告書
   提出期限:保険関係が成立した日の翌日から50日以内
   提出先:所轄の労働局または日本銀行(銀行・郵便局などでも可)
 3.雇用保険適用事業所設置届
   提出期限:設置の日の翌日から10日以内
   提出先:所轄のハローワーク
 4.雇用保険被保険者資格取得届
   提出期限:被保険者ごとに資格取得の事実があった日の翌月10日まで
   提出先:所轄のハローワーク

こちらは1を行った後、または同時に2・3・4の手続きを行うことになる。4の手続き時には、賃金台帳、労働者名簿、タイムカード、他の社会保険の資格取得関係書類、雇用契約書等雇用期間を確認できる資料を合わせて提出する。

このように、事業内容によって手続きの方法が異なり、提出する書類の提出先も異なる。また、それぞれの届出には期限が設けられているため、期限内に手続きを行うことが必要となる。なお手続きを怠った場合には行政による指導が行われ、それでも手続きを行わない場合には職権による成立手続きおよび保険料の認可決定が行われる。遡って保険料を徴収される他、追徴金が徴収されることになるので、手続きは怠らないようにすべきである。

従業員の雇用時および離職時の手続き

次に、適用事業所となった後にさらに従業員を雇用した場合、また従業員が離職した場合の手続きについてお伝えする。

従業員の雇用時

適用事業所となった場合と同様に、従業員を雇用するたびに管轄のハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出する。合わせて賃金台帳、労働者名簿、タイムカード、他の社会保険の資格取得関係書類、雇用契約書など雇用期間を確認できる資料を提出するのも同様である。なお届出によって交付される「雇用保険被保険者証」は、事業主から被保険者本人に渡す必要がある。

従業員の離職時

「雇用保険被保険者資格喪失届」「雇用保険被保険者離職証明書」を、被保険者でなくなった事実があった日の翌日から10日以内に、出勤簿、退職辞令発令書類、労働者名簿、賃金台帳、離職証明書、離職理由が確認できる書類などを、管轄のハローワークに提出する。被保険者が死亡した場合も同様の手続きが必要となる。

雇用保険の適用事業所が必要となる手続きは他にもある?

このように、初めて適用事業所となった時や従業員の雇用・離職時に手続きが必要となるが、他にも様々な雇用保険関係の手続きが必要となる場合がある。最後に、その他の手続きについて代表的なものをいくつかお伝えする。

被保険者の育児休業に関する手続き

  1. 雇用する被保険者が育児休業を開始した時
    「休業開始時賃金月額証明書・育児」「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」を、被保険者が初回の支給申請を行う日までに管轄のハローワークに提出する。その他賃金台帳、出勤簿、労働者名簿、被保険者の母子健康手帳など育児の事実が確認できる書類の写しを確認書類として提出する。
  2. 育児休業給付金を受けようとする時
    「育児休業給付金支給申請書」をハローワークから指定された日などに賃金台帳、出勤簿と合わせて提出する。

被保険者の介護休業に関する手続き

  1. 雇用する被保険者が介護休業を開始した時
    「休業開始時賃金月額証明書・介護」を被保険者が支給申請を行う日までに賃金台帳、出勤簿、労働者名簿と合わせて管轄のハローワークに提出する。
  2. 介護休業給付金を受けようとする時
    「介護休業給付金支給申請書」を各介護休業の終了日(介護休業期間が3か月以上にわたる時は介護休業開始日から3か月を経過する日)の翌日から起算して2か月を経過する日の属する月の末日までに、管轄のハローワークに提出する。合わせて介護休業申出書、賃金台帳、出勤簿、対象家族の氏名・本人との続柄・性別・生年月日が確認できる住民票記載事項証明書などの写しを確認書類として提出する。

その他被保険者に関する手続き

  1. 同一法人内で転勤をした時
    「雇用保険被保険者転勤届」を、事実のあった日の翌日から10日以内に管轄のハローワークに提出する。合わせて異動辞令書類、賃金台帳、転勤前事業所に交付されている被保険者資格喪失届・氏名変更届を確認書類として提出する。
  2. 被保険者の氏名に変更があった時
    「雇用保険被保険者氏名変更届」を、事実のあった日以後、当該被保険者に係る届出などを行う時までに、事実が確認できる書類と合わせて管轄のハローワークに提出する。
  3. 高年齢雇用継続給付を受けようとする時
    「高年齢雇用継続給付支給申請書」を、初回は支給対象月の初日から起算して4か月以内に、2回目以降はハローワークから指定された日または月に提出する。合わせて賃金台帳、出勤簿、六十歳到達時等賃金証明書(初回のみ)、高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書、労働者名簿、被保険者の運転免許証・住民票記載事項証明書など年齢が確認できる書類の写しの提出も必要となる。

事業に関する手続き

  1. 事業主の名称または所在地などに変更があった時
    「雇用保険事業主事業所各種変更届」を、名称・所在地など変更のあった日の翌日から10日以内に管轄のハローワークに提出する。法人の場合は、登記簿謄(抄)本など、法人でない場合はその事実を証明する書類を合わせて提出する。
  2. 事業を廃止した時または被保険者を雇用しなくなった時
    「雇用保険適用事業所廃止届」を、事業所を廃止した時はその翌日から10日以内に管轄のハローワークに提出する。法人の場合は、登記簿謄(抄)本など、法人でない場合はその事実を証明する書類を合わせて提出する。
  3. 独立した一の事業所と認められない時
    「事業所非該当承認申請書」を、申請をしようとする時その都度管轄のハローワークに提出する。申請に係る施設の従業員数がわかる書類、会社の組織図など、申請書の記載事項が確認できる書類を確認書類として合わせて提出する。
  4. 事業主が代理人を選任または解任した時
    「雇用保険被保険者関係届出事務等代理人選任・解任届」を、代理人を選任または解任したその都度、管轄のハローワークに提出する。

雇用保険に未加入の場合に起こる問題(従業員)

最後に、事業者が雇用保険に未加入だった場合にどのような問題が起きるのかを従業員と事業者に分けて確認しておこう。従業員が各種手当を受ける時になって加入しても、問題の解決にはならない可能性があるので事業者は要注意だ。

失業手当(基本手当)の給付を受けられない

雇用保険の失業給付は加入期間を元に計算されるため、事業者が雇用保険への加入を怠っていた場合には失業手当が給付されない。ただし2年間は遡ることができるので、勤務が2年に満たない場合は加入手続きすることにより給付は受けられる。

※給与明細書等の書類により、雇用保険料を控除されていたことが確認された者については、2年を超えて遡及し雇用保険の加入手続きが可能

就職促進に関わる給付を受けられない

失業手当(基本手当)を受け取れないことと同様に、再就職手当、就業促進定着手当など、就職したあとの手当も受けることができない。

他にも様々な手当の給付が受けられない

雇用保険は、失業時や求職時に支払われる手当だけをカバーしているわけではない。他にも育児休業給付や介護休業給付といった、休業中に支払われる手当も給付されなくなってしまう。雇用保険は、就業中も失業中(求職中)も就職してからもお世話になる保険なのだ。

雇用保険に未加入の場合に起こる問題(事業者)

雇用保険に未加入だった場合に、事業者が負うリスクは大きく2つ。元従業員からの訴訟リスクと法律違反のリスクだ。

元従業員からの訴訟リスク

雇用保険には、未加入期間を遡及できる制度が用意されている。ただし遡ってもカバーできない未加入期間があり、それが原因で元従業員が不利益を被った場合には、逸失利益や慰謝料、弁護士費用など、不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償を請求されるリスクがある。元従業員に重篤な過失がない場合は、かなりの確率で敗訴することが考えられるので注意が必要だ。

加入義務に違反した場合 懲役や罰金刑

事業者は雇用保険法7条の定めにより、労働者の加入希望の有無にかかわらず、原則として適用条件を満たしている労働者の雇用保険への加入手続きをしなければならないとされている。事業者が雇用保険加入の義務に違反した場合、雇用保険法第83条1号により懲役6ヶ月以下、もしくは罰金30万円が科せられる。

手続きは事業主の責務なので遅滞なく行う

今回お伝えしたように、雇用保険の適用事業所となった場合には様々な手続きが必要となる。手続きを行うことは事業主の責務であり、雇用している従業員を守ることになるので、該当する手続きについては遅延なく行っていただきたい。

文・THE OWNER編集部

(提供:THE OWNER