高電圧・大電流に対応、EV向け拡大期待

半導体
(画像=PIXTA)

半導体市況の回復期待が高まる中、SiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)といった新素材を使った次世代パワー半導体に関心が向かう。鉄道や太陽光電池、EV(電気自動車)用と需要のすそ野が広く、関連企業の商機も増してくる。

パワー半導体は主に電力を制御し、交流電流を直流に変換するほか、電圧や周波数をコントロールする機能を持つ。電車のモーターの駆動から太陽光発電、エレベーター、エアコンまで幅広い分野で使われる。また、高い電圧と大きな電流に対応するため、産業機器やEVを支える部品として存在感を強めている。

近年では電気の無駄を少なくできるパワー半導体の需要が増している。市場を強くけん引するとみられるのがEVだ。米テスラ・モーターズはパワー半導体を一部の車種のメーンインバーターに採用した。航続距離を延ばすためにも、今後のEVに欠かせないものになる。

車載用途の拡大に加え、5G(次世代高速通信システム)やIoT(モノのインターネット)の浸透も追い風。富士経済研究所では、世界のパワー半導体市場が2030年に4.3兆円(18年比45%増)まで膨らむと予想している。

技術面では、独半導体メーカーのインフィニオン・テクノロジーズを筆頭に、半導体ウエハーの口径を従来の200ミリメートルから、より生産効率のよい300ミリメートルに移行する動きも出ている。また、高い成長が期待されるのが、SiCやGaNといったより高性能の次世代パワー半導体だ。

ローム(6963)は自社ウエハーや独自のデバイス、周辺ソリューションを武器にSiCパワー半導体のシェアを拡大中だ。今3月期は新工場の建設にも着手し、新製品の投入を目指す。富士電機(6504)も自動車向けの需要を取り込む。三菱電機(6503)は他社に先駆けてSiCの開発に取り組み、鉄道や産業向けで採用が進む。

株式市場では21日、Mipox(5381・JQ)が前週末比80円ストップ高の473円まで買われた。同社は半導体ウエハーの欠陥を検査する装置を手掛ける。半導体の製造工程におけるロスを防ぐと同時に、これまでの同種の検査機器と比較してもスピードが速いという特徴を持つ。

岡本工作機械製作所(6125・(2))は半導体ウエハーの表面加工装置に強い。次世代パワー半導体の弱点である固さやもろさをカバーし、高速加工を可能にする。

今3月期は半導体市況の落ち込みや工作機械の伸び悩みを背景に、第1四半期の連結営業利益が3億円(前年同期比43%減)に落ち込んだ。ただ、株価は業績悪化を既に織り込み、新局面へと移りつつある。ここへきて7月の高値2824円を上回り、本格的な戻りが期待される。

このほか、東洋炭素(5310)はパワー半導体用部材で攻勢に出る。量産対応に向けた開発に乗り出し、製造プロセスに対応した微細加工技術も注目される。新電元工業(6844)は、大容量で安定的に作動するGaNを使ったパワーモジュールを開発した。(10月23日株式新聞掲載記事)

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