10月29日、富士通 <6702> は2020年3月期の中間決算(4〜9月)を発表した。同期の売上は1.82兆円と前年同期比で0.3%減、本業の利益を示す営業利益は710億円と25%減だった。一方、直近四半期(7〜9月)の売上は2.4%増の9900億円、営業利益は4.3倍の676億円に急拡大した。富士通は通期の売上予想を3.75兆円から3.80兆円に、営業利益を1300億円から1600億円にそれぞれ上方修正している。
翌30日、富士通の株価は7〜9月の収益改善を受けて一時7.9%高の9712円と2007年1月以来12年ぶりの高値を記録している。富士通といえば、グループの連結子会社が411社に達し、社員は13万人を超える大グループだ。総合エレクトロニクスメーカーであり、1980年代のPC黎明期にはNEC <6701> と人気を二分した総合ITベンダーの草分けでもある。
今回はそんな富士通の業績回復の背景を見てみよう。
国内受注高は2桁の伸び、ユビキタス部門が好調
富士通の7~9月の収益改善に大きく貢献したのは、リストラの一巡によるコスト削減効果に加え、国内サービスおよびユビキタス部門の好調である。
特に注目されるのがユビキタス部門だ。7〜9月のユビキタス部門は「PC特需」が大きく寄与した。マイクロソフトの大ヒットOSであるWindows7は2010年にリリースし、ビジネスユースでも大きなシェアを占めているが、そのオフィシャルサポートが2020年1月に終了する。そのためPC等を含むシステムやサービスに駆け込みの入替需要が発生したと見られている。加えて、10月から施行された消費増税に向けた駆け込み需要も売上を押し上げた可能性が高い。ちなみに、JEITA(電子情報技術産業協会)によると、今年4~9月期の国内PC出荷統計は前年同期比で51.4%増と急増。特に7~9月期は66.0%増と4〜6月の35.5%増から加速している。
富士通が決算説明会でリリースした資料によると、国内の受注高は2020年3月期上期で前年同期比11%増と2桁の伸びを示している。2019年3月期上期の8%増、下期の4%増に比べ伸び率の拡大が顕著だ。特に金融ビジネスからの受注高が18%増、流通ビジネスからも16%増と高い。