(本記事は、橋下徹氏の著書『トランプに学ぶ現状打破の鉄則』=プレジデント社、2019年8月11日刊=の中から、ZUU online編集部の責任で一部を抜粋・編集しています)

超Aクラスの交渉人、トランプ氏のノウハウはこんなに役に立つ!

交渉
(画像=Rei Imagine/Shutterstock.com)

トランプのことを嫌いな人は、世界中にたくさんいると思う。でも、好き嫌いを脇におけば、トランプの政治的態度振る舞いは、実践的な交渉をする者にとって役立つことが非常に多い。観念の世界に生きる者ではなく、現実のビジネス社会に生きる者には大いに役立つと思う。

たとえばビジネスを進める上では、相手の好き嫌いはある意味どうでもいいことだ。成果がすべて。その視点から見ると、トランプの交渉術には現状を打破し、成果を出すノウハウが詰まっている。ゆえに、トランプの好き嫌いは別として、そのノウハウはしっかりと学ぶべきだろう。

激しい利害損失がうごめく現実の交渉の場では、トランプ的態度振る舞いが効果を発揮することが多い。

僕も政治家になる前の弁護士業務において、激しい交渉を数え切れないほどやってきたけど、正直「トランプが交渉相手だったら面倒だな」と感じるよ。交渉人にとっては、相手から「面倒だな」と思われるのが最高の栄誉で、逆に「楽だな」と思われた時点で失格なんだよね。

そういう意味でトランプは、ビジネスの世界では交渉人としてピカイチ。それも超Aクラスだと思う。まぁ、そんなことを僕が言わなくても、普通のビジネスマンなら、誰でもそう感じるだろうけどね。反対に、観念の世界で生きる学者たちには、トランプの能力のすごさはまったくわからないだろう。

破産というある意味すごい経験を2度しながらも、現在、ニューヨークなどで不動産事業を営み、自分の名前を冠した高層ビルを建てて、あのニューヨークで一等地中の一等地に立つ高層ビルの最上階を自宅にしている。ゴルフ場付きの自分の別荘では、安倍晋三首相とゴルフを堪能して日米首脳会談。世界には、「トランプ」の名を冠した不動産が存在する。

そういや、大統領選挙のときには、「TRUMP」という文字が大きくペイントされた大型ジェット機を自分で用意して、全米を飛び回っていたよね。彼は、このように普通の人じゃできないことを、「現実に」ちゃんとやっているんだよ。

2017年、ワシントンに行ったとき、僕はどんなものかとトランプホテルに泊まったんだ。かつての中央郵便局をリノベーションしたホテルで、趣味に合うかどうかは人それぞれだけど、それでもワシントンでは最大規模の立派なホテルだ。半端なく地価が高いワシントンの中心地にあって、巨大な吹き抜け空間を贅沢に使ったホテルだった。

このホテル、「外国の政府関係者が宿泊した場合には、彼ら彼女らが払った宿泊料はすべてその外国人の属する国の駐米大使館に寄付する」という仕組みになっているらしい。

以前、ちょっと問題になったけど、アメリカ大統領は「外国政府に支配されたらダメだ」という理由で、外国政府関係者からお金をもらうことはできない。このようなルールはだいたいどこの国にもあるんだけど、大統領が経営するホテルに外国政府関係者が泊まった場合にどうするのか。

明確なルールがないなかで、トランプはその宿泊料を、その外国人が属する国の駐米大使館に寄付することにしたらしい。タダでは泊まらせないけど、自分は利益を得ない。よく考えているよね。

ちなみに僕は日本維新の会の国会議員団とワシントンに行ったから、僕らが支払った宿泊費は、駐米日本大使館にすべて寄付されたらしい。

トランプのおっちゃんは、ぐちゃぐちゃ文句ばっかり言っている自称インテリなんかよりも、はるかに世の中の役に立つことをやっているよ。

トランプに学ぶ現状打破の鉄則
橋下徹(はしもと・とおる)
1994年3月早稲田大学政治経済学部卒業・司法試験合格。1997年弁護士登録。翌年、大阪市北区で橋下綜合弁護士事務所を設立し、独立。2003年4月『行列のできる法律相談所』にレギュラー出演開始。2008年1月27日大阪府知事選。183万2857票を獲得し、圧勝。2008年2月6日大阪府知事就任。2010年4月19日大阪維新の会創設。2011年12月19日大阪市長就任。2015年5月17日大阪都構想の賛否を問う住民投票。得票率差1%未満で否決される。2015年12月18日任期満了で大阪市長を退任。政界引退。現在に至る。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます