障害者の法定雇用率が来年春に引き上げられる。日本は海外と比べて比率が低い上、基準を満たす企業の割合も限定的。官民を挙げた障害者雇用の拡大は急務で、「ESG投資」に絡んでも株式市場では重要なテーマとなってくる。LITALICO(6187)などの関連企業に追い風が強まりそうだ。

「ESG投資」でも重要テーマに

障害者雇用拡大
(画像=PIXTA)

昨年4月に2.2%に引き上げられた民間企業の障害者の法定雇用率を、政府は2.3%に上積みする。一方、厚生労働省が昨年実施した調査によれば、従業員45人以上の10万社の実雇用率は2.05%にとどまる。政府目標を達成している企業の割合はまだ全体の45.9%だ。

しかし、深刻な人手不足の問題も相まって、今後は比率が上昇する可能性が高い。障害者雇用は企業の環境対策や社会貢献を評価するESG投資の尺度の一つ。欧米では障害者の法定雇用率が6%前後と高く、グローバルマネーの観点でも現状を放置するわけにはいかない。

個別企業では、ファーストリテイリング(9983)が国内で新店を除く1店舗当たり1人以上の障害者を雇用する目標をほぼ達成した。雇用率は5.28%(6月時点)と、法定基準を大きく上回る。エフピコ(7947)も民間企業としては初めて、一定の障害者支援の体制が整った「就労継続支援A型」の事務所を開いた。東京都が採用に積極的な企業への認証制度を設けるなど、遅れていた雇用拡大の動きもここへきて広がりつつある。

障害者の就労支援を軸に業績を拡大するのがLITALIだ。同社は障害者向け就労支援のほかに、福祉施設の業務をサポートするサービスにも乗り出している。施設の業務管理から補助金の請求まで、煩雑な事務手続きを統合して効率化につなげる。

また、プログラミング教育にも注目が集まる。LITALIの教室からは国際的なロボットコンテストの入賞者も出ている。10月からはより専門性を高めたコースを新設し、対象を小学生から中高生まで広げた。単純労働にとどまらないハイレベルな人材を、発達障害者から輩出するケースが拡大する可能性がる。

LITALIの今3月期上期の連結営業利益は4.6億円(前年同期比32%減)。前期に報酬改定を行った反動が出たが下期は一巡し、通期の営業利益は10億円(前期比14%増)への拡大を計画。株価は足元で上昇基調を強め、昨年10月の高値2806円を目指す動きとなっている。

障害者を農業の現場に派遣する「農福連携」の広がりを受け、エスプール(2471)も業績を伸ばしている。人材派遣が主力の同社だが、農業の就職支援が新たな収益源となりつつある。貸し農園の利用企業は230社(5月末、前年同期比46%増)まで拡大した。

このほか、ウェルビー(6556・M)やアドバンテッジリスクマネジメント(=ARM、8769)も、障害者の就労支援事業を展開し、法定雇用率引き上げに伴う需要を取り込む。ケア21(2373・JQ)やCRGホールディングス(7041・M)などもマークしたい。(11月19日株式新聞掲載記事)

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