米小売り大手ウォルマートの快進撃が続いている。後段で詳述するように同社の2019年8~10月期決算は純利益が92%増と大幅な増益を記録、株価も年初からの上昇率が28.4%に達し、S&P500の24.3%を上回っている。ただ、ウォール街のアナリストからは年末商戦に慎重な見方もあり、「これから年末に向けて正念場を迎える可能性もある」との声も聞かれる。
米小売業界は勝ち組と負け組の二極分化が進んでいるが、ウォルマートを始めとする「勝ち組」の先行きを占ううえでも年末商戦の行方は気になるところだ。今回はウォルマートを中心とした米小売業界にフォーカスしたい。
ウォルマート、純利益92%増
11月14日、ウォルマートの2019年8~10月期決算が発表された。同社の米国内における既存店売上高(実店舗・インターネット通販含む)は3.2%増と市場予想(3.1%増)を上回り、21四半期連続の増収を記録した。インターネット通販の売上高は41%増と5~7月期の37%増からさらに加速したほか、生鮮食品やヘルスケア用品の好調も寄与した。
売上高全体は2%増、主力の米国では3%増となり、客数・客単価ともに前年同期を上回った。今年9月から本格的にスタートした生鮮食品の会員制宅配サービスが好調に推移したほか、インターネットであらかじめ注文した食料品を受け取れる店舗も全米で3000店以上に拡大、生鮮食品などの即日配達に対応した店舗も1400店以上に拡大し、売上高全体を押し上げた。一方、米国以外の国際事業の売上高は1%増、為替変動の影響を除くと5%増となった。中国での販売は好調だったが、英国は減収となった。
純利益は92%増の32億9000万ドル(前年同期は17億1000万ドル)と大幅な増益となった。ただ、その一方で営業利益は5.4%減少した。営業利益の減少は中国第2位のECサイトを運営する京東商城(JDドット・コム)等への投資評価損を減損処理したことが影響した。
ウォルマートは8~10月期決算を受けて、通期の1株利益見通しを従来の「小幅な減少から小幅な増加になる」から「小幅に増加する」と表現を修正した。見通しの修正は今年2度目である。
「インターネットとリアル店舗の融合」
11月19日現在のウォルマートの株価は119.89ドル(終値)で年初からの上昇率は28.4%と、S&P500の24.3%を上回っている。背景には「インターネットとリアル店舗の融合」が指摘される。